カッシーニ探査機 : 2005年、再び訪れたタイタンへの歴史的なランディング
 

2005年1月14日にホイヘンス・プローブによって約6マイル(10キロメートル)の高度から撮影された画像を合成して作成されたものです。
Image credit: ESA/NASA/JPL/University of Arizona
 

金属製の皿状のプローブは、2時間30分のタイタンへの降下を経て、氷点下数百度(華氏)の極温のなか、水氷状の小石で覆われた暗い洪水痕状の平地にソフトランディングしました。ホイヘンス・プローブは、着陸した周辺での画像取得やデータ収集を行い、膨大な観測データを母船に送りました。母船が地平線に没し、通信が途切れた後、プローブの通信機器はその「声」を永遠に消し去りました。
 

Titan Touchdown

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サイエンスフィクションのように見えるかもしれませんが、この動画は土星最大の衛星タイタンの表面上で12年前に実際に行われたミッションです。ESA が開発したホイヘンス探査機のミッション成功の瞬間です。

欧州宇宙機関のプロジェクトであるホイヘンスは、NASAのカッシーニ探査機に搭載されてタイタンに渡り、その後、2004年12月24日に母船より切り離されて20日間に亘り海岸線を運航しました。

2005年01月14日、プローブはパラシュートの下でゆっくりと回転しながら複雑な有機化学物質を分析し、風を測定することによりタイタンの高密度で濁った大気をサンプリングしました。 降下中に何百もの画像が撮影され、暗い排水路(drainage channels)に加えて急な渓谷によって交差する明るく険しい高地が現れました。プローブが着地した場所は、乾燥したレイクベッド(湖底)に似た、荒い顆粒状の表面でした。
 

ホイヘンスの「思い」

今日現在、ホイヘンス・プローブはタイタンの寒冷で湖底のような荒涼とした「終の住処」に静かに佇んでいます。「彼」のミッションはタッチダウン後わずか数時間で終了し、母船のカッシーニ探査機は引き続き土星とその衛星に関する観測ミッションの一環としてホイヘンス・プローブの上から探査を続けています。
劇的な最終年である今年09月15日にカッシーニ探査機のミッションはフィナーレを迎え、土星の大気圏への運命的な「ダイブ」によって長かった探査は終了します。

ホイヘンスによるミッションの意義は、カッシーニのチームメンバーと NASA 指導部からも大きく評価され、
「ホイヘンス・プローブの降下と着陸は、タイタンの探査と外惑星衛星への初の軟着陸として惑星探査に大きな飛躍をもたらし、霧に覆われたタイタンの海洋世界への理解を完全に覆した」と、NASA ジェット推進研究所のカッシーニプロジェクトの科学者、Linda Spilker は評価しました。

「ホイヘンスからの画像は、母船(カッシーニ)から捉える軌道上の画像が全てではなく、川や排水路としか見えなかった、ぼんやりとした柔らかい特徴でしか確認出来なかったものが、ホイヘンスの画像により、その後のタイタンの形成史を観測した際の解釈に大いに役立つロゼッタストーンとなった」
ボールダー宇宙科学研究所のカッシーニ・イメージングチームリーダー、Carolyn Porco は語りました。

「カッシーニ探査機とホイヘンス・プローブのミッション成果は、タイタンが様々な方向からの観測により地球を模したような素晴らしい世界であることを示している。ホイヘンス・プローブがタイタンへの降下中に行った探査は、それまでの比較とは違う新しい次元を示した知見を得た。ホイヘンスは、タイタンを探査し続けることが人類にとってなぜ重要かを強調した」
とコーネル大学の Alex Hayes は述べました。

「12年前、この小さな探査機(ホイヘンス)は、人類が到達した最遠の天体である太陽系辺境にあるタイタン世界に降り立った。この小さな世界で人類の居住が可能なのかを暴く道のりへのマイルストーンだ」と、NASA 本部 ディレクター、Jim Green は語りました。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office