ボイジャー探査機 : 星間宇宙に飛び出したボイジャー 2


人工の物体が星間空間に到達するという、史上二度目の大いなる達成だ。 NASA ボイジャー(Voyager)2 探査機は、太陽が放出する粒子や磁場による太陽系の「保護バブル」であるヘリオスフィア(Heliosphere)を脱したとみられる。
 

このイメージは、ボイジャー 1 とボイジャー 2 の現在の位置を示している。両機は冥王星の軌道を遥かに越えて太陽によって形成されたヘリオスフィアの外側にいる。 ボイジャー 1 は、2012年08月にヘリオスフィアを脱出し、ボイジャー 2 は、2018年11月に異なる場所から脱した。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
 

ボイジャーチームのメンバーは、ワシントンでの米国地球物理学連合(AGU)の会議で、今日の午前11時(PST)その発見を議論する。記者会見は NASA Live で公開される。
 

NASA’s Voyager 2 Enters Interstellar Space


 

11月05日に探査機が太陽系を包むヘリオスフィアの外縁を横切ったと観測された。ヘリオポーズ(Heliopause)と呼ばれるこの外縁を指す境界は、熱く強い太陽風が冷たい稠密な星間媒体と出会う場所である。
片方のボイジャー 1 探査機は、2012年にこの境界を越えたが、ボイジャー 2 は、このゲートウェイを史上初めて星間空間から観測を行うことになる。

ボイジャー 2 は現在、地球から 110 億マイル(180 億キロメートル)の距離を越えたところにある。ミッションチームは、航行のこの新たな段階に入ってもボイジャー 2 との通信は可能だが、光速度で届けられるその通信情報は、探査機から地球にとどくまで約 16.5 時間は掛かる。太陽光が地球に届くのは約 8 分程度だ。
 

ボイジャー 2 に関する九つの事実を描いたアーティストコンセプト。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
 

ボイジャー 2 がヘリオスフィアから出たことを知らせる最も有力な証拠は、搭載されているプラズマ科学実験器(以下、PLS)から来たもので、ボイジャー 1 では1980年にこの機器は機能しなくなっていた。
最近まで、ボイジャー 2 周辺の空間は、主に太陽から流れ出るプラズマで満たされていた。太陽風と呼ばれるこの放出現象は、我々の太陽系内の惑星を封じ込めるヘリオスフィアを作り出す。PLS は、プラズマから太陽風の速度、密度、温度、圧力および放出量を検出する。ボイジャー 2 の PLS は、11月05日に太陽風粒子の速度が急激に低下するのを観測した。その日の計測器は、ボイジャー 2 周辺の環境に連続した太陽風の流れがないことを確認した。 つまり、ヘリオスフィアから脱したということだ。

プラズマデータを示したもの。アニメーションはファイルサイズが大きいので、避けました。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
 

「ボイジャーを運用していると、これまでに見たこともない発見ばかりで、まるで自分自身が探検家になったような気分にさせてくれる」と、マサチューセッツ工科大学の主任研究者であり、PLS 装置の PI であるジョン・リチャードソン(John Richardson)は語った。
「ヴォイジャー 1 は2012年にヘリオポーズを通過したが、PLS の無い状況で 2 号機とは別の場所で異なる時間であった。今我々は、これまでに見たことがない現象に出会っている」

ボイジャーのサイエンスチームは、プラズマデータに加えて、宇宙線サブシステム、低エネルギー荷電粒子装置、磁力計の三つの搭載機器によるデータを分析してきた。このデータは、ボイジャー 2 がヘリオポーズを超えたという結論と一致する。ボイジャーのチームメンバーは、2 号機が移動している現在の環境をより明確に把握するために、これら PLS 以外の搭載機器からのデータを引き続き分析したいと考えている。

「恒星間領域について学ぶことはまだたくさんある。間違いなくだ」Caltech を拠点とするボイジャープロジェクト科学者であるエド・ストーン(Ed Stone)は語った。

二機のボイジャーは、我々太陽系のヘリオスフィアから流れ出る一定の星間風がどのような相互作用を起しているかを見ている。ボイジャーによる観測は、NASA Interstellar Boundary Explorer(IBEX)のデータを補完するものであり、ヘリオポーズを遠隔的に探査するミッションとなっている。NASA はまた、ボイジャーが取得するデータを活用するために、追加ミッションとして Interstellar Mapping and Acceleration Probe(IMAP)を2024年に打ち上げる準備をしている。

「ボイジャーは、我々太陽系物理学研究者にとって、非常に特別な場所にいる」と、NASA 本部 Heliophysics Division のディレクター、ニコラ・フォックス(Nicola Fox)は述べている。
「我々の研究は太陽から始まり、太陽風が触れるすべての天体に及んでいる。ボイジャーから送られる太陽が及ぼす影響の最突端からの情報は、まったく未知の領域を捉えたデータとして予断なく受け取ることが出来る」

二機の探査機はヘリオスフィアから脱したが、正確に言えばまだ太陽系からは脱出してはおらず、今後直ちに出ていくこともない。

太陽系の限界とされる境界は、太陽の重力の影響を受けている小さな物体が漂うオールトクラウドの最外縁にまで到る。オールトクラウドの幅は正確には分かっていないが、太陽から約 1,000 天文単位(AU)から始まり、約 100,000 AU にまで広がると推定されている(1 AU は太陽から地球までの距離)。ボイジャーがオールトクラウドの内縁に到達するにはおよそ300年掛かる。さらにオールトを抜けて太陽の重力圏から脱するには30,000年は掛かると見られている。

ボイジャー探査機は、放射性同位体熱電気転換器(RTG)と呼ばれる装置により、放射性物質の崩壊熱を利用して動力を供給されている。RTG の電力出力は年間約 4 ワット減少する。これにより、時間経過とともに電源管理のため探査機に搭載された各種機器がオフにされていくことになる。

「ボイジャー探査機がこのマイルストーンに至ったとしても、十分なほど長い時間稼働してきたことを我々は喜び満足している」と、NASAのジェット推進研究所(JPL)のボイジャープロジェクトマネージャーであるスザンヌ・ドット(Suzanne Dodd)は述べている。
「この状況は、我々が待ち望んでいたものだ。二機のボイジャーがヘリオポーズの外側にいることで、さらに学べることができるからだ」

ボイジャー 2 は、1977年に ボイジャー 1 の16日前に打ち上げられ、両機とも元の目的地をはるかに超えて航行している。木星と土星をフライバイ観測した後、天王星と海王星の二つの巨大惑星の追加フライバイ観測が可能であることが判り、遠隔制御再プログラミングが施され、大きな処理能力を与えられた結果、四つの惑星をフライバイするミッションになった。彼らのそもそもの 5 年の寿命は 41 年に延長され、ボイジャー 2 は NASA の最長ランニングミッションとなった。

ボイジャーの物語は、現在および次世代の科学者・エンジニアだけでなく、映画、芸術および音楽を含む地球の文化にも影響が及ぶ。両探査機には地球の音や写真、メッセージを記録したゴールデン・レコードを積載している。二機の探査機は、何十億年にも亘って銀河を駆け巡る可能性があり、これら積載されたタイムカプセルは、人間の文明の痕跡のひとつになる可能性がある。



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office