カッシーニ探査機 - エンケラドス(Enceladus): プリュームから噴出する氷粒子から見つかった新しい有機化合物


土星の衛星 Enceladus(エンケラドス)表面から噴出するプルームに、アミノ酸の成分とみられる新しい種類の有機化合物が検出された。これは、NASA Cassini Mission(カッシーニミッション)によって獲得されたデータに基づくものだ。
 

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このイメージは、土星衛星エンケラドスから氷粒子が放出される様子を表す。NASA カッシーニ探査機によって、新しく発見された有機化合物(アミノ酸の成分)がどのように検出されたかを示している。強力な熱水噴出孔が、エンケラドスのコアから巨大な海洋中に物質を放出し、水と混合した後、材料は水蒸気・氷粒子として宇宙空間に放出される。氷粒子に凝縮されているのは、窒素と酸素を含む有機化合物である。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
 

強力な熱水噴出孔は、エンケラドスの氷に閉ざされた海洋よりさらに深いコア部分からの物質を放出する。このコア物質は、水蒸気と氷粒子として宇宙に放出される前に、氷下海洋の水と混合する。新たに発見された氷粒子に凝縮した分子は、窒素と酸素を含む化合物であると判断された。

地球上においては、このような類似の化合物は、生命の構成要素であるアミノ酸を生成する化学反応によって生成される物質の一部だ。海底から湧き出す水熱ベントは、これら化学反応を促進するエネルギーの役割も持つ。科学者は、エンケラドスの熱水ベントも同様に働くと見ている。結果、アミノ酸が生成される。

「分析結果から推測される条件が正しければ、エンケラドスの深海から来るこれらの分子は、我々の地球で見られるのと同じ化学変化過程である可能性がある。アミノ酸が地球外の生命に必要かどうかはまだ判らないが、アミノ酸を形成する分子を見つけることは謎解きパズルの重要な部分だ」
国立ベルリン自由大学(Free University of Berlin)の研究チームを率いている Nozair Khawaja は述べる。2019年10月02日の「王立天文学会月報」において、彼らの調査結果が公開された。
 

カッシーニ(Cassini)ミッションは2017年09月に終了したが、ミッションによって得られたデータは、今後数十年間に亘ってくまなく分析される。 Khawaja のチームは、エンケラドスから土星の E リングに放出された氷粒子を検出したカッシーニ探査機搭載の Cosmic Dust Analyzer(宇宙空間で行うダスト分析 - CDA)のデータを使用した。
科学者は、CDA の質量分析計による測定値を使用して、疎らな粒子中の有機物質の組成を決定した。

これら特定された有機物は、まず始めにエンケラドスの海洋に溶解し、海洋面から蒸発して割れ目に向かい、外に飛び出すまでに割れ目内側の氷粒に凝縮して凍結されることを科学者たちは発見した。これらの割れ目から放出されるプリュームによって宇宙空間に吹き飛ばされ、氷粒子はカッシーニ搭載の CDA によって捕捉、分析されるに至った。

新たな発見は、不溶性の複雑な有機分子がエンケラドスの海の表面に浮かぶのではないかという、昨年のチームによる主張を補完する。チームは、アミノ酸の形成を促進する熱水プロセスに必要である海に溶けている成分を見つけるために、昨年からの研究をさらに深めた。

「エンケラドスでは、我々はより小さくて可溶性の有機材料を発見している。アミノ酸や地球上の生命に必要な他の成分の潜在的な前駆体だ」と共著者の Jon Hillier(ジョン・ヒリアー)は語った。

「この作品(研究・分析)は、エンケラドスの海には反応性の高い物質材料が豊富にあることを示している。エンケラドスでの生命存在調査における、またひとつ加えられた肯定材料だ」と共著者のFrank Postberg(フランク・ポストバーグ)は付け加えた。

カッシーニミッションの詳細は、以下をご覧頂きたい。

https://solarsystem.nasa.gov/cassini



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office