NASA Psyche 探査計画「金属小惑星プシケを探査する Psyche 宇宙機が、巨大な太陽電池パネルを装着」


Psyche 宇宙機本体への太陽電池パネルの取り付けが完了し、今年08月の打ち上げに向けて最終構造体に近づいていく。
 

Imahe caption :
2020年06月に更新された、Psyche 探査機のアーティストコンセプト。
Credit : NASA/JPL-Caltech/ASU
 

NASA Psyche ミッションは、金属を多く含むとみられる謎に満ちた小惑星 16 プシケへの 15 億マイル(24 億キロメートル)に及ぶ太陽エネルギーを推進力とする惑星間航行に向けて、その準備がほぼ整った。二つの太陽電池パネルを本体に接合し、縦展開を行った後、再び収納する試験を行った。今回の試験で、08月の打ち上げに向けた重要な一つのマイルストーンを越え、打ち上げ準備がほぼ整った。

NASA JPL(ジェット推進研究所)で、Psyche 宇宙機の組み立て、試験、打ち上げ業務を担当している Brian Bone(ブライアン・ボーン)は、「宇宙機が完全に組み立てられたのを見るのは大きな達成感で、とても誇りに思うよ」と話していた。
「これこそが本当に楽しむということだ。すべてが一つになるのを感じている。変化するエナジーを感じている」
 

この動画は、Psyche 宇宙機に搭載された全長 11.3 メートルのツイン太陽電池パネルのうち、中央の三枚のパネルを展開する様子を撮影したもの。このように長いため、JPL のハイベイ 2 クリーンルームでは一度に片側のパネルしか展開することができない。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

5 ユニットのパネルからなる 2 セット対称の十字型の太陽電池パネルは 800 平方フィート(75 平方メートル)の面積を持ち、これまで数十年にわたって多くの宇宙機を製造して宇宙に送り出してきた JPL にとっては最大のものとなる。飛行中に電池パネルを完全に展開すると、宇宙機の最大面積はテニスコート一面ほどにもなる。三年半のソーラーエネルギー航行を経て、2026年に小惑星プシケに到着する。プシケは最も幅の広い部分で 173 マイル(280 キロメートル)あり、異常なほどに豊富な金属を含むと考えられている。探査機はおよそ二年間を費やして小惑星の軌道に徐々に近づき、その場探査を開始する。

火星と木星の間にある小惑星帯は、太陽から遠く離れているため、このミッションでは、地球を周回する商業衛星クラスの標準技術を深宇宙環境で駆動させるための適合挑戦を行った。地球近傍軌道上での太陽電池の発電量は 21 キロワット程度で、これはアメリカの一般家庭三~四軒分の電力に相当する。しかし、Psyche 宇宙機では、ヘアドライヤー程度の電力に相当する 2 キロワット程度の発電量まで落ちる。

「基礎となる太陽電池技術は一般家庭に設置されているソーラーパネルと大差ないが、Psyche に整備されるモジュールは超高効率で軽量、放射線耐性があり、より少ない太陽光でより多くの電力を供給することができるよう設計されている」と、パネルと太陽電気推進シャーシを製造したカリフォルニア州パロアルトの Maxar Technologies(マクサテクノロジーズ)で、Psyche の技術責任者を務める Peter Lord(ピーター・ロード)は言う。
「これらの電池モジュールは、太陽から遠く離れた低照度の条件下で動作するように設計されている」
 

Imahe caption :
JPL のクリーンルームで展開テストを行う前に、エンジニアが Psyche の二つの太陽電池パネルの片方を検査しているところ。太陽電池パネルは、打ち上げ前にはこのように折りたたまれてシャーシと同じ高さに収納され、打ち上げ後に展開される。
Credit : NASA/JPL-Caltech
 

JPL のクリーンルーム内で中央に配置した三枚のパネルの展開に成功した後、宇宙機のパネルはシャーシに折り戻され、追加試験のために収納された。電池パネルはひとまず Maxar に戻されて、二つの垂直クロスパネルの展開を試験するための特別な装置が設置される。春になってパネルはフロリダ州の NASA ケネディ宇宙センターで宇宙機本体と再会し、ケープカナベラルからの打ち上げに向けて最終収納される予定である。

打ち上げの約一時間後、太陽電池パネルは展開され、一枚あたり七分半のプロセスで総てのパネルが所定の位置に固定される予定だ。小惑星プシケに向かうためのすべての電力と、小惑星の磁場を測定する磁力計、小惑星の表面を撮影して地図にするイメージャ、表面の組成を調べる分光計などの科学機器を作動させるために必要な電力を供給する役割を、この太陽電池モジュールは担う。また、この太陽電池モジュールは、高速レーザー通信を試験する深宇宙光通信の技術実証にも併用される。

これらの観測機器が科学者に伝える情報は、謎が多い金属小惑星をより深く理解するのに役立つことだろう。小惑星プシケの金属含有量が異常に多い理由として、太陽系の歴史の初期に、岩石質惑星の構成要素の一つである小惑星のコア物質の残骸として形成されたか、あるいは、溶けずに残った原始的な物質である可能性が考えられている。この Psyche ミッションの目的は、こうした事実を突き止め、地球自身の金属コアと太陽系の形成に関する基本的な疑問に答えることだ。
 

ミッションの詳細

ASU(アリゾナ州立大学:Arizona State University)がミッションを主導する。JPL は、ミッションの全体的な管理、システムエンジニアリング、統合およびテスト、ミッション運用を担当している。Psyche Mission は、NASA ディスカバリープログラムにより選ばれた 14 番目のミッションである。

NASA Psyche Mission についての詳細は以下をご覧頂きたい。

Psyche Asteroid Mission | NASA

Psyche Mission | A Mission to a Metal World(ASU)
 

News Media Contact

Gretchen McCartney / Melissa Pamer
Jet Propulsion Laboratory, Pasadena, Calif.

Karin Valentine
ASU School of Earth and Space Exploration, Tempe, AZ
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office