Space Topics 2022
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Edward Stone(エドワード・ストーン)、50 年間務めた NASA Voyager(ボイジャー)のプロジェクト・サイエンティストを勇退
NASA ボイジャー探査機「Edward Stone(エドワード・ストーン)、50 年間務めた NASA Voyager(ボイジャー)のプロジェクト・サイエンティストを勇退」
原文 : October 25, 2022 - Edward Stone Retires After 50 Years as NASA Voyager’s Project Scientist
NASA で最も長く運用されているミッションによりストーンは、数十年にわたる歴史的な発見と、幾つかの歴史上で初めての経験を成し遂げた。
2019年、NASA JPL(ジェット推進研究所)のボイジャー宇宙船の縮尺模型の前で撮られた Ed Stone(エド・ストーン)氏。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
Edward Stone(エドワード・ストーン)は、NASA ボイジャー・ミッションのプロジェクト・サイエンティストを、就任から半世紀を経て、このほど退任に至った。ストーンは、ボイジャー1号とボイジャー2号が打ち上げられる 5 年前の1972年に、この歴史的ミッションの科学的リーダーシップを引き受けた。彼の指導の下、ボイジャーは四つの巨大惑星を探査し、人類初の恒星間空間(近くの星の死によって生じた物質を含む星と星の間の領域)に到達した人工物体となった。
1991年から2001年まで南カリフォルニアにある NASA JPL(ジェット推進研究所)の所長を務めながら、ボイジャーのプロジェクト・サイエンティストを務めたのは、これまでストーン氏ただ一人であった。JPL は NASA ボイジャーミッションを管理している。2001年に JPL を退職したが、その後もボイジャーのプロジェクト・サイエンティストとしてその任を全うした。
ボイジャーの模型を手にポーズをとるエド・ストーン(左から2人目)らボイジャーチームのメンバー。撮影は1977年、探査機が打ち上げられた年。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
「ボイジャーのプロジェクトサイエンティストを 50 年にわたって務めたことは、光栄であり喜びだ」と、ストーンは述べている。
「ボイジャーは期待以上の成功を収め、私はこのミッションで、多くの有能で献身的な人々と共に働く機会を大切にしてきた。ボイジャーを追いかけ、この冒険に参加してくれた世界中の皆さんに感謝している」
ストーンの後任としてボイジャーのプロジェクトサイエンティストに就任するのは Linda Spilker(リンダ・スピルカー)だ。スピルカーは、ボイジャーが木星、土星、天王星、海王星を飛行している間、科学チームのメンバーとして貢献していた。その後、現在は引退した NASA の土星探査機 Cassini(カッシーニ)のプロジェクト・サイエンティストとなり、2021年に副プロジェクト・サイエンティストとしてボイジャー・ミッションに再登場した。
プリンストン大学の研究科学者で、ボイジャーの科学運営グループのメンバーでもある Jamie Rankin(ジェイミー・ランキン)は、同ミッションの副プロジェクト・サイエンティストに任ぜられた。ランキンは、ストーンが指導教官を務めたカリフォルニア工科大学で、2018年に博士号を取得している。
1977年に打ち上げられた双子のボイジャー探査機は、木星と土星を探査するミッションで、最終的にこれらの惑星とその衛星の姿を明らかにした。ボイジャー1号はその後、太陽圏外への旅を続け、ボイジャー2号は天王星と海王星のフライバイを成功させ、氷惑星を訪れた唯一の探査機となった。
この外惑星グランドツアーを果たしたあと、二機のボイジャーは太陽圏を脱出して恒星間ミッションに臨んだ。太陽圏とは、太陽の磁場と太陽風(太陽からの荷電粒子)の及ぶ保護空間のことで、この太陽圏を抜けることがまず目的となった。ボイジャー1号は2012年に太陽圏の境界を越えて星間空間に入り、2018年にはボイジャー2号(進行速度が遅く、方向も異なる)がこれに続いた。今日、NASA の最も長いミッションの一部として、両探査機は太陽と星間空間の粒子や磁場の間の相互作用をその機体で受け止める。
ボイジャーのプロジェクトマネージャーである Suzanne Dodd(スザンヌ・ドット)は、「ストーンは、”ボイジャーミッションは発見のミッションである”という表現を好むが、確かに私もそのように思う」と語る。
「1970年代から80年代にかけての外惑星へのフライバイから、ヘリオポーズ(太陽圏と星間空間との境界)の通過、そして現在の星間空間での旅まで、ボイジャーは常に我々を驚かせ続けている。これらのマイルストーンと成功はすべて、ストーンの並外れた科学的リーダーシップと、これらの発見による興奮を世界に伝える鋭い能力によるものだ」
1984年からは米国科学アカデミーの会員となり、1991年にはブッシュ大統領から米国科学勲章を授与された。2019年には、ボイジャー・ミッションの功績により、香港のショー財団から「Shaw Prize : 天文学部門」を受賞した。
ボイジャーの詳細は以下からご覧頂きたい。

Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan