JPL News (Ja) - Space Topics 2020
Space Topics JPL日本語訳ニュース : November 02, 2020. Latest
原文 : October 29, 2020 - Impact Craters Reveal Details of Titan's Dynamic Surface Weathering
NASA カッシーニミッション : ティタンに残る衝突クレーターの謎を解明 ~動的表面風化の詳細を明らかにする~
Fast Facts :
土星最大の衛星ティタンの九つのクレーターに関する新しい研究は、風化が表面の進化にどのように影響するか、そして何がその下にあるかについての詳細を提供する。
NASA 研究者たちは、カッシーニミッションから得たデータに基づき、ティタン(Titan : タイタン)表面にある衝突クレーターに注目し、クレーターがどのように進化し、気象環境が土星の巨大な衛星の表面にどのような変化を与えるかについて、これまで以上の詳細を引き出し明らかにした。
Image Caption :この合成画像は、2015年に NASA カッシーニ探査機によって撮影された土星衛星ティタンの赤外線ビューを示している。かすんで見える衛星大気を通した画像上のいくつかの場所は、極めて近いアプローチで取得されたため、周辺より詳細に表示される。
Image credit: NASA/JPL/University of Arizona/University of Idaho
地球と同様に、ティタンは圏外から侵入する流星物質からの保護シールドとして機能する「ぶ厚い」大気を持っている。一方、クレーターの侵食や、その他に見られる地質学的プロセスは、表面に到達する流星物質によって作られたクレーターを効率的に消去していく。その結果、他の衛星で見られる衝突クレーターよりも、その衝突による破壊は劇的に少なくなっている。それでも天体の衝突威力は、その表面下にあるものを十分にかき混ぜて露出させるので、ティタンにおいてもその天体衝突クレーターは、多くの科学的知見を明らかにさせている。
つまり、ティタンの大気と気象は、ティタンの表面形成に関与しているだけではない。それらはまた、どの材料が表面に露出したままであるかに影響を与える地質学的な物理プロセスを推進しているようだ、と著者らは明かした。
「私たち導いた結果のなかで最もエキサイティングな部分は、クレーターに隠されたティタンの動的表面(dynamic surface)の証拠を発見したことだ。これにより、これまでのティタンの表面進化シナリオのなかで、最も完全なストーリーのひとつを推測することができたのだ」
ESA(欧州宇宙機関)の研究者であり、新たな研究論文の主著者である Anezina Solomonidou(以下、ソロモニドゥ)は述べている。
「私たちの分析は、ティタンが今この瞬間もダイナミックな世界であり続けているのだという証拠を、より多く提供できている」
明かされる秘密
最近、「Astronomy&Astrophysics」に発表された新著は、土星到着の2004年から2017年のグランドフィナーレに至るまでのカッシーニ探査機運用のなか、水星サイズの衛星ティタンを120回以上(計127回)フライバイした際に得られた、可視および赤外線機器のデータを使用した。
「調査した緯度上のその場所は、ティタンの秘密の多くを明らかにしているようで、表面変化が大気プロセスと、さらに内部プロセスと活発に関連していることを私たちに示している」とソロモニドゥは言った。
研究者らは、宇宙における生命の起源と進化の研究であるティタンの宇宙生物学の可能性について、さらなる説明と解答を求めている。ティタンは海洋世界であり、表面下にも水とアンモニアの海洋がある。そして、科学者が有機物の表面から下海洋への移動経路を探す際に、衝突クレーターによる影響は地下へ移動経路のユニークなウィンドウが散見し出す。
新たな研究から、セルク・クレーター(Selk Crater)と呼ばれる一つの衝突サイトが完全に有機物で覆われており、他のクレーターなどが気象によって表面を清掃されてしまうという影響を受けていないことが判った。セルク・クレーターは NASA ドラゴンフライミッションのターゲットであり、2027年に打ち上げられる予定となっている。回転翼航空機の着陸機は、宇宙生物学にとって重要である、「生命が出現する前の初期の地球と同様の生物学的に重要な化学」に対する謎を解明する。
NASA は、約40年前の1980年11月12日、ボイジャー 1 探査機によってティタンからわずか 2,500 マイル(4,000 km)のフライバイを行い、これが土星衛星ティタンとの初めての出会いであった。ボイジャー 1 によって得られたティタン画像は、ぶ厚く不透明な大気を示し、解析データからは、液体が表面に存在する可能性があることを明らかにし(メタンとエタンが液体の形で認められた)、ティタンでプレバイオティクス化学反応が可能である可能性があることを示した。
南カリフォルニアにある NASA JPL(ジェット推進研究所)によって管理されているカッシーニミッションは、燃料供給を使い果たすまで 13 年以上土星を観測したオービターであった。ミッションは、2017年09月に探査機を土星の大気圏に突入させた。これは、探査機の墜落によって生命に適した条件を保持する可能性のある衛星を保護するためであった。
カッシーニ・ホイヘンス(ESA管理)ミッションは、NASA、ESA、およびイタリア宇宙機関の共同プロジェクトだ。パサデナのカリフォルニア工科大学の一部門である JPL は、ワシントンにある NASA 科学ミッション局のミッションを管理している。JPL は、カッシーニオービターを設計、開発、組み立てを担当した。
カッシーニの詳細については、以下をご覧いただきたい。
Overview | Cassini ? NASA Solar System Exploration
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan