カッシーニ探査機 : 歴史的な惑星探査の終焉


NASA カッシーニ探査機は、土星の大気圏に突入し、「環状星団」における13年間のツアーを終了した09月15日の今日、驚愕の太陽系探査であったひとつの時代が終わりを告げた。ボイジャーが「太陽圏を超えた」ことも併せてである。
 

カッシーニ探査機が土星に突入した直後の NASA JPL(ジェット推進研究所)の様子。
Photo Credit: NASA/Joel Kowsky
 

NASA 科学ミッション・ディレクターである Thomas Zurbuchen(トーマス・ザブーケン)氏は、次のように述べている。
「すばらしいミッションの最終章である土星への抱擁だが、これはまた、新たな始まりでもある。 カッシーニのタイタン探査と、エンケラドゥスでの海洋世界の発見は、地球外での生命探査を求める我々に対して驚きと期待を与え、それまで抱いていた認識を全く変えてしまったんだ」
 

Farewell to Saturn: Highlights from the End of NASA's Cassini Mission

2017年9月15日、カッシーニ探査機は土星にダイビングし、20年に亘るディスカバリーミッションを終えた。動画は、カリフォルニア州パサデナにある NASA JPL(ジェット推進研究所)のミッションコントロール、TV 解説、およびミッション終了後のニュースブリーフィングの場面。
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大気圏に突入後の観測として受け取ったテレメトリーは、スラスタによる制御が正常に働いていることを示している。
オーストラリアのキャンベラにある NASA DSN(ディープ・スペース・ネットワーク)において午後04時55分(PDT)に信号を受信し、これがカッシーニ探査機とのコンタクト喪失の瞬間であった。

NASA JPL のディレクタである Michael Watkins(マイケル・ウォトキンズ)は、「太陽系惑星としての土星系の見識を改めさせ、次世代へのバトンを渡したカッシーニとの別れは辛く苦いものだ」と語る。
 

Cassini's Last Looks at Saturn

このビデオには、カッシーニが最後に撮影した画像が含まれている。この画像は、直後に土星に突入する大気圏の雲頂を示している。
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カッシーニの土星への急降下は、土星とそのリングの間の 22 回に亘る「グランド・フィナーレ」と呼んだダイビングを終わらせ、これまでに人類が成し得なかった試みを予定通りに実行した。

「彼らカッシーニミッションチームは、崇高な目的(衛星群への汚染等の影響を省く)に探査機を導くという、偉大な功績とも言える素晴らしい仕事をしたんだ」
カッシープロジェクトマネージャー、Earl Maize(アール・メイズ)はチームを讃える。
「7年前に行った軌道設計は、土星・リング間へダイビングするという、土星赤道面に釘を打って裏に突き抜けさせるような22回に及ぶナビゲートであり、科学研究者とミッション技術者の垣根を越えた、素晴らしい栄光あるミッションとなる終章を描いたんだ」

計画どおり、カッシーニ搭載の科学機器 12 基のうちの 8 基から得られた最終データは、予定通りに地球に返された。ミッションのサイエンティスト達は、これから長い時間を掛けて、得られた最終的な観測結果を精査することによって、土星についての新たな知見を得るのだ。

カッシーニ計画のプロジェクトサイエンティストである Linda Spilker(リンダ・スピルカー)は、次のように述べる。
「私たちカッシーニプロジェクトチームは、もう探査機が宇宙に存在しないことを判っているし、昨日までとは違う日々がやってくることも知っている。でも、地球から夜空を見上げて土星を見つけるたびに、カッシーニが今もそこにいるって感じることになることも判っている」
 

NASA Mission Control 360 Live: Cassini’s Finale at Saturn

パノラマによる合成画像などを使った動画。
 

カッシーニ探査機は、1997年にフロリダのケープカナベラル空軍基地からリフトオフし、2004年に土星に到着した。NASA は二年間のミッションを最初は2年間、その後はさらに7回に亘り延長を重ねた。二回目の延長ミッションでは、残容量のロケット推進剤を使用し、土星の氷衛星エンケラドゥスフライバイを数十回行った。
カッシーニ探査機の土星本体への直接的なダイビングによる終焉は、土星の衛星、特に地下の海洋や熱水活動の兆候を持つエンケラドゥスをそのまま汚染せずに保存するという、将来探査を見込んだ意図的なものであった。

カッシーニ探査機自体は消え去ったが、巨大な土星系、その磁気圏、リング、衛星について収集された膨大なデータからは、今後数十年に亘って新しい発見を生み出すことになるのだ。
 

Final Moments in Cassini Mission Control

カッシーニが、土星大気圏に突入する瞬間を示す信号が、キャンベラの DSN に届くのを待っていたエンジニアたちのその瞬間。直後に探査機は20年の航海を終えて、最終的に土星の大気圏に突入した。
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「カッシーニはいなくなったけど、彼がくれたサイエンスは、これから何年も私たちを捕えて放さないはず」と Linda は語った。

「生涯を掛けて学ぶべき山ほどのデータを私たちは彼から受け取ったということ。ただし私たちの今は、彼がくれた果実をひと齧りした程度に過ぎない」
 

カッシーニのグランドファイナルに関する情報は以下にある。

The Grand Finale Toolkit
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office