インサイトミッション : 着陸について、知っておくことが五つある


火星への着陸は、工学技術としては常に緊張を強いられるものだ、手に汗握る瞬間でもあり、その達成は偉業とも言える。しかし、ミッション毎での試みは、着陸機がどこに行き着くのか、またどのような分野のサイエンスを求めてそこに行くのかに基づき、それぞれ独自の特色を持つ。
 

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火星着陸を試みるインサイトを描いたイラスト。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech
 

11月26日、NASA は火星に新たな着陸観測機の設置を試みる。 インサイト(InSight)は、初めての観測である火星深部の研究に特化した着陸探査機だ。

火星圏到達後、最初に行われる重要な着陸過程において知っておくべきことが幾つかある。
 

火星への着陸は常にハードワークだ

火星への着陸は、行われたミッションの約 40 %(全宇宙機関による)程度の成功率である。火星着陸、その後のミッション継続を果たしたのは米国のみということになる。
地球のわずか 1 % に満たない薄い大気は、着陸機の減速にはほとんど役立たないことを意味する。それでも、NASA は火星へのアプローチで長年成功を手にしている。1965年以来、NASA による赤い惑星の表面を横切って飛行し着陸するというアプローチはほぼ成功を収めてきた。
 

InSight Landing on Mars

NASA ジェット推進研究所のチーフエンジニアである Rob Manning 氏による、着陸についての説明動画。
 

実証されたテクノロジーを活用する

2008年、NASA JPL ジェット推進研究所は、火星の北極にフェニックス探査機を上陸させた。デンバーの Lockheed Martin Space(ロッキード・マーチン・スペース社)によって製造されたインサイトは、フェニックス探査機をベースに設計されている。熱シールドやパラシュートなどの幾分の改良にもかかわらず、全体的な着陸設計はほとんどに同じだ。クルーズステージから分離した後、エアロシェルは大気中を降下していく。
パラシュートとレトロロケットの噴射は着陸機を減速させ、火星表面にタッチダウンする懸架された脚は、着陸瞬間の衝撃を幾分か吸収する。
 

「火星最大の駐車場」に着陸予定

インサイト搭載の科学機器のメリットのひとつは、火星上の何処にいるかにかかわらず、貴重なデータを偏向なく等しく記録できることだ。それによって、ミッションはフラットで頑丈な表面などという複雑なものを必要としなくなる(理想的には岩・岩塊等がほとんどないところ)。ミッションのチームにとって、着陸点である Elysium Planitia は、「火星最大の駐車場」とも例えられる。
 

ダストストーム(砂嵐)を想定して製造されている

インサイトのエンジニアは、厳しい環境に耐えられる着陸機を製造した。必要な場合は、砂嵐の中でも安全に稼働する。着陸機の熱シールドは、ほこりによる「サンドブラスト」に耐えられるほど分厚く設計されており、サンドストームが発生する大気の状態を予測して造られ、より多くの空気抵抗に直面する場合に備え、パラシュートはより頑丈に、さらにフェニックスよりも厳しく試験を重ねたサスペンションラインを備えている。

大気圏への侵入、降下および着陸シーケンスは、火星の天候の変化にも柔軟に対応できるよう設計されている。ミッションチームは、着陸前日に、現在活動中の NASA の火星探査機から日々の天気予報を受け取り、パラシュートによるランディングやレーダーでの火星表面探査の際に微調整を行えるように設定されている。
 

岩石タイプ惑星からの新たな科学を獲得する

インサイトは、私たちが住む地球と同様な惑星の内部について、新たな知見を得るだろう。ミッションチームは、火星の深い内部を調査・研究することによって、地球や月などの他の岩石惑星の世界がどのようなプロセスで形成されたかを知ることができると期待している。「我が家」である地球と火星は、45億年前に同じ原始的な物質から形成されたが、現在に至ったこの二つの惑星は、かなり異なったものになっている。なぜ彼らは同じ運命を共有出来なかったのだろう?

岩石タイプの惑星についての知見は、地球を見て得たものだけだ。インサイトチームメンバーは、地球と火星の内部を比較することで、我々の太陽系をよりよく理解できるのではないかと期待している。これらから学ぶことは、太陽系の外にある地球型の惑星を捜索するときに必要な裏付けとなり、生命活動の存在を支える可能性のある証拠を絞り込むかもしれない。つまり、インサイトは火星探査ミッションであるが、それ以上を求めるミッションであるとも言えるのだ。
 

このミッションの科学が、どのようにユニークなのかについて、以下で詳しく読むことができる。
Seven Ways Mars InSight is Different

また、本日リリースされたプレスキットには、ミッションに関する追加情報も含まれている。
Select Press Kit
 

JPL は、NASA Science Mission Directorate である インサイト(InSight)を運用・管理している。インサイトはアラバマ州ハンツビルのマーシャル宇宙飛行センターが管理するNASA ディスカバリープログラムの一つである。デンバーのロックヒード・マーティン・スペース社は、クルーズ・ステージとランダーを含むインサイト火星着陸探査機を製造し、ミッションのための宇宙船操作をサポートしている。

フランス国立中央科学院(CNES)やドイツ航空宇宙センター(DLR)を含む多くの欧州のパートナーが、インサイトミッションをサポートしている。CNES は、ドイツのマックス・プランク研究所(MPS)、スイスのスイス工科大学(ETH)、インペリアル・カレッジ、UK オックスフォード大学からのサポートを得て、内部構造のための耐震実験装置(SEIS)を開発し、DLR からは熱流および物理特性パッケージ(HP3)装置を提供された。
 

インサイトプロジェクトの詳細は以下をご覧頂きたい。また、当サイトにある日本語化したページは次段の URL であるが、こちらはページを移動するようになっている。さらに右(スマホでは下段)ナビにはインサイト関連の他の日本語ニュースを紹介している。参考になればと思う。

NASA InSight Mission

NASA InSight マーズディープコアミッション



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office