NASA 氷衛星探査機 Europa Clipper「エウロパの氷殻下にある浅い湖でプリューム噴出の可能性を NASA の研究が示唆」

原文 : October 11, 2022 : NASA Study Suggests Shallow Lakes in Europa’s Icy Crust Could Erupt


NASA エウロパ・クリッパーが事前試験を行うことができる仮説が立つ、新たな研究論文が出された。木星衛星の表面でのあらゆる噴煙や噴出活動は、その氷殻の浅い部分にある「水溜まり」から発生しているかもしれない。
 

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木星衛星エウロパの氷の表面から放出されているかもしれない水蒸気のプリューム(噴出物)を描いたイラスト。新たな研究から、氷殻内部に留まる「水溜まり」構造について知見が得られるかもしれない。
Credit : NASA/ESA/K. Retherford/SWRI
 

地球外生命体の探査において、太陽系内で地球の外側に位置する天体の表面下に存在する海洋状は最も重要かつ興味深いターゲットのひとつだ。NASA が近い将来、木星の衛星エウロパに探査機「エウロパ・クリッパー」を送り込むのはそうした理由によるものだ。厚い氷の殻の下に、生命の存在可能な海洋を保有しているという強い証拠を得ている。

しかし科学者たちは、エウロパにある「水溜まり」は氷殻下海洋だけではないと見ている。NASA のガリレオ探査機の観測に基づけば、塩分を含んだ液体の貯水池が衛星の氷殻内部に存在する可能性があることが推測される。

エウロパの「水溜まり」について Juno チーム等の科学者の理解が深まれば深まるほど、2024年に打ち上るエウロパ・クリッパー探査が探索に注目するエリアが鮮明になってくるのだ。この探査機は木星軌道を周回しながらエウロパを50回ほど近接フライバイし、一連の高性能な観測機器を使って科学データを収集する予定となっている。

現在、エウロパの表面下「貯水池」がどのような形状であり、どのような挙動を示すかについて、科学者の理解を深めるための研究が進められている。「Planetary Science Journal(天体物理学と天文学に関する科学ジャーナル)」誌掲載の論文では、エウロパの表面で水が蒸気の噴出や低温水流活動として発生している可能性があるという長年の考えを支持している。

この論文で示されたコンピュータ・モデリングはさらに先を読み、もしエウロパで表面噴出が発生しているとすれば、それは氷殻はるか下にある地球規模の海洋からではなく、氷殻内に埋もれた浅くて広い「貯水池」での発生である可能性が高いことを示したものとしている。

「我々は、プリュームや氷溶岩流が、エウロパ・クリッパーによる探査で検出できるような浅い「液体貯留層」が下にあることをモデリングで実証した」と、NASA JPL(ジェット推進研究所)のエウロパミッション科学者であり、研究論文の主執筆者である Elodie Lesage(エロディ・レザージュ)は述べている。
「我々が導いた結果は、プリュームを含む表面活動を駆動させる「水溜まり」の在る深さについて、新たな視野を明示している。そこに在る水は、複数で観測するエウロパ・クリッパー積載機器によって検出できるほど浅いはずだ」
 

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この木星の氷衛星 Europa(エウロパ)の謎めいて魅惑的な表面は、1990年代後半に NASA のガリレオ探査機が捉えたもの。再処理によって、カラービューとして強調されている。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

異なる氷と、その深さ

レサージュらが構築したコンピュータ・モデリングは、科学者がエウロパ表面で噴出活動を観測した際に、その氷内部で何が見つかるかを示す青写真を描いている。彼女のモデルによると、表面に比較的近く、氷が最も冷たく脆い氷殻の上部 2.5~5 マイル(4~8 キロメートル)付近で「貯水池」を発見する可能性が高いという。

そのような状態であるとすれば氷殻の氷は膨張することはない。殻内に溜まった水のポケットが凍結して膨張すると、周囲の氷を破壊して破砕を引き起こすはずだ。

氷殻上面から 5 マイル(8 キロ)以上深くにある氷層にある「貯水池」は、膨張した場合に周囲の暖かい氷と押し合うことになる。この深度付近の氷は柔らかいのでクッションの役割を果たし、破裂することなく圧力を吸収してくれる。このような深さに在る水のポケットは、ソーダの缶のような働きではなく、液体で満たされた風船のような働きをする。風船は、その中の液体が凍結して膨張すると、単に伸びるだけである。
 

その場観測

「新たな研究は、応力が氷の強度を超えた場合、浅い氷殻内部の水域が不安定になり、表面へと上昇するプリュームと関連する可能性があることを示している」と、レーダー機器チームを率いる、テキサス大学地球物理学研究所の Don Blankenship(ドン・ブランケンシップ)は言った。
「つまり REASON は、噴出活動が見えるのと同じ場所で「貯水池」を見ることができるかもしれないということだ」

エウロパ・クリッパーは、今回紹介の新しい研究理論を検証することができる他の機器も搭載する予定だ。科学カメラは、エウロパの高解像度のカラー画像や立体画像を撮影することができる。熱放射計は、赤外線カメラを使ってエウロパの温度をマッピングし、プリュームや氷溶岩流などの表面形成活動の手がかりを見つけることができる。もしプリュームが噴出していれば、紫外線分光器によって観測できるかもしれない。
 

More About the Mission(ミッションの詳細)

エウロパクリッパーなどのミッションは、宇宙生物学の分野、つまり私たちにとって既知である生命が存在する可能性のある遠い氷世界の変数と条件に関する学際的な研究への貢献を促す。エウロパクリッパーは生命探査ミッションではないが、木星衛星エウロパの詳細な観測を行い、氷下に海洋がある氷衛星に、生命を維持する能力があるかどうかを調べる。エウロパの生命居住性を理解することは、科学者が地球上で生命がどのように発達したか、そして我々の惑星地球外において生命発見の可能性についての理解を向上させる。

カリフォルニア工科大学がカリフォルニア州パサデナで管理している JPL は、ワシントンにある NASA の科学ミッション局の APL と協力して、エウロパクリッパーミッションの開発を主導している。アラバマ州ハンツビルにある NASA のマーシャル宇宙飛行センターにある惑星ミッションプログラムオフィスは、エウロパクリッパーミッションのプログラム管理を実行する。

エウロパクリッパーの詳細については、以下を参照いただきたい。

NASA's Europa Clipper
 

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Gretchen McCartney
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

Karen Fox / Alana Johnson
NASA Headquarters, Washington

2022-081



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office