NASA Lunar Flashlight(ルナ・フラッシュライト)ミッション「ミッション終了」

原文 : May 12, 2023 : NASA Calls End to Lunar Flashlight After Some Tech Successes


CubeSat は月の南極での氷探査には到らなかったが、今後、我々の利益となり得る将来ミッションを強化するいくつかの技術目標を達成した。
 

Imahe caption :
2022年12月の打ち上げ直後、4つの太陽電池アレイを展開した「ルナ・フラッシュライト」の想像図。この直後、このブリーフケースサイズのキューブサットは、スラスタに問題が発生し、運用チームによる数ヶ月に及ぶトラブルシューティングが行われた。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

NASA Lunar Flashlight(ルナ・フラッシュライト)は、いくつかの新技術を実証するために2022年12月11日に打ち上げられ、月の南極の永久影となるクレータで表面の氷を探すことを最終目標としていた。打ち上げ後、ブリーフケースサイズの衛星の小型推進システム(この種のものとしては史上初の飛行)は、運用チームによる数ヶ月の努力にもかかわらず、月周回軌道に乗るための十分な推力を生成できないことが判明した。それにより、NASA はこのミッションに終止符を打つに至った。

NASAは、これまでに得た特定の知識のギャップを埋め、新しい技術を試験するために、技術実証を優先的に実施する。地球軌道外で初めて使用されたルナ・フラッシュライトの推進システムとグリーン燃料は、それら一連の実証実験であった。推進システムは、スラスター燃料ラインにデブリ(塵)が堆積したため、期待通りの推力を得ることができなかったが、新たに開発されたこの推進システムコンポーネントは、期待以上の性能を発揮してくれた。

また、ルナ・フラッシュライトには、NASA JPL(ジェット推進研究所)が開発した、深宇宙の放射線に耐える低消費電力コンピュータである「スフィンクス・フライト・コンピュータ」と、改良型通信機「アイリス」が搭載され、予想を上回る性能を発揮した。この通信機は、将来の小型宇宙機が太陽系天体へのランデブーや着陸に際しても使用することができる新しい精密航法機能を備えている。
 

推進システム性能の課題

ルナ・フラッシュライトは技術的には成功したが、推進システムの小型化により、キューブサットをほぼ直交するハロー軌道に乗せて月の南極をフライバイさせるための十分な推力を得ることができなかった。

研究チームは、発生したデブリが燃料パイプの通管を妨害し、推力が低下したり安定しなかったりしたのではないかと推測している。小型化された推進システムには、添加剤で製造された燃料供給システムがあり、これが金属粉や削りかすなどのデブリを発生させ、スラスタへの燃料の流れを妨げ、性能を低下させた可能性が高い。ルナ・フラッシュライトは、一つのスラスタで宇宙機を操縦する独創的な方法を考案したが、計画した軌道に到達するには、より安定した推力が必要だった。

そこで運用チームは、わずかに残っている推力を使って到達できる新たな軌道を算出した。その結果、キューブサットは月ではなく地球周回軌道に乗せると、月の南極を通過できることが可能と判った。このプランはフライバイ回数は減るが、より月面に近いところを通過することができる。
 

ミッションの詳細

NASA JPL ジェット推進研究所が、ミッションの全体的な管理を担当する。キューブサットの運用は、ジョージア工科大学の大学院生と学部生が担う。科学チームはNASA ゴダードが主導し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所、コロラド大学が参加している。

キューブサットの推進システムは、アラバマ州ハンツビルの NASA マーシャルが開発し、ジョージア工科大学が開発・統合をサポートした。NASA の中小企業革新研究プログラムでは、スラスター開発に Plasma Processes Inc.(ルビコン)、ポンプ開発に Flight Works、特定の 3D プリント部品に Beehive Industries(旧 Volunteer Aerospace)といった中小企業の部品開発に資金を提供した。また、空軍研究所も Lunar Flashlight の推進システムの開発に資金面で貢献した。Lunar Flashlight は、シリコンバレーにある NASA エイムズ研究センターを拠点とし、NASA の宇宙技術ミッション本部内にある小型宇宙機技術プログラムから資金提供を受けている。

Psyche Mission についての詳細は以下をご覧頂きたい。

Lunar Flashlight | NASA
 

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Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

2023-069
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office