NASA Juno(ジュノー)ミッション「Juno(ジュノー)探査機が木星の氷衛星 Europa(エウロパ)に近接フライバイ」

原文 : September 22, 2022 : NASA’s Juno Will Perform Close Flyby of Jupiter’s Icy Moon Europa


Juno 探査機がエウロパを接近探査することで、NASA の次期ミッション Europa Clipper (エウロパ・クリッパー)に貴重な科学情報、素晴らしい画像を提供することが期待される。
 

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2021年10月16日にジュノーカム・イメージャによって撮影された木星の衛星エウロパ。約 5 万 1000 マイル(約 8 万 2000 キロメートル)の距離をフライバイ。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS. Image processing: Andrea Luck CC BY
 

09月29日木曜日、PDT 午前02時36分(EDT 午前05時36分)、Juno 探査機は、木星の氷に覆われた衛星エウロパの表面から 358 キロメートル(222 マイル)以内に接近する予定だ。太陽電池を搭載したこの探査機は、エウロパ表面の一部をこれまでにない高解像度で撮影するほか、衛星の内部、表面組成、電離層、木星の磁気圏との相互作用に関する貴重なデータを収集すると期待されている。

このような情報は、2024年に打ち上げられる予定のエウロパ・クリッパーを含む、氷衛星を研究する将来のミッションに役立つと考えられている。
「エウロパは木星の衛星として非常に魅力的であり、将来的には NASA ミッションにおける重点的な探査対象となる」と、サンアントニオのサウスウエスト研究所の Scott Bolton(スコット・ボルトン)主任研究員は語った。
「我々は、エウロパ・クリッパーのミッション計画に役立つデータを提供し、この氷の世界に関する新しい科学的洞察を提供できることを嬉しく思っている」
 

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Juno の延長ミッションには、ガニメデ、エウロパ、イオのフライバイが含まれる。この図は、ジュノーが木星を周回する軌道(木星最接近点を意味する「PJ」ラベル付き)を、グレーで表したプライムミッションから、青と紫の濃淡で表した延長ミッションの 42 軌道までを示したもの。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/SwRI
 

エウロパは、赤道直下の長直径が 1,940 マイル(3,100 キロメートル)で、地球の月の約九割程度の大きさである。科学者たちは、厚さ数マイルの氷殻の下に塩分を含んだ海洋があると考え、エウロパの表面下が生命生存に適した環境がであるかどうかについての疑問に挑んでいる。

この近接フライバイによって探査機の軌道が修正され、木星を周回する軌道時間が 43 日から 38 日に短縮される。NASA の探査機がエウロパに接近するのは、2000年01月03日にガリレオ探査機が 218 マイル(351 キロメートル)以内に接近して以来のことである。さらに、今回のフライバイは、ジュノの長期ミッションの中で「ガリレオ衛星」と呼ばれる四つの衛星のうち二つ目の遭遇となる。Juno ミッションは、2021年06月にガニメデの接近探査を果たし、このあとの2023年と2024年にイオに接近フライバイする予定になっている。

データ収集は、探査機がエウロパに最接近する1時間前の、51,820 マイル(83,397キロメートル)辺りから開始される予定だ。

「探査機と衛星間の相対速度は秒速 14.7 マイル(秒速 23.6 キロメートル)なので、かなりのスピードで駆け抜けることになる」と、JPL のジュノ副ミッションマネージャーである John Bordi(ジョン・ボルディ)は言う。
「エウロパへの近接フライバイが終わると直ぐ、そのわずか七時間半後に実施する木星への接近のために、探査機は向きを変える必要があるからこうなった」

エウロパとの遭遇のために、探査機搭載のすべての機器とセンサーが起動する。Juno の Jupiter Energetic-Particle Detector Instrument(木星エネルギー粒子検出器、JEDI) とミディアム・ゲイン (X バンド) ラジオアンテナは、エウロパの電離層に関するデータを収集する。波浪計(Waves)、木星オーロラ分布実験(Jovian Auroral Distributions Experiment : JADE)、磁力計(Magnetometer : MAG)は、衛星のプラズマを測定し、エウロパと木星磁気圏の相互作用を探る。

MAG と Waves はまた、エウロパの表面上にある水のプリューム(plumes)の可能性を探る。
「我々は仕事のために適した機器を持っているんだが、プリュームを捕らえるには多くの運が必要なんだ」とボルトンは言った。
「我々が観測を成功させるためには、ちょうど良い時間に最適な場所にいなければならないが、もし我々がとても幸運であれば、それは間違いなくホームラン級だと言える」とボルトンは語った。
 

衛星の「内と外」

ジュノーのマイクロ波放射計(Microwave Radiometer : MWR)は、エウロパの氷殻を覗き込み、その組成と温度に関するデータを取得する。このようなデータの収集は、氷衛星の氷殻を研究する上で初めてのことだ。

さらに、このミッションでは、フライバイ中に JunoCam(公開用カメラ)で衛星の可視光画像を四枚撮影する予定となっている。Juno の科学チームは、これらの画像を過去のミッションで得た画像と比較し、過去 20 年間に起こったと思われるエウロパの表面変化を探る。これらの可視光画像は、1 ピクセルあたり 0.6 マイル(1 キロメートル)以上の解像度になると予想される。

Juno 探査機はエウロパの影に隠れてしまうが、木星大気による反射光はジュノーの可視光イメージャがデータを収集するのに十分な太陽光を衛星に映す。星野を撮影し、位置が確定している明るい星を定め、Juno の航行姿勢・方向を設定するために設計されたナビゲーションカメラ(Stellar Reference Unit)は、エウロパの表面の高解像度モノクロ画像を撮影するために活用される。一方、JIRAM(Jovian Infrared Auroral Mapper)は、エウロパ表面の赤外線画像の撮影を試みる。

ジュノーのクローズアップ(近接)画像と MWR 装置で得るデータは、2030年にエウロパに向かい、約 50 回のフライバイを行うエウロパ・クリッパー・ミッションに反映される。エウロパ・クリッパーは、月の大気、表面、内部のデータを収集するために氷衛星を探査する。これらの情報は、エウロパの氷殻下に存在する海洋、氷殻の厚さ、地下水を宇宙空間に放出するプリュームの詳細について理解を深めるために活用される。
 

ミッションの詳細

Juno ミッションは、NASA JPL(ジェット推進研究所)が管理している。プロジェクトは、サンアントニオにあるサウスウエスト研究所所属のスコット J. ボルトンがチームを率いる。
Juno は NASA のニューフロンティア計画の一部であり、アラバマ州ハンツビルの NASA マーシャル宇宙飛行センターにおいて、NASA 科学ミッション本部が管理している。宇宙船の製造・運用は、デンバーにあるロッキード・マーチン・スペース社が行っている。

Juno の詳細については、以下のURLを参照頂きたい。

Juno - mission to Jupiter

Mission Juno
 

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Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

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