JPL News (Ja) - Space Topics 2018
Space Topics JPL日本語訳ニュース : April 11, 2018. Latest
原文 : March 28, 2018 - Marsquakes' Could Shake Up Planetary Science
インサイト火星着陸探査機:火星の地震探査は惑星科学史でのマイルストーンとなるのか
来年、NASA インサイト科学チームは、探査史上初めて火星の表面下の「内部構造」の姿を我々に披露してくれるだろう。
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火星の内部構造を示すアーティストコンセプト。 最上層は地殻、その下にはマントルがあり、最も内側にコアがある。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech
NASA が岩石惑星火星の表面下を探査するために投入する初めてのロボット着陸機インサイトを送ることによって、素晴らしいプレゼントが我々に届く。地震探査を中心とした内部探査を意味する”InSight”は、火星の地殻、マントルおよびコアについて知見を得るために来月05月に地球を飛び立つ。
Mars in a Minute: Are There Quakes on Mars?
60秒にまとめた楽しい動画。ぜひ観て頂きたいです。
インサイトは惑星形成がどのような過程を持つのかを明らかにする
NASA ジェット推進研究所(JPL)にあるインサイトの主任研究員であるBruce Banerdt は、「地震学は、地球における地震についての調査はすでにいくつかの答えを明らかにしている」と語った。しかし、地球はその古代の歴史の多くを隠し、何十億年もの間、その地質学的記録を崩壊させてきた。しかし火星は、地球の半分の大きさでしかなく、初期の誕生の歴史を保存している可能性の高い「化石の惑星」とも言える。
「形成中に見られるこの幻想的な「岩石のボール」は、多様で魅惑的な惑星に変化していった。まるで蝶々のように」と Banerdt は語った。
「地震学を用い、火星がどのように形成されたか、どのように惑星が現状に成長したのかを学びたい」
惑星 CT スキャン
惑星を形成する岩石が壊れたり(プレートが)移動したりすると、惑星全体を揺らす地震波が発生する。我々が地震としてよく認識しているこれらの波は、内部の構成物質に応じて異なる速度で移動していく。
インサイトに搭載された SEIS 地震計は、これらの地震の規模、頻度、速度を測定し、波の伝わる様子をスナップショットとして表してくれる。
「地震計は、惑星内部のイメージを撮るカメラのようなものなのだ」と Banerdt は言った。
「これは、火星を CT スキャンするようなものだ」
これまでに行われた観測により、惑星内部から火星の地殻を形成するようになった、より軽い岩石と鉱物と、火星のマントルとコアを形成するために沈んだより重い岩石や鉱物が含まれることが判っている。科学者たちは、火星におけるこれらの物質の層化について学ぶことにより、「地球」が火星や金星ではなく今の「地球」となった理由を説明することができると考えている。
ぼやけた画像
火星で地震が起こるたびに、インサイト着陸探査機が設置した SEIS に惑星の内部の「スナップショット」を与えることになる。インサイトチームは、探査機のミッション期間中に数十から数百の地震に遭遇すると推定している。定期的に薄い火星の大気を通過する小さな隕石も、地震の「スナップショット」としての役割を果たす。
「最初は、ぼやけた編集画像になるだろうが、火星の「震え」が増えるほど、より鮮明になる」と Banerdt は語った。
大事な一つを得るためには、一点に集中し、この火星内部世界から届くサインを見逃さないことだ。地球上の大部分の地震学は、複数の観測点から測定を行うが、インサイトは火星一か所での地震計による計測となる。科学者は創造的な手法でデータを解析しなければならない。
「我々には賢明さが必要だ」と Banerdt は語る。
「同じ地震から発生する様々な波が、層状をどのようにして跳ね伝わり、さまざまな時代のポイントに衝突するかを、インサイトは測定することができるのだ」
月震と火震
NASA が地震探査ミッションを行うのは、インサイトが初めてではない。
月有人探査のアポロミッションには、四機の地震計による観測が含まれていた。宇宙飛行士はモルタルラウンドを爆発させて振動を発生させ、月表面から約 328 フィート(100 m)の表面下の観測を行った。彼らは月面にロケットの上段を墜落させ、衝撃で発生した地殻の揺れを探査した。併せて彼らは、何千もの本物の月震と隕石のインパクトも検出した。
バイキング火星着陸機は、1970年代後半に火星で地震探査を実施しようと試みたが、当時の搭載地震計は、ショックアブソーバを備えた下脚を持つ着陸機の上で、風に揺れている状態で設置されていた。
「あれは障害のある困難な実験だった」と Banerdt は語った。
「火星表面から上に3フィート高い場所へ地震計を設置して、”我々は火星で地震学をやっているんじゃないんだ”とジョークを飛ばすようなものだった」
インサイトは地震学以上のものを求める。着陸装置上の無線信号からのドップラーシフトは、惑星の核が依然として溶融しているかどうかを明らかにすることができる。内部から熱を測定するために自ら掘削するプローブが設計搭載されている。風、圧力、温度センサーにより、科学者は気象に起因する振動的な「ノイズ」を除去することもできるよう設計されている。このすべてのデータを組み合わせると、要求の完全に近い火星の内部画像を得ることができるのだ。
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan