NASA InSight(インサイト)ミッション「インサイト着陸機、火星探査の期間を数週間延長」

原文 : June 21, 2022 - NASA’s InSight Gets a Few Extra Weeks of Mars Science


着陸機の電力の喪失が早まることになるが、チームは地震計を以前の計画よりも長く稼働させることを選択した。
 

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NASA 火星探査機「インサイト」は、地震計を使用して火星の内部層を調査している。地震からの信号は、さまざまな種類の物質を通過すると変化する。地震学者は、地震波のスクイグルを「読み取り」、その物質の特性を研究することができる。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech
 

NASA InSight 火星着陸機で使用できる電力が日に日に減少しているため、探査機のチームは、実施できる科学調査を最大化するためにミッションのタイムラインを変更した。着陸機は、InSight の最後の科学機器である地震計を06月末までに自動的にシャットダウンしてエネルギーを節約し、12月頃まで塵にまみれながらも太陽電池パネルが発電できる電力で何とか生き延びられると予測していた。

それを変更し、チームは現在、地震計がより長く、08月末か09月初旬まで動作するように着陸船をプログラムすることを計画している。それにより、着陸機のバッテリー放電が早まり、宇宙機は電力不足になるが、地震計がさらに多くの火星地震を検出できるようになるかもしれない。

ワシントンの NASA 惑星科学部門のディレクターである Lori Glaze(ロリ・グレイズ)は、「InSight は、まだ我々に火星について伝え切れていない」と言う。
「我々は、着陸機の運用が終了するまで、できる限りの科学を得たいのだ」

InSight(Interior Exploration using Seismic Investigations, Geodesy and Heat Transport の略)は、科学的目標を達成した後、延長ミッションに突入している。この着陸機は、2018年に火星に着陸して以来、1,300 回以上の火星地震を検出し、科学者が火星の地殻、マントル、コアの深さと組成を測定するための情報を獲得している。InSight は、その他の機器によって、貴重な気象データを記録し、着陸機直下の土壌調査、火星の古代の磁場の名残を研究してきた。

地震計を除くすべての機器は、すでに電源を落としている。他の火星探査機と同様、インサイトは脅威的な状況下で自動的に「セーフモード」を作動させ、最も重要な機能以外を停止しているが、エンジニアが状況を判断できるようにする障害防止システムは備えられている。電力が低下したり、温度が所定の限界値から外れたりすると、セーフモードが作動する。

地震計をできるだけ長く稼働させるために、ミッションチームは InSight の故障防止システムをオフにしている。これにより、地震計をより長く作動させることができるが、地上の管制官が対応する時間がないほどの突然の予期せぬ出来事から着陸機を保護できない状態となっている。

NASA ジェット推進研究所で InSight のプロジェクト・マネージャーを務める Chuck Scott(チャック・スコット)は、「目標は、エネルギーを節約して科学的利益を得ない着陸機の延命運用ではなく、InSight が完全に停止するまで科学データを取得するということだ」と述べている。
 

ミッションの詳細

JPL は、NASA Science Mission Directorate である インサイト(InSight)を運用・管理している。インサイトはアラバマ州ハンツビルのマーシャル宇宙飛行センターが管理するNASA ディスカバリープログラムの一つである。デンバーのロックヒード・マーティン・スペース社は、クルーズ・ステージとランダーを含むインサイト火星着陸探査機を製造し、ミッションのための宇宙船操作をサポートしている。

フランス国立中央科学院(CNES)やドイツ航空宇宙センター(DLR)を含む多くの欧州のパートナーが、インサイトミッションをサポートしている。CNES は、ドイツのマックス・プランク研究所(MPS)、スイスのスイス工科大学(ETH)、インペリアル・カレッジ、UK オックスフォード大学からのサポートを得て、内部構造のための耐震実験装置(SEIS)を開発し、DLR からは熱流および物理特性パッケージ(HP3)装置を提供された。
 

インサイトプロジェクトの詳細は以下をご覧頂きたい。

NASA InSight Mission

NASA InSight マーズディープコアミッション



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office