JPL News (Ja) - Space Topics 2020
Space Topics JPL日本語訳ニュース : August 03, 2020. Latest
原文 : July 07, 2020 - Building NASA's Psyche: Design Done, Now Full Speed Ahead on Hardware
NASA Psyche 探査計画 : NASA Psyche Mission の進捗 - 設計を終えてハードウェアの構築が加速度的に進展する
金属(M Type)小惑星プシケ(Psyche)と同じ名前を持つ、Psyche Mission は、先日、2022年08月の打ち上げ日に進展する重要なマイルストーンを通過した。現在のミッション工程は、火星と木星の間の小惑星メインベルトを航行するための、探査機のプログラムとミッションデザインからハードウェアを製造を行っているところだ。
★ 文中の ASU は、「Arizona State University」アリゾナ州立大学です。
Image Caption :2020年06月に更新された、Psyche 探査機のアーティストコンセプト。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/ASU
すべての NASA ミッションにも言えるが、Psyche 計画の初期の作業は、デジタル設計図の作成から始まった。続いてエンジニアリングモデルの構築が行われ、テストを繰り返し、科学データを取得して地球に送り届けるための探査機システムが深宇宙で機能することを確認した。
そして、チームはそのプロセスの重要な段階であるクリティカル理論を基にデザインレビューを行った。NASA 側は、電気通信、推進力、電力から航空電子工学、飛行コンピュータに至るまで、三つの科学機器やすべての探査機工学サブシステムを含む、すべてのプロジェクトシステムの設計を精査する。
「これは、ミッション工程全体で経験する最も強力なレビューのひとつだ」と、Psyche PI(主任研究員)としてミッション全体を率いる Lindy Elkins-Tanton は述べた。
「我々は、このレビューを”flying colors(成功裏に目的を達するなどの意)”でクリアした。課題はまだ終わっていないし、ゴールラインにも達していないが、いつものように力走している」
メタルロックの世界を明らかにする
Image Caption :このアーティストコンセプトは、火星と木星の間の小惑星メインベルトにある、幅 140 マイル(幅 226 キロ)の小惑星プシケを表している。NASA Psyche Mission は、この小惑星と同じ名前を付した。Psyche 探査機は、2022年08月に打ち上げられる予定で、2026年に小惑星に到着する。そこで 21 カ月月間周回し、その組成を探査する。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/ASU
科学者とエンジニアの協働により、小惑星メインベルトで最も興味深いターゲットのひとつである小惑星プシケの形成構造を解明するミッションを計画した。岩や氷で形成された天体である他のほとんどの小惑星とは異なり、プシケは主に金属の鉄とニッケルである、地球のコアに似た全体構造を持っている。これは、外層を失った初期惑星の心臓(コア)が暴露している可能性があると科学者は考えている。
我々地球の中心部は、実際に「現地調査」できるものではないため、小惑星プシュケ(幅約140マイル、226キロメートル)を探査することにより、我々の惑星や他の惑星がどのように形成されたかについての貴重な見識が得られる。
Psyche 探査機は、これらサイエンスの獲得のために磁力計を使って小惑星の磁場を測定する。Multispectral Imager(マルチスペクトルイメージャー)は、表面の画像だけでなく、構成や地形に関するデータもキャプチャする。さらに分光計は、表面から出る中性子とガンマ線を分析し、小惑星自体を構成する要素を解明する。
ミッションチームは、科学機器のプロトタイプとエンジニアリングモデル、および探査機のエンジニアリングサブシステムの多くを製作した。
こうしたモデリングは、実際のミッションで飛行するフライトモデルよりも安価な材料で製造されている。そうすることで、実際のフライトハードウェアを構築する前に徹底的にテストできることになる。
「これはもう、プログラムを”ステロイド”しているようなものだ」と語るのは、前述の Lindy Elkins-Tanton。彼女は、テンペのアリゾナ州立大学の惑星間イニシアチブのマネージングディレクター兼共同議長でもある。
「科学を測定し、データを収集し、すべてのデータを地球に送り返すために、探査機のすべてがどのように連携して動作するかを正確にレベル7、またはレベル8まで理解しようとすることが含まれる。ここまでやるのか、というステージだ」
Psyche 計画は、現在ハードウェアの構築に全速力で取り組んでいるが、失う時間はもう無い。探査機全体の組み立てとテストは2021年02月に始まり、NASA JPL が主導する「Deep Space Optical Communications」と呼ばれるレーザー技術のデモンストレーションを含む他の総ての機器は、2021年04月に JPL のメインクリーンルームに配送されなければならない。
Image Caption :カリフォルニア州パロアルトの Maxar Technologies で製作中の Psyche 探査機に、技術者が電気推進システムの一部を本体に統合する準備をしているところ。
Image credit: Maxar Technologies
ソーラー電力推進(SEP)シャーシと呼ばれる探査機本体は、カリフォルニア州パロアルトの Maxar Technologies(マクサーテクノロジーズ社)ですでに製造されている。COVID-19 防止のための社会的距離の要件を順守しつつも、エンジニアは今、推進タンクの取り付け作業に取り組んでいる。 Maxar は2021年02月に SEP シャーシを JPL に納入し、その数か月後には、探査機システムにすべての電力を供給するソーラーアレイを納入することになっている。
これらの工程のなか、ミッションを管理する JPL では、Psyche 計画全体について、いろいろと賑わっている。実践的な作業を行うために不可欠なエンジニアは、COVID-19 の安全要件に従って、電子コンポーネントの構築とテストを行い、JPL チームの残りのメンバーはリモートで作業を続ける。
Image Caption :試験に向けて評価中。Psyche 探査機が惑星間航行する本番と同じ条件で電気ホールスラスタを試験している Psyche エンジニアたちであるが、このように COVID-19 への対応のため、社会的距離を取り、マスキングをきちんと実行している。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
JPL は、Psyche のフライトコンピュータ(探査機の頭脳)を含むアビオニクスサブシステム(フライトのための局所的な電子機器)を供給する。クリーンルーム内のラックに機器が分散しているため、エンジニアは各部品を次の部品と統合する前にテストする。すべてが接続されると、ソフトウェア上でシステム全体をテストし、実際の航行を模して電子機器を操作することになる。
「これら深宇宙ミッションで私たちが誇りに思うことのひとつは、ハードウェアへの信頼性だ」と JPL Psyche プロジェクトマネージャーの Henry Stone(ヘンリーストーン)は述べている。
「統合システムは非常に洗練されており、包括的なテストが重要だ。堅牢性やストレス試験、さらに可能な限り多くの試験・調整を繰り返して行う」
「すべての問題とバグを明らかにし、修正しておきたい。起動後はハードウェアの修正ができないからだ」
続いて Psyche 本体であるが、2021年02月に組み立て、試験、打ち上げの準備作業を開始する予定である。これら一連の工程を我々は、ATLO と呼んでいる。
「鳥肌が立つだろうな、間違いなく」と Henry Stone は語る。
「その時我々は、大きなフェーズを通過し、十分なプロトタイピングと試験を行った事実は理解しているので、求める動作を普通にこなす探査機が、間違いなくそこにあるはずだ」
Psyche 探査機は、2022年08月に打ち上げられる予定であり、2026年初頭に小惑星に到着する。途中、2023年05月に重力アシストのために火星を接近フライバイする。
Image Caption :JPL で試験される、Psyche 探査機の推進機構である電気ホールスラスタ。青色の輝きは、車のヘッドライトやプラズマテレビで使用される中性ガスであるキセノン推進剤によって生成される。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
ミッションについて
ミッションをリードするのは ASU だ。 JPL は、ミッションの全体的な管理、システムエンジニアリング、統合と試験、およびミッションの運用を担当する。Maxar Technologies は、ソーラー電力推進(SEP)シャーシを担当している。
NASA Psyche ミッションの詳細については、以下を参照頂きたい。
Psyche Mission | Mission to a Metal World
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan