JPL News (Ja) - Space Topics 2018
Space Topics JPL日本語訳ニュース : October 30, 2018. Latest
原文 : October 29, 2018 - The Coincidence Between Two Overachieving NASA Missions
Dawn ミッションと Kepler 宇宙望遠鏡:終焉を迎える二つの異なるミッション
太陽系の外にある主星を持つ数千の系外惑星を発見した Kepler(ケプラー)宇宙望遠鏡は、宇宙空間に放たれて8年が経過した。また、小惑星メインベルト軌道に乗って複数天体のフライバイ観測を続けた Dawn(ドーン)探査機は、拡張ミッションを含めた11年間の探査を終えようとしている。どちらも燃料の枯渇によりその歴史的使命の終焉を迎えるのだ。
Imahe caption :
このアーティストコンセプトは、NASA Dawn 宇宙機が矮惑星であるCeres(ケレス)に到着したことを示している。Dawn は、イオン推進と呼ばれる技術を用いて宇宙を航行する。キセノンイオンは青色光で輝く。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
しかし、二つの過去に例をみない記録的なミッションは、偶然に起こった同時期の燃料の枯渇ということよりも、さらに多くの共通点を持っている。二つのミッションは、旧来の科学的根拠を打ち破る新たなデータを収集し、太陽系内外における解答を求めた。
Imahe caption :
ケプラー宇宙望遠鏡を描いたアーティストコンセプト。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
2007年に打ち上げられた Dawn 探査機は、火星・木星間にある小惑星メインベルト内軌道に乗った初めての宇宙機であった。2011年から2012年まで、Dawn は小惑星ベスタをランデブー(周回)観測した後に軌道を離脱し、2015年に到達したケレスでは三年以上にわたりランデブー観測を行ったが、2018年10月初旬の燃料ヒドラジンの枯渇を受けてその長い探査ミッションを終えることとなった。Dawn は、今後数十年間、ケレス周辺の安定した軌道に留まり続けるだろう。ケレスでの多くの発見のなかで、Dawn による大きな観測成果としては、ケレスでの有機物の発見や、矮惑星であるが、過去の広範囲に渡る海の存在を証明した。
一方、Kepler は2009年に打ち上げられ、銀河の各恒星の周りに少なくともひとつの惑星が統計的に存在することを明らかにした。また、他の星を周回する 2,600 以上の惑星が発見され、太陽系以外のさまざまな「場所」に世界中が目を向けることとなった。これらの世界の中には、岩石タイプで地球サイズの惑星もあり、そのうちいくつかは生命居住可能なゾーン内の主星を周回する軌道を持ち、液体の水が表面に宇宙に散逸することなく溜まり続ける可能性がある。Kepler はまた、太陽系には存在しない惑星を特徴付けた。これらは地球より大きく海王星規模までのサイズであり、巨大地球型惑星と言われる。
この二つのミッションは、エンジニアと科学者からのさらなる探究の求めに応じ、当初予定された寿命を超えて延長、拡張ミッションを行った。2016年、ケレスでの Dawn ミッションの延長か決まり、2017年にはケレスの表面上の22マイル(35キロメートル)という超低高度軌道を飛行観測する拡張ミッションを行った。ケレスの活動的な地質進化を理解することが主な目的であった。
2012年にミッションを終えた Kepler は、その後延長ミッションへと繋がれた。2013年に宇宙機を安定させた第2ジャイロスコープが故障した際、エンジニアたちの機転により、太陽光圧を利用して姿勢を制御した。2014年以降、この新しい延長ミッションは「K2」と呼ばれ、星座、銀河、太陽系のオブジェクトなどの科学観測を行ってきた。
二つのミッションは、全く異なるデータセットを持つが、どちらも科学者に考えるべきことを多々与えた。Dawn からは、ケレスが依然として地質学的に活発な活動を続け、塩水を地下から表面に押し上げて、その塩分を表面に堆積させている可能性が高いことが解った。Kepler ミッションからは、銀河内にある私たちの惑星同様に、宇宙では地球型惑星の存在は一般的であり、宇宙での生命存在は地球に限らず普遍的であることを学んだ。そのような惑星では、惑星や惑星系の多様性が示されているが、一部には私たちの地球とは非常に異なるものがあるのも確かだ。
両ミッションの終焉への準備は既に出来ている。しかし我々ミッションチームはとても喜んでいる。なぜなら、彼ら宇宙機が残したデータは、今後何十年にもわたり、更なる発見と解明の日を迎えることになるという事実を知っているから。
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan