インサイトミッション : 火星降下ミッションにおいて NASA が知ること

インサイトの火星着陸予定は日本時間27日午前05時頃


インサイトが火星にタッチダウンしたとき、何がおきるのか?

その時あなたが、NASA のジェット推進研究所にいるのなら、スーパーボウルで勝利した瞬間の歓声・笑い声のような、ともかくもその場にいる全員が大騒ぎする光景を目撃するのだろう。
ただし、その数分前の彼らは、9,100万マイルも離れた場所にいる火星着陸機からの電波信号を注意深く監視していたはずだ。これらの信号は、幾つかの異なる方法で中継されるため傍受時間も異なる。ミッションチームの「歓喜」は火星着陸直後か、数時間後となる場合がある。
 

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火星降下ミッションに入ったインサイトからの中継の様子。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech
 

着陸に関する様々な観測体制を以下に要約する。
 

Radio Telescopes(電波望遠鏡)

インサイト着陸機が火星の大気層に降下を始めると、単純な電波信号(以下トーン)が地球に戻される。エンジニアは、ウェストバージニア州グリーンバンクの国立科学財団のグリーンバンク天文台、ドイツのエーフェルスベルクのラジオ天文学施設のマックスプランク研究所からトーンの受信を試みる。その結果は JPL の Mission Control と Denver の Lockheed Martin Space 社の技術者に中継される。

このトーンは多くの情報を含まないが、通信エンジニアは、インサイトの大気層侵入、降下および着陸(EDL, entry, descent and landing)中でのキーイベントを追跡することにより、これらを確認することができる。例えば、インサイトがパラシュートを展開する場合、速度の変化はドップラー効果によって信号の周波数を変化させる。これは、救急車が進むにつれてサイレンの音程が変化して聞こえるのと同様だ。このような信号を解析することで、インサイトの EDL がどのように進行しているかを知ることができる。
 

Mars Cube One (MarCO)(インサイトを追尾するキューブサット)

二機のブリーフケースサイズの宇宙機がインサイトを追跡航行しており、EDL(大気層侵入、降下および着陸)イベントから送られる信号を地球に中継しようとしている。CubeSats と呼ばれる超小型宇宙機である MarCO は、将来ミッションでの EDL 中に発信されるデータを受信・送信する中継機としての役割を果たすテストミッションだ。

MarCO は技術実証宇宙機だ。EDL 完了だでの中継機能は持たせている。期待通りに働けば EDL の総てを地球に伝えるだろう。インサイトが着陸した直後の火星表面画像を届けてくれる可能性も持たせてある。
 

InSight(インサイト着陸機本体)

着陸した瞬間、インサイトは EDL 完了の「雄叫び」を上げるだろう。7分後には「公式見解」を地球に向けて出すことになる。

最初に、電波望遠鏡によってビーコン音を取得する。次に地球方向を指している、より強力な X バンドアンテナから「Beep 音(以下ビープ)」が送信される。このビープは幾つかの情報を含んでおり、着陸機が健全に機能している状態である場合にのみ発信される。NASA のディープ・スペース・ネットワークがこのビープを拾えたなら、インサイトが着陸の試練を克服できたということになる。エンジニアはその後、着陸装置が太陽電池アレイを正常に展開できたかどうかを確認する必要がある。
 

Mars Reconnaissance Orbiter(MRO、火星探査オービター)の役割

Marco CubeSats のほかに、インサイトの EDL を記録するのが NASA MRO だ。

MRO は、インサイトから見て火星の地平線上に消えるまで EDL の観測を続ける。周回して地球は輪に戻ると、エンジニアがそのデータにアクセスして確認する。PST 午後3時までには、MRO が得た着陸記録をまとめることができる。

MROの記録は飛行機のブラックボックスに似ている。つまり、インサイトが正常に着陸できなくてもその経緯を記録する重要な役割を持つのだ。
 

2001 Mars Odyssey(マーズオデッセイ)の役割

火星における最長探査記録を更新中のNASAのマーズ・オデッセイは、インサイトが費えた後もデータを中継することになる。オデッセイは、インサイトの火星への降下ミッション総てと、いくつかの画像を中継する。また、宇宙船の生存に不可欠なインサイトのソーラーアレイが完全に展開されたことを確認する予定もある。エンジニアはこのデータを PST 午後5時30分までにに取得できる。

さらにオデッセイは、MRO、MAVEN および欧州宇宙機関の EGO(Trace Gas Orbiter)とともに、着陸後のインサイトからのデータリレーとしても機能する。
 

着陸ミッションスケジュールは、以下からご覧頂きたい。

NASA Brings Mars Landing to Viewers Everywhere



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office