Planetary Defense - アメリカ合衆国宇宙軍が惑星防衛研究を行う NASA に数十年にわたるボライドデータを提供 - #Planetary Defense


JPL の地球近傍天体研究センター(Center for Near Earth Object Studies)により提供されるこのデータは、小惑星の大気圏突入の際、どのように分解されるかを科学コミュニティが理解する機会を与える。
 

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国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士が撮影した、地球大気に飛び込むペルセウス座流星群の比較的明るい流星の写真。極めて明るい流星は、火球(ボリード)と呼ばれる。
Credit : NASA
 

NASA と米国宇宙軍(U.S. Space Force)との協定により、公共施設によるセンサーが収集した数十年にわたる火球現象(ボリードとも呼ばれる大きな明るい流星)のデータを、科学と惑星防衛のコミュニティのために公開することが最近許可された。今回の措置は、地球近傍天体(NEO)の発見、追跡、特性評価、カタログ化を含む惑星防衛における米国の取り組みを継続するために、NASA の惑星防衛調整局(PDCO)と米国宇宙軍との協力により実現したものだ。今回公開されたデータは、ボリードが地球の大気を通過する際の明るさの変化に関する情報(ライトカーブ)で構成されており、いつか地球に脅威をもたらすかもしれない大きな小惑星による衝突の影響をモデル化し、惑星防衛コミュニティの現在の能力を高める可能性を持っている。

地上には到達することはないが、大気圏突入後に爆発するほどの大きさの小惑星が地球に到達すると、昼間でも見ることができる非常に明るい流星「ボライド」が、年に数十回、定期的に発生している。米国施設のセンサーがこれらの大気衝突を検知し、NASA JPL ジェット推進研究所の近地球天体研究センター(CNEOS)の火球データベースに報告される。このデータベースには、1988年以降に発生した約 1000 件の火球のデータが登録されているが、今回のデータ公開措置により惑星防衛の専門家は、さらに詳細なデータ、特に、天体が大気圏で分裂する数秒間の光度変化をとらえたライトカーブ情報を入手することができるようになった。地球大気圏内での天体の分裂は、その天体がどの高度で分裂・崩壊したかに基づいて、その強度と組成を科学的に解明出来る機会であり、このユニークで豊富なデータは科学コミュニティから大いに期待されている。また、ボライドの光度曲線データから、おおよその全放射エネルギーと突入前の速度ベクトル(方向)をより良く導き出すことができる。

「NASA CNEOS Fireballs ウェブサイトに掲載されたボライドの報告書のアーカイブは、科学的知識を著しく高め、ホワイトハウスが承認した国家地球近傍天体準備戦略と行動計画に貢献している」と、NASA 本部惑星防衛担当の Lindley Johnson は述べた。
「これらの新しいボライドデータの公開は、NASA と米国宇宙軍とのもう一つの重要な協力関係を知らしめるものであり、これら天体を理解する能力の向上と、NEO が地球に与える影響への対応準備の追求を促進するものとなる」

今年三月に発見された、地球への脅威は無いと思われる小さな約 2 m ほどの小惑星が地球に接近し、グリーンランドの東海岸から約 470 km、アイスランドの北東にあるノルウェーの島、ヤンマイエン島の南西の上空大気に突入したことが検出された。2022 EB5 と名付けられたこの小惑星は、検出後 NASAによる 警告レベルに達しない小さいな天体であったが、2022 EB5 の発見から大気圏への突入に至るまで、観測を続ける CNEOS は NASA の PDCO に衝突場所の予測を更新し続け、惑星防衛コミュニティに対して、NEO 追跡能力を試す実際の現象に基づくシナリオを提供するとともに、衝突予測プロセスとモデルが、地球に向かう軌道上で大きな物体が見つかった場合に、その影響の可能性について迅速かつ正確に通知するのことに有能であると自信を与えてくれる。他のボライド事象と同様に、2022 EB5 の衝突は米国の観測機器センサーによって検出され、米国宇宙軍の部隊が報告し、CNEOS が予測した時刻と場所を確認し、JPL CNEOS のこれらの事象に関する NASA のアーカイブに追加された。
 

Imahe caption :
NASA JPL CNEOS のウェブページからの画面をキャプチャしたもの、2022年03月11日に「2022 EB5」と名付けられた 2 m の小さな小惑星が地球の大気に衝突する様子を、米国政府施設のセンサーが収集したデータで表現している。
Credit : NASA/JPL-Caltech and U.S. Space Force
 

今回公開されたデータセットの中でもう一つ注目すべきは、2014年01月08日に検出された流星現象だ。この天体は、大気圏突入後の速度が速かったことから、星間起源である可能性が指摘され、科学コミュニティの関心を集めていた。米国宇宙司令部の管轄下で行われたさらなる分析により、この物体が高速で衝突したことが確認されましたが、収集されたデータの時間が 5 秒未満と短いため、この物体の起源が本当に恒星間であるかどうかを決定的に判断することは困難だ。

NASA は2016年に PDCO を設立し、同機関が現在行っている惑星防衛の取り組みを管理している。NASA は、140 メートル(459 フィート)以上の大きさの NEO の 90 % を発見する任務を受けている。同機関はこの任務の達成に向けて懸命に取り組んでおり、現在、その目的の地球近傍小惑星の約 40 % を発見している。
 

CNEOS、小惑星、地球近傍天体に関するより詳しい情報は、以下をご覧いただきたい。

Center for NEO Studies

Asteroid Watch

NASA's Planetary Defense Coordination Office(NASA 惑星防衛調整局:PDCO)の詳細については、以下。

Planetary Defense | NASA

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Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office