NASA InSight ミッション「砂嵐を克服したインサイトのバッテリーは安定している」


最新データによる追記

Updated Feb. 15, 2022, at 5:35 p.m. EST (2:35 p.m. PST):

火星の砂嵐に見舞われた非常事態が終わって数週間、NASA 火星着陸探査車 InSight の太陽電池パネルは、砂嵐に襲われる前とほぼ同じ電力を生み出している。この電力レベルにより、着陸船は今夏(2022)まで科学活動を続けることができるはずだ。

チームは、今後数ヶ月の間に塵の堆積が再び続き、探査機全体が保有する電力が徐々に減少することを予想しており、限られた必要な時間のみ科学機器をオンにすることで、慎重にエネルギーを節約している。ミッションの主要な科学目標をすべて達成した今、目標は12月の延長ミッションの終了まで探査機を運用できるようにすることだ。ダストを除去する旋風や、ダストの蓄積を増加させる新たなダストストームが通過することで、スケジュールが変更されるという不確定要素に左右される可能性が残っている。
 

Updated Jan. 19, 2022, 9:00 a.m. PST (12:00 p.m. EST):

InSight はセーフモードを解除し、通常運用を再開した。ただし、科学観測装置は停止したままである。積もった塵は徐々に減少しているようだ。今後二週間に渡ってミッションチームは、塵の堆積が着陸船の電力に及ぼす影響を評価する予定でいる。
 

Image Caption :
NASA InSight による、火星での二回目の自撮り画像。最初の自撮り写真以降、着陸機は熱と地震の計測機器をデッキから取り外して火星表面に設置し、現在では薄い塵のコーティングが探査機を覆っている。
この自撮りは、03月15日と04月11日(2020年、ミッションの106日目と133日目)に、InSight のロボットアームにある Instrument Deployment Camera(機器展開カメラ)で撮影された14枚の画像から合成されたモザイク画像である。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech
 

火星の砂嵐でセーフモードに移行

ランダー本体は省エネ対策を講じ、来週(2022年)には通常運用に戻ることを目指している。

InSight は、01月07日(2022年)にセーフモードに移行し、発電を抑制させた後も安定して火星から地球に健全なデータを送信している。セーフモードでの探査車は、必要不可欠な機能以外のすべてを停止している。

01月10日、ミッションチームは InSight との通信を再開し、電力の安定と探査車のバッテリー消耗の可能性は低いことを確認した。バッテリーの消耗は、2018年に赤い惑星を覆った一連の壮大な砂嵐の際に、探査機オポチュニティの終焉を招いたと考えられている。

この直近の砂嵐の前にも、InSight の太陽電池パネルに塵が蓄積し、探査車の電力供給が減少していた。探査車のロボットアームのスクープを利用して、InSight チームは一つのパネルのダストを減らすための革新的な手法を見出し、2021年の間に何度かエネルギーのブーストを得たが、利用できるエネルギーが減少すると、こうした活動はさらに困難になっていく。

砂嵐は、二つの要因でソーラーパネルに影響を与えてしまう。埃は大気中を通過する太陽光を減少させ、パネルに蓄積される。今回の嵐で、太陽電池パネルにさらにほこりの層が堆積するのかどうかは、まだ判っていない。

今回の砂嵐は、マーズ・リコネイサンス・オービターに搭載されたマーズ・カラー・イメージャー(MARCI)カメラによって初めて検出されたもので、このカメラは惑星全体のカラーマップを毎日更新している。このマップは、科学者が砂嵐を監視し、火星表面で活動する探査車に早期警告を与えるシステムとして機能することができる。InSight チームは、地域的な嵐が弱まりつつあることを示すデータを受け取っている。

砂嵐の渦や突風は、火星探査機「スピリット」や「オポチュニティ」のミッションのように、時間をかけて太陽電池パネル表面をクリアするのに役立ってきた。InSight の深層 L センサーは、通過する多くの旋風を検出してきたが、塵を除去したものはこれまでなかった。

InSight のエンジニアは、来週には探査車をセーフモードで停止させることができるだろうと期待している。セーフモードでは、バッテリーの充電量を節約するために、比較的大きなエネルギーを必要とする通信が制限されることから、探査車の運用に柔軟性がもたらされることになるだろう。

InSight は、火星の地殻、マントル、コアなどの内部構造を探査するため、2018年11月26日に火星に着陸した。同宇宙機は、一年前のプライムミッションが終了する前に、その科学的目標を達成していた。その後 NASA は、科学、運用、ミッション管理のバックグラウンドを持つ専門家で構成された独立審査委員会の勧告に基づき、ミッションを最大二年間、2022年12月まで延長することとした。

JPL は、NASA Science Mission Directorate である インサイト(InSight)を運用・管理している。インサイトはアラバマ州ハンツビルのマーシャル宇宙飛行センターが管理するNASA ディスカバリープログラムの一つである。デンバーのロックヒード・マーティン・スペース社は、クルーズ・ステージとランダーを含むインサイト火星着陸探査機を製造し、ミッションのための宇宙船操作をサポートしている。

フランス国立中央科学院(CNES)やドイツ航空宇宙センター(DLR)を含む多くの欧州のパートナーが、インサイトミッションをサポートしている。CNES は、ドイツのマックス・プランク研究所(MPS)、スイスのスイス工科大学(ETH)、インペリアル・カレッジ、UK オックスフォード大学からのサポートを得て、内部構造のための耐震実験装置(SEIS)を開発し、DLR からは熱流および物理特性パッケージ(HP3)装置を提供された。
 

インサイトプロジェクトの詳細は以下をご覧頂きたい。また、当サイトにある日本語化したページは次段の URL であるが、こちらはページを移動するようになっている。さらに右(スマホでは下段)ナビにはインサイト関連の他の日本語ニュースを紹介している。参考になればと思う。

NASA InSight Mission

NASA InSight マーズディープコアミッション



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office