NASA 氷衛星探査 Europa Clipper「エウロパ・クリッパーの探査機本体が完成」


木星の氷衛星を探査する NASA のミッションは、エンジニアによって主要なコンポーネントが装備され、大きく前進した。
 

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JPL のメインクリーンルームで、2022年06月初旬に納入されたばかりの宇宙機「エウロパ・クリッパー」をエンジニアや技術者が点検している様子。
Credit : NASA/JPL-Caltech/Johns Hopkins APL/Ed Whitman
 

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搬入された宇宙機の梱包を解いている。
Credit : NASA/JPL-Caltech/Johns Hopkins APL/Ed Whitman
 

NASA 宇宙機 Europa Clipper(エウロパ・クリッパー)の本体が、NASA ジェット推進研究所(JPL)に搬入された。今後二年間、エンジニアと技術者は、木星の氷衛星エウロパ探査に向けた耐久試験を実施するために、手作業で宇宙機の組み立てを続ける。

宇宙機本体は、このミッションの主役だ。高さ 10 フィート(3 メートル)、幅 5 フィート(1.5 メートル)のアルミニウム製の円筒で、電子機器、通信機器、熱ループチューブ、ケーブル、推進システムなどが組み込まれている。太陽電池アレイやその他の展開可能な機器を収納した状態では、SUV 車ほどの大きさになり、太陽電池アレイを展開するとバスケットボールのコートほどの大きさになる。

JPL のプロジェクトマネージャーである Jordan Evans(ジョーダン・エバンス)は、「プロジェクトチーム全体にとって今が一番熱の入る時であり、大きなマイルストーンとなる。今回の本体納入は、打ち上げとエウロパ・クリッパーの科学探査への大きな前進だ」と語った。

2024年10月に打ち上げ予定のエウロパ・クリッパーは、50 回ほどのエウロパ・フライバイを行う予定であり、そのエウロパの海洋状は現在、生命存在に適した条件を備えている可能性があると見られている。探査機の九つの科学機器は、エウロパの大気、表面、内部組成のデータを収集する。これら得た情報によって、海の深さや塩分濃度、氷の地殻の厚さ、地下水を宇宙空間に放出するプリュームの分析に当たる。

これらの機器は既に JPL に到着し始めており、03月から組立・試験・打ち上げオペレーションのフェーズに入った。紫外線分光器(Europa-UVS)は03月に到着し、続いてアリゾナ州立大学の科学者とエンジニアが開発を主導した、探査機の熱放射画像装置「E-THEMIS」が到着した。E-THEMIS は高性能赤外線カメラで、エウロパの温度を測定し、表面付近に液体の水が存在する可能性のある領域など、エウロパの地質活動の手がかりを探るよう設計されている。

2022年末までには、ほとんどの飛行ハードウェアと残りの科学機器が完成する予定だ。
 

パッケージの全体像

メリーランド州ローレルのジョンズ・ホプキンス応用物理学研究所(APL)は、JPL およびメリーランド州グリーンベルトにある NASA ゴダード宇宙飛行センターと共同で、エウロパ・クリッパーの機体を設計した。
「APL が設計、製造、試験した飛行システムは、数百人ものエンジニアと技術者からなるチームを用いており、APL が製造したシステムの中で物理的に最も大きなものとなった」と、このミッションのアシスタントプロジェクトマネージャーである APL の Tom Magner(トム・マグナー)は述べている。

現時点では、メインモジュールの作業が JPL で続いている。

「JPL に到着した機器は、搬入時点で組み立て段階であることを意味する。APL のリーダーシップのもと、APL と NASA の二つのセンターによって作業が進められた。引き続きシステムをさらに高いレベルで統合するフェーズに取り組む」とプロマネのエバンスは言う。

主構造体は、二つのアルミニウムシリンダーを積み重ねたもので、宇宙機に搭載される高周波モジュール、放射線モニター、推進電子機器、電力変換器、配線をボルトで固定するためのネジ穴が点在している。高周波サブシステムは、幅 10 フィート(3 メートル)の巨大な高利得アンテナを含む、八つのアンテナに電力を供給する。ハーネスと呼ばれる電気配線とコネクタの網は、それだけで 150 ポンド(68 キログラム)の重さがあり、引き伸ばせば 640 メートル(2,100 フィート)近くにもなり、サッカー場の外周の二倍に相当する。

木星圏の強烈な磁場に耐えるために頑強に設計された電子機器室は、科学機器とともに宇宙船本体に組み込まれる。

宇宙船本体の内部には、燃料と酸化剤を入れる二つのタンクと、その内容物を 24 基のエンジンに運ぶためのチューブがあり、結合して化学反応を制御し、推力を発生させる仕組みだ。

JPL の Tim Larson(ティム・ラーソン)副プロジェクトマネージャーは、「私たちのエンジンは二重の目的を持たせたものだ」と言う。
「木星に接近し、木星の軌道に捕捉されるために大きな制御燃焼が必要な際のような大きな操作のために使用する。しかし、探査機の姿勢を制御したり、エウロパや他の太陽系天体への緻密なフライバイを微調整するなどの、より小さな操作も行えるよう設計されている」

2031年に Europa に到着し本格的な探査を始めるエウロパ・クリッパーが、6 年間掛けて航行する 18 億マイル(29 億キロメートル)もの旅の間、こうした大小・強弱の操縦機能が大いに活躍することになる。
 

More About the Mission(ミッションの詳細)

エウロパクリッパーなどのミッションは、宇宙生物学の分野、つまり私たちにとって既知である生命が存在する可能性のある遠い氷世界の変数と条件に関する学際的な研究への貢献を促す。エウロパクリッパーは生命探査ミッションではないが、木星衛星エウロパの詳細な観測を行い、氷下に海洋がある氷衛星に、生命を維持する能力があるかどうかを調べる。エウロパの生命居住性を理解することは、科学者が地球上で生命がどのように発達したか、そして我々の惑星地球外において生命発見の可能性についての理解を向上させる。

カリフォルニア工科大学がカリフォルニア州パサデナで管理している JPL は、ワシントンにある NASA の科学ミッション局の APL と協力して、エウロパクリッパーミッションの開発を主導している。アラバマ州ハンツビルにある NASA のマーシャル宇宙飛行センターにある惑星ミッションプログラムオフィスは、エウロパクリッパーミッションのプログラム管理を実行する。

エウロパクリッパーの詳細については、以下を参照いただきたい。

NASA's Europa Clipper
 

News Media Contact

Gretchen McCartney
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

Karen Fox / Alana Johnson
NASA Headquarters, Washington

2022-081



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office