JPL News (Ja) - Space Topics 2017
Space Topics JPL日本語訳ニュース : June 09, 2017. Latest
原文 : May 24, 2017 - Cassini Looks on as Solstice Arrives at Saturn
カッシーニ探査機 : 土星の夏至から
NASA カッシーニ探査機は、09月15日にグランドフィナーレとしての最終ミッションを完了するまでにまだ数ヶ月を要しますが、熟練した土星探査機は今日、新たなマイルストーンに達しました。探査機が土星の至点(夏至・冬至)に土星面を通過するのです。
土星の至点は、約15地球年毎に発生します。
2013年06月から2017年04月にかけて、北半球が夏至に向かうにつれて変化した土星の北極圏。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/SSI/Hampton Univ.
至点に到達し、惑星・リング間軌道に沿って土星大気システムの季節的変化を観測することは、カッシーニ探査機の第二の拡張ミッションの名前である「Cassini's Solstice Mission」の第一の目標でした。
カッシーニ探査機は、土星とその周回リング、衛星を研究するために、4ヶ年計画で2004年に土星に到着しました。2008年から2010年までのカッシーニの最初の拡張ミッションは、「Equinox Mission」と呼ばれていました。このミッションフェーズでは、カッシーニ探査機は太陽光が土星のリングを劇的に照らし出した際に発生する影によって新しいリング構造を明らかにしました。
NASAは、カッシーニ探査機に「Equinox Mission」終了後の2010年からさらに7年間のツアー、「Solstice Mission」を付与することを決めました。
NASA JPL のカッシーニ計画のプロジェクトサイエンティスト、Linda Spilker は、「カッシーニの「Solstice Mission」では、初めて土星で全シーズンを目の当たりにした。土星における惑星システムは冬から夏にかけて劇的に移行する。カッシーニ探査機のおかげで、我々はリングサイドに特別シートを持っていたと言える」と語りました。
土星
画像は2009年春分点の土星。太陽方向に向いた面は全球的に照らされており、北極は半分が影となっている。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
「Solstice Mission」の間、カッシーニ探査機は爆発的に発生した巨大な嵐が、土星を覆っているのを観測しました。探査機はまた、霞状の雲がそこで形成され始めた時期に、遠い北極に残っていた六角形状にあった青の色合いが消失するのを観測しました。霞状の大気雲は、土星の大気の特徴が木星のそれよりも大気上層が鈍って見える理由の一つです。
観測ミッションからのデータは、土星の霞状の雲の形成が季節的に変化する「温度」と土星の上部大気の「化学組成」にどのように関係しているかを示唆していました。カッシーニ探査機の研究者は、エタン、プロパン、アセチレンなどの微量炭化水素化合物が、土星の太陽光の変化量が他のものよりも年代的に早く反応することを発見しました。
研究者たちは、カッシーニ探査機が土星の観測データから、変化が徐々に起こるのではないことにも驚きました。彼らは、土星の帯状の大気の特定の緯度で劇的に変化が起こることをカッシーニデータから確認しました。
「最終的に半球全体が変化するが、季節の異なる時期に特定の緯度帯で、これらの劇的変化によって終着する」とJPL Cassini imaging team である Robert West は述べています。
リング
北半球の春分から夏至に向かって、太陽はリングの北面よりもずっと高くなりました。 太陽が高くなるにつれてその光はリングに深く浸透し、ミッション中にそこに見られる最も暖かい温度に加熱されます。
太陽光による「日差し」により、カッシーニの観測機器にとって、”粒子がどのように詰まっているか、さらにリング面の真ん中に埋まっている粒子がリングの外層のものとどのように異なる組成または構造を持っているかどうか”の解明を裏付けます。
土星の太陽に対する角度が変化しているということは、リングが最高点で地球に向かって傾いていることを意味します。 このようなジオメトリからは、カッシーニの無線信号が、高密度のリングをより簡単に、リング粒子に関するより高品質なデータを提供してくれます。
タイタン
2009年の土星春分点観測に続き、カッシーニ探査機はタイタンの南緯度から赤道、北極へと雲の活動を観測した。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
カッシーニ探査機は、土星の最大の衛星であるタイタンが季節とともに変化し、ときには大気雲の活動が劇的に変化するのを見てきました。カッシーニ探査機は、2004年にタイタンの南極周辺のメタンの嵐のような雲を観測した後、2010年にはタイタンの赤道に巨大な嵐が移行するのを観測しましたが、北部にも同様な雲がいくつか現れはじめました。予測した気候モデルを無視するかのようなこうした活動は、北半球では数年前に始まったと考えられています。
「タイタンの大気の表面や雨季や風のパターンが季節とともにどのように変化し、その変化の時間経過を観察することで、大気層やその表面についての重要な情報が得られる」と Cassini imaging team の Elizabeth Turtle は述べています。
2013年に、カッシーニ探査機はタイタンの高い北部でのみ観察されていた「霞状の雲」と微量炭化水素の突然の急速な蓄積を南部で観測しました。これは、タイタンの主要な大気循環が方向を変える季節的な逆転が進行中であったことを科学者に示唆しました。この循環は、明らかに新鮮な炭化水素化学物質を赤道に近いところから南極に向けて導いていることを示すものです。このことにより、南極の冬が深くなるにつれて太陽光によって分解されることを遅延します。
エンケラドス
エンケラドスにとって、最も重要な季節変化は、南部の冬の暗闇の始まりにありました。
これは、カッシーニ探査機が地質学的に活動的な太陽光に照らされた表面を観測できないことを意味しましたが、これによって探査機は、エンケラドス自身が発する熱をより明確に観測することができました。
影になったエンケラドスの南極を、カッシーニ探査機の科学者は太陽の影響を気にせずにそこの地形の温度をより詳細に観測することができたのです。
これらの観測は、研究者が表面下にある地球によく似た海をよりよく理解する助けとなっています。エンケラドスの南極地域では、氷に隠された海から裂け目を通ってカッシーニ探査機が直接採取した氷と蒸気が勢いよく噴出しています。
Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan