Dawn ミッション:多くの遺産を残した Dawn、そのミッションの終焉が近づく


NASA Dawn(ドーン)ミッションは、11年間に亘る探査活動により、惑星科学の新しい地歩を築いてきた。息をのむようなイメージを収集し、惑星探査工学における未曾有の功績を残してその探査は終焉を迎える。
 

Imahe caption :
矮惑星ケレスを周回する Dawn 探査機のアーティストコンセプト。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA
 

Dawn ミッションは、当初の計画から数倍ほどに活動規模を大きくし、小惑星帯(アステロイドメインベルト)に存在する天体の総質量の 45% を占める二つの矮惑星、Ceres(ケレス)と Vesta(ベスタ)の探査・観測は、科学者にとって嬉しい期待外れとなるほどの結果を残した。

現在、探査機は重要で貴重な燃料であるヒドラジンをほぼ使い切っている。まもなく今月(09月)中旬から10月中旬にかけて、Dawn 探査機は地球とのコミュニケーション能力を喪失する。その後何十年もの間ケレス周辺で静的な軌道にとどまることになるだろう。

「Dawn が我々のミッション・ファミリーから旅立っていくのは悲しく寂しいことだが、Dawn ミッションによって得られた多くの業績に、我々は誇りを持っている」
ワシントンのNASA本部で惑星科学部門の acting director を務める Lori Glaze(ロリ・グレイズ)は語った。
「Dawn は、この二つの小さくて重要な世界であるケレスとベスタの科学的な謎を解き明かすだけでなく、二か所にある二つの地球外の天体を訪問し、軌道を回るランデブーミッションを行った最初の宇宙機だった。Dawn の科学と工学の成果は、宇宙開発の歴史を通じて残るだろう」
 

Dusk for Dawn: NASA Mission to the Asteroid Belt

Video caption : NASA Dawn 探査機は、小惑星メインベルトにあるベスタとケレスの二つの大きな矮惑星をイオン推進を使った探査を行い、サイエンスフィクションをサイエンスファクトに変えてしまった。ヒドラジンを使い果たしたこの秋にミッションは終了する。ヒドラジンは、探査機が地球と通信するための姿勢制御に欠かせない。
 

Dawn 探査機は、2007年09月にフロリダ州のケープカナベラル空軍基地からデルタⅡロケットによって打ち上げられた。NASA ハッブル宇宙望遠鏡などの地上・宇宙ベースの望遠鏡の観測により、ベスタとケレスの姿を含む火星と木星の間の小惑星帯にある天体の姿は捉えられていたが、最も詳細な画像さえもぼやけたものだった。

2011年から2012年にかけて、Dawn はベスタを掃討するかのように、クレーター・峡谷・そして山々など、これまでの想像を超えた成果をもたらし、それをイメージに収めた。

そののちの2015年のケレスでは、クライオボルケーノと神秘的な明るい斑点を検出し、セレスの内部から湧き出る鮮やかな液体の曝露によって生成された塩鉱床であることを示唆したものと研究者は考えた。

Dawn の目を通して見えるこれらの輝かしいスポットは、ドワーフ惑星の表面に散在するダイヤモンドのように輝いていた。

「Dawn の遺産は、太陽系内に僅かに残る二つの未知の惑星世界を探検したことだ」NASA JPL(ジェット推進研究所)の Dawn ミッションディレクターおよびチーフエンジニアの Marc Rayman(マークレイマン)は語る。
「Dawn は、二世紀もの間、星空の中の光のピンポイントだった異国の世界を私たちに示してくれた。観測を続けることによって、豊かで詳細な二つの矮惑星の肖像画を作り出し、想像することもできなかったエキゾチックで神秘的な風景を明らかにしたのだ」
 

獲得した工学

Dawn は、小惑星メインベルトの中で周回軌道を描く唯一の宇宙機であり、二つの地球外天体を周回観測した唯一の宇宙機である。これらを可能にしたのは高性能のイオン推進システムが確立されたことによる。このシステムは、SF ファンや宇宙探査ファンにお馴染みの非常に効率的な推進システムだ。

Dawn は、システムの能力をその限界まで駆使し、複数の目的地を訪れる(マルチランデブー)ことを目指す他のミッションにとって、イオン推進システムがどれほど有用かを示した。

イオン推進による航行を続けた Dawn 探査機は、2011年にベスタに達し、軌道上で14ヶ月間にわたって表面から内部構造までを探査した。2012年、Dawn はベスタ軌道を離れ、ケレスから観測データを収集するためのランデブー軌道に到達した2015年までの二年間以上を小惑星メインベルトで過ごした。
 

Dawn 探査機のこれまで

現在に至るまで、Dawn によって得られたデータは、太陽系初期の解明に大きな役割を与えた。

太陽系の夜明け(始まり)について、もっと知りたいという欲求は、Dawn 探査機をケレスとベスタに向かわせた。この二つの天体は、太陽系形成の初期段階を記したタイムカプセルとして情報の取得が出来るという見込みが持てる。二つの天体は、層状形成の秘密も露わにした。

「ケレスとベスタはどのように進化していったのか。激しい火成活動による岩石構造を持つベスタ、涼しく水分が豊富な過去の海洋存在を窺わせるケレス。これら二つの宝物とも言える天体は、将来の他天体を探査し理解することを助けるのだろう」と PI の Carol Raymond(キャロル・レイモンド)は述べる。
 

壮大なケレス

Dawn がケレスに到着するまでは、判らない事だらけであった。キャロル・レイモンドは、ケレスが凍った地殻を伴う巨大なキューボール状態であり、滑らかで若い年代の表面で覆われていることを見るのかどうか、疑問を持っていた。
結果として科学者が目の当たりにしたのは、古くに海洋史を持つ化学の進化を留める矮惑星の姿であった。
「私たちが目にしたのは、驚愕の事実であり、しかもそれがケレス世界全体を覆っているということだった」と彼女は語る。

高輝度スポットのいくつかは、塩分に富んだ材料で作られた鉱床であることが判明し、地下から噴出した炭酸ナトリウムで構成されているものであった。人間の目には汚れた雪に見えるという科学者も居た。

このような発見は、エンケラドスやエウロパのような氷の衛星だけではなく、ケレスのような矮惑星が、古い歴史の中で海洋を抱えていた可能性があるという考えを強めていくことになる。Dawn のデータによる分析からは、ケレスの地下には今も液体が残っている可能性があり、一部の地域では表面下深い貯留池からの供給によって表に噴出し、時期も比較的新しく地質学的に活発な活動であったことが示唆されている。

Dawn によるケレスに関する最大の発見のひとつは、Ernutet Crater(エルヌーテ・クレーター)地域にある。そこでは有機分子が豊富に発見された。Dawn のデータからはケレスの有機物が生物学的プロセスによって生成されたかどうかを判断することはできないが、有機物は生命存在の根幹を成す要素のひとつだ。

エルヌーテ・クレーターで見つかった有機物は、ケレスの内部から得られたという証拠が増えている。であればその有機物は、初期段階で地下海にしばらく存在する可能性が考えられる」と、Dawn のサイエンティストで JPL 副所長の Julie Castillo-Rogez(ジュリー・カスティージョ・ロジェズ)は述べている。
 

鮮やかなベスタ

ベスタにおいて太陽系形成初期を調べることは、Dawn 探査機による45億年前の証人尋問のようなものだった。
Dawn は矮惑星ベスタ世界のクレータをマッピングし、北半球が予想よりも大きな衝突現象を経験したことを明らかにした。また、これまでの科学者らの考えより早い時期に小惑星帯に大きな天体があることを示唆した。

ヴェスタは他にも私たちに驚きを与えた。

天文学としては小惑星に分類されているが、この矮惑星は豊かで多様な地形が明らかだ。さらなる驚きは、ベスタが経験した地球型惑星のような過程だ。
ハッブルによってレアシルビアと呼ばれる巨大な盆地にある高い山が観測されたころ、Dawn はベスタのマッピングを行い、ハッブルが観たその山は、エベレストの二倍にも達することが判った。さらに、グランドキャニオンに匹敵する峡谷の存在も明らかにした。Dawn はまた、一般的な隕石とベスタの相関も明らかにする。
 

現在、終焉に近づいた Dawn の2番目の拡張ミッションであるケレス探査では、高解像度の画像、ガンマ線と中性子スペクトル、赤外線スペクトル、重力データ等を収集し続けている。一日程度に一度、ケレスの上空約 22 マイル(35 キロメートル)を通過する。これは旅客機の高度の約三倍程度に過ぎない。これらの貴重なデータ収集は、スラスタの姿勢を制御するヒドラジンの最後を消費するまで続く。Dawn の姿勢を制御するリアクションホイールは、ミッションの初期段階で故障し、この重要な燃料に大きく依存してきた。来月(10月)初旬でヒドラジンが尽きると、探査機は地球との通信能力を失うが、ケレスに衝突することは許されない。

ケレスは生命の発展につながる可能性を持ち、化学の側面からの研究者に興味のある条件を持っているため、NASA は Dawn 探査機の処分のために厳格な惑星保護プロトコルに従う。システムを汚染から守るために故意に土星の大気層に突入したカッシーニとは異なり、Dawn 探査機は大気から遠く離れたケレスの周回軌道上に留まることになる。

エンジニアによる最終的な軌道設計により、少なくとも二十年間は衝突することはないと言う。Dawn ミッションを率いたマーク・レイマンは Dawn ミッションの終焉について好んで以下のように述べるという。
「人間の創造性と創意工夫に対する不活性(無作用?無抵抗とか?)な天体の記念碑」
(an inert, celestial monument to human creativity and ingenuity)

Dawn ミッションの遺産についての詳細は以下をご覧頂きたい。

Dawn Mission Toolkit



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO. TPSJ Editorial Office