Space Topics 2022
JPL News (Ja) 日本語訳解説
小惑星探査機 Psyche の打ち上げ延期を発表
原文 : June 24, 2022 : NASA Announces Launch Delay for Its Psyche Asteroid Mission
NASA Psyche 探査計画「小惑星探査機 Psyche の打ち上げ延期を発表」
第三者による評価チームが、費用の見積もりを含め、次のステップのための可能なオプションを検討する。
Imahe caption :
このイラストは、NASA Psyche ミッションの探査機が、ミッションのターゲットである金属が豊富な小惑星プシケの近くにいる様子を描いたもの。2017年05月に作成された作品で、宇宙船の5枚のパネルからなる太陽電池アレイが描かれている。
Credit : NASA/JPL-Caltech/Arizona State Univ./Space Systems Loral/Peter Rubin
NASA は、金属を多く含む小惑星を探査するために設計された初めてのミッションである Psyche 小惑星ミッションが、計画されていた2022年の打ち上げを試みないことを発表した。
探査機の飛行ソフトウェアと試験装置の納入が遅れたため、NASA には、10月11日に終了する今年の残りの打ち上げ期間前に必要な試験を完了するための十分な時間がないのである。ミッションチームは、ソフトウェアが飛行中に適切に機能することを確認するために、より多くの時間を必要としている。
NASA は2017年、低コストで競争力のあるミッションの申請窓口である「ディスカバリープログラム」の一つとして Psyche ミッションを選択した。NASA は、第三者による評価チームを結成し、このプロジェクトと「ディスカバリープログラム」の進むべき道を検討している。
外部評価チームは、通常、政府、学会、および産業界の専門家から構成され、推定コストを含む次のステップのための可能なオプションを検討することになる。また、政府機関の「ディスカバリープログラム」や惑星科学ポートフォリオへの影響も検討される。
宇宙機の誘導航法および飛行ソフトウェアは、宇宙機が宇宙空間を飛行する際の姿勢を制御し、宇宙機のアンテナを地球に向けて、宇宙機がデータを送信したりコマンドを受信したりできるようにするために使用されるものである。また、打ち上げから 70 日後に運用を開始する太陽電気推進システムに軌道情報を与える。
NASA ジェット推進研究所(JPL)のミッションチームがシステムのテストを開始すると、ソフトウェアのテストベッドシミュレータ(実際の使用環境に近い状況を再現)との互換性に問題があることが判明した。05月、NASA はこの作業に対応するため、ミッションの打ち上げ予定日を08月01日から09月20日以前にシフトさせた。テストベッドの問題は特定され修正されたが、今年の打ち上げに向けてソフトウェアの完全なチェックアウトを完了させるには十分な時間がないのだ。
「遠くにある金属を多く含む小惑星プシケに到達するには、火星の重力を利用するなど、信じられないほどの精度が要求される。我々はそれを正しく確実に行う必要がある。何百人もの人々が、このパンデミックの間、Psyche のために多大な努力を払ってきた」と JPL のディレクターである Laurie Leshin(ローリー・レシン)は述べている。
「打ち上げを延期するという決断は簡単ではなかったが、それが最適な決断だと確信している」
08月01日から10月11日までの2022年の打ち上げ可能期間であれば、2026年に小惑星プシケに到着することは可能だった。2023年と2024年にも打ち上げの可能性があるが、プシケと地球の相対的な軌道位置から、探査機が小惑星に到着するのはそれぞれ2029年と2030年になる。これらの打ち上げ可能期間の正確な日付は、まだ決定されていない。
このミッションを率いるアリゾナ州立大学(ASU)の Lindy Elkins-Tanton(リンディ・エルキンス-タントン)主任研究員は、「私たちの素晴らしいチームは、COVID 中に宇宙機を作るという信じられないような課題のほとんどすべてを克服してきた」と述べている。
「我々は、数多くのハードウェアとソフトウェアの課題を克服してきたが、この最後のひとつの問題によって、最終的にストップが掛かってしまった。あと少しの時間があれば、この問題も解決できるだろうし、チームは前進する準備もできている。私は彼らの優秀さにとても感謝している」
ロケットを含む Psyche ミッションの総工程総費用は 9 億 8500 万ドルであり、そのうち 7 億 1700 万ドルが現在までに費やされている。現在、あらゆるミッションに対応するための推定費用を見積もっている。
NASA、小惑星探査機 Psyche についての説明会を開催
このテレコンの模様は、本日(24日)ライブ配信される予定。
NASA は、米国東部夏時間金曜日の午後02時(PDT 午前11時)にメディア向け電話会議を開催し、小惑星プシケを研究する NASA のミッションに関する最新状況について議論する予定。ブリーフィングの音声は、同機関のウェブサイトでライブ配信される。
会議の参加者は以下の通り。
Lori Glaze, director of NASA’s Planetary Science Division at NASA Headquarters in Washington
Laurie Leshin, director of NASA’s Jet Propulsion Laboratory in Southern California
Lindy Elkins-Tanton, Psyche mission principal investigator, Arizona State University
別記事を追記したもの。
ミッションの詳細
ASU(アリゾナ州立大学:Arizona State University)がミッションを主導する。JPL は、ミッションの全体的な管理、システムエンジニアリング、統合およびテスト、ミッション運用を担当している。Psyche Mission は、NASA ディスカバリープログラムにより選ばれた 14 番目のミッションである。
Psyche Mission についての詳細は以下をご覧頂きたい。
Psyche Asteroid Mission | NASA
Psyche Mission | A Mission to a Metal World(ASU)
News Media Contact
Karen Fox / Alana Johnson
NASA Headquarters, Washington
2022-091
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan