NASA 氷衛星探査 Europa Clipper「グリーンランドの氷床と木星衛星エウロパが同じような特徴を持つ」


木星衛星 Europa(エウロパ)で多数見られる平行な氷壁が、地球北米大陸の北東に位置する世界最大の島、グリーンランドの氷床でも発見されている。エウロパにおける生命の生存可能性(potential habitability)について良い兆し(肯定的な)を示す好例と言えるのかも知れない。
 

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1990年代後半、NASA ガリレオ探査機が撮影した画像。木星の氷衛星エウロパの表面の地質がよく判る。
Credit : NASA/JPL-Caltech/SETI Institute
 

グリーンランドの平行な氷壁は、木星の氷に覆われた衛星エウロパのそれと非常によく似ており、エウロパの氷の殻にはウォーター・ポケット(水で満たされた領域)が存在する可能性があることを示唆している。

この類似性は、NASA の Europa Clipper mission(エウロパ・クリッパー・ミッション)が木星の衛星に生命の生存可能な環境を発見する確率を大きく向上させる可能性がある。探査機の氷河探知レーダー「REASON(リーズン)」(Radar for Europa Assessment and Sounding: Ocean to Near-Surfaceの略)は、このような探査に理想的な装置だ。

スタンフォード大学の准教授で、グリーンランドの「二重海嶺」とエウロパのそれを比較した新しい研究の共著者である Dustin Schroeder(ダスティン・シュローダー)は、「海嶺の下にウォーター・ポケットがあるならば、それを見るのに最適な機器がある」と述べた。

科学者によって検証され収集したエウロパのデータからは、厚さが 10~15 マイル(15~25 キロメートル)の氷の殻があり、その下に湛えられた深い海洋状の構造が窺える。氷は非常に巨大であり、この衛星に関する大きな疑問は、氷下海洋状の何かが表面と接触するのか、あるいは逆に表面を覆う何らかの物質が液体水にろ過されて接するのか、ということのようだ。

スタンフォード大学の元研究員で、現在は南カリフォルニアにある NASA JPL ジェット推進研究所の惑星科学者である共同研究者の Gregor Steinbrügge(グレゴール・スタインブリュッゲ)は、「氷の殻の中に水がたくさんあるとしたら、それは何を意味するか、ワクワクするね」と語った。
「エウロパの氷の殻は非常に動的であることが判っている。それは表面と氷下海洋状の間の交換プロセスを促進することができる。もちろんそれは、双方向で可能だ」

エウロパの表面にある生命の存在を可能とする栄養素は、おそらく木星の火山衛星であるイオによってもたらされ堆積したもので、氷下海洋状まで到達する可能性があると彼は言う。また、海洋状底に存在する化学物質やその他の物質が、エウロパの表面に到達し、海洋状環境に生命の存在を与えているのかもしれない。
 

稜線(氷壁)はどのように形成されたのか

エウロパの尾根(氷壁)に関するプレゼンテーションの中で、この研究の主執筆者であるスタンフォード大学の大学院生 Riley Culberg(ライリー・カルバーグ)が、グリーンランドに似た地形があることに気づいたことを述べた。NASA の航空観測キャンペーン「Operation IceBridge」が2015年から2017年にかけて収集した氷透過レーダーデータから、グリーンランド北西部に二重の尾根が存在することだけでなく、それがどのように進化してきたかの詳細も明らかになってきた。

グリーンランド氷床の表面に見られる二重の尾根は、近くの湖の水が氷床内の不透水性の氷の層に流れ込んでできたものである。そして、その水分が再凍結して氷を破壊し、両側の山が隆起していったのである。

エウロパでも同じようなことが起こっている可能性があるが、その場合は、氷下の海洋状から水が表面に向かって押し上げられることになる。エウロパの海嶺は、グリーンランドの海嶺と似ているが、より大きく、より高い山が多数ある。
 

Imahe caption :
1997年02月20日に NASA ガリレオ探査機が接近飛行中に撮影したモザイク画像には、エウロパの表面を横切る二重の隆起が見られる。グリーンランドの同様の特徴を分析すると、エウロパ氷の殻に浅い液体の水が遍在している可能性があることがわかる。
Credit : NASA/JPL/ASU
 

エウロパ・クリッパーに搭載される観測装置「REASON(リーズン)」は、グリーンランドで使用されたレーダー「IceBridge(アイスブリッジ)」と同様な観測をエウロパで行うために設計されている。どちらも、氷の奥深くまで届く電波を使用する。しかし、同じ電波でも液体の水は透過できず、反射されてレーダー機器に戻ってきてしまう。そのため、水はレーダー画像に明るい斑点として映し出される。ただそれによって、このレーダー画像から、表面から奥深くにある水と氷の垂直方向の分布がわかる。

「水と氷では、水の方が 1000 倍も明るい反射が得られるんだ」と、スタンフォード大准教授のシュローダーは語った。

リーズンの共同研究者であり、エウロパの内部を研究するグループの一員であるシュローダーは、「この新しい研究は、衛星エウロパとグリーンランドの隆起が同じ根本原因から生じたのか、エウロパの氷の殻にウォーター・ポケットがよくあるのかどうかを決定するための観測計画を立てる上で役立つ」と述べた。

また、この研究は、太陽系の近隣惑星を研究する科学者と、地球を研究する科学者の間で相乗効果が高まっていることを強く意味する。

「この研究は、エウロパで発見されたものを理解するために地球を利用することと併せて、探査機がエウロパに到着したときに発見されるものを理解するために有用だ」と、シュローダーは述べている。
 

More About the Mission(ミッションの詳細)

エウロパクリッパーなどのミッションは、宇宙生物学の分野、つまり私たちにとって既知である生命が存在する可能性のある遠い氷世界の変数と条件に関する学際的な研究への貢献を促す。エウロパクリッパーは生命探査ミッションではないが、木星衛星エウロパの詳細な観測を行い、氷下に海洋がある氷衛星に、生命を維持する能力があるかどうかを調べる。エウロパの生命居住性を理解することは、科学者が地球上で生命がどのように発達したか、そして我々の惑星地球外において生命発見の可能性についての理解を向上させる。

カリフォルニア工科大学がカリフォルニア州パサデナで管理している JPL は、ワシントンにある NASA の科学ミッション局の APL と協力して、エウロパクリッパーミッションの開発を主導している。アラバマ州ハンツビルにある NASA のマーシャル宇宙飛行センターにある惑星ミッションプログラムオフィスは、エウロパクリッパーミッションのプログラム管理を実行する。

エウロパクリッパーの詳細については、以下を参照いただきたい。

NASA's Europa Clipper
 

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Gretchen McCartney
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

2022-57



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office