NASA Jupiter(木星)研究「木星表面における温度変化のパターンが、40年に渡る研究により判明」

原文 : December 19, 2022 : 40-Year Study Finds Mysterious Patterns in Temperatures at Jupiter
 

NASA ミッションの Voyager(ボイジャー)や Cassini(カッシーニ)など、幾世代も掛けて行われたミッションから得られた情報を基にしたこの研究は、科学者が木星の大気状況(気候)を予測する方法を確立させるために有益である可能性がある。
 

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この木星の赤外線画像は、2016年に欧州南天天文台の超大型望遠鏡で得られたもので、今回の研究に貢献した。青っぽい部分は寒くて曇っており、オレンジ色の部分は暖かくて雲がないことを示している。
Image Credit : ESO/L.N. Fletcher
 

科学者たちは、木星の対流圏上層部の温度を追跡する長年にわたる研究を完了した。この巨大惑星の天気を奏でる大気層は、カラフルな縞模様の雲が形成される場所である。NASA の探査機と地上望遠鏡の観測データをつなぎ合わせて 40 年以上かけて行われてきたこの研究では、木星の帯や帯の温度が時間とともにどのように変化するのかについて、予想もしなかったパターンとして導き出された。この研究は、太陽系最大の惑星で何が気象状況の変化をもたらしているのかをについて、さらなる知見を獲得し、最終的には天候予測ができるようになるための大きな一歩となる。

木星の対流圏は、雲が形成され、嵐が発生する場所であり、地球と多くの共通点がある。この気象活動を理解するためには、風、圧力、湿度、温度などの特性を調べる必要がある。1970年代の NASA パイオニア10号と11号のミッション以来、木星の白くて明るい帯(ゾーンと呼ばれる)は低温で、茶色や赤の暗い帯(ベルトと呼ばれる)は高温であることが判っていた。

しかし、大気温度が長期に渡ってどのように変化するかを理解するためのデータセットが十分でなかった。今回発表された研究は、木星大気の暖かい領域での明るい赤外線(人間の目には見えない)の画像を精査することによって、カラフルな雲の上の木星の温度を直接測定するという画期的なものだ(12月19日、Nature Astronomy 誌に掲載)。この画像は、木星が太陽を三周回する間に撮影された。

その結果、木星の大気温度は、季節やその他の周期とは関係なく、一定の周期で上下していることが判明した。木星には季節がなく、地軸の傾きが地球の 23.5 度に対してわずか 3 度しかないため、科学者たちは木星の気温がこれほど規則正しく変化するとは思ってはいなかったのだ。

この研究により、木星表面上で何千マイルも離れた地域間の気温変化に、不思議な関係があることも明らかになった。北半球の特定の緯度で気温が上昇すると、南半球の同じ緯度で気温が下降する。

NASA JPL(ジェット推進研究所)の上級研究員で、この研究の主執筆者である Glenn Orton(グレン・オートン)は、「これが最も驚くべきことだった」と言う。
「我々は、非常に遠く離れた南北緯度で温度がどのように変化するかについての関連性を見いだした。これは、地球上で見られる現象に似ています。ある地域の天候や気候のパターンが、他の地域の天候に顕著な影響を与えることがあり、変動のパターンは、大気を通して広大な距離を越えて「テレコネクト」しているように見える」

次の課題は、これらの周期的で同期しているように見える変化の原因を突き止めることにある。

「我々は今、木星大気がこのような自然のサイクルを示すというパズルの一部分を解いた」と、共著者であるイギリス・レスター大学の Leigh Fletcher(リー・フレッチャー)は語る。
「何がこれらのパターンを駆動しているのか、なぜこれらの特定の時間スケールで発生するのかを理解するために、我々は曇の上下層両方を調べる必要がある」

一つの可能な説明は、赤道において成層圏の温度変化は、対流圏の温度変化と逆のパターンで上下しているように見えるということだ。
 

数十年費やして得た成果

オートンと彼の同僚たちは、1978年に研究を開始した。研究期間中、彼らは年に数回、世界中の三台の大型望遠鏡の観測時間を勝ち取るための提案書を書いていた。チリの Very Large Telescope、NASA の Infrared Telescope Facility、ハワイのマウナケア天文台にある Subaru Telescope だ。

この研究の最初の 20 年間は、オートンと彼のチームメイトが交代でこれらの天文台を訪れ、最終的に点と点を結びつけるための温度に関する情報を集めることだった。(2000年代初頭には、望遠鏡の作業の一部を遠隔で行うことができるようになった。)

後には、複数の望遠鏡や科学装置による数年分の観測を組み合わせてパターンを探すという、大変な作業が待っていた。このベテラン科学者たちの長期的な研究に加わったのは、数人の学部生インターンだった。彼らは、カリフォルニア州パサデナのカリフォルニア工科大学、カリフォルニア州ポモナのカルポリポモナ大学、オハイオ州コロンバスのオハイオ州立大学、そしてマサチューセッツ州ウェルズリー大学の学生たちだ。

科学者たちは、この研究によって木星大気をより詳細に理解した今、いずれ木星の天候を予測できるようになることを期待している。この研究は、木星だけでなく、太陽系やそれ以外のすべての巨大惑星の温度サイクルとそれが天候に与える影響のコンピュータシミュレーションによって、気候モデリングに貢献する可能性がある。

「このような温度の変化や周期を長期的に測定することにより、木星大気における原因と結果を結びつけることができれば、最終的には完全な木星天気予報を実現するための一歩となるだろう」とフレッチャ-は語った。
「さらに大きな課題は、いつかこれを他の巨大惑星に拡張して、同じようなパターンが現れるかどうかを確かめることができるかどうかだ」
 

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Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

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Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office