Dawn 探査機:新たなケレスの視点

月末に実施した、Dawn 探査機の高高度への軌道遷移に伴う観測画像が届きました。12月初旬に予定軌道に到達します。ミッション項目達成後さらに観測を続ける Dawn 探査機の勇姿は、カッシーニミッションと併せて惑星探査に係る科学者の意気込みを強く感じさせます。
 

Image Caption :
Dawn 探査機のケレス到達から話題になっていた輝度の高いエリアを、新たなビューから撮影した画像が届きました、08月に軌道変更を行ってから初めての画像です。明るい地域は、太陽の位置によって暗くなったクレーター地形(Occator Crater)の中でも際立って輝いています。撮影日時は10月16日、ケレス表面から約 920 マイル(1,480 キロメートル)です。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA
 

中央の明るい領域と、二次的で反射の少ない領域を持つ Occator Crater は、幅 57 マイル(92 キロメートル)、深さ 2.5 マイル(4キロメートル)で、画像は地質活動が比較的最近に行われた証拠を示しています。

最新の解析では、この噴火口の明るい物質は、下から浮かび上がって凍ってから昇華した褐色の液体が、氷から蒸気に変わった後に残った塩から構成されていることが示唆されています。数百万年前に火口を形成した衝撃により、火口の外側の領域を埋め尽くした物質を再発掘し、塩分を含む液体の「湧き上がり」を引き起こした可能性があります。

「この画像は、Dawn 探査による、魅惑的でユニークなケレス世界の上に浮かび上がる不思議を捉えたものだ」と、Dawn の技術者でありミッションディレクターである Marc Rayman は述べました。
 

Image Caption :
Dawn 研究者は、人間の目にどのように矮星の色が現れるかを近似したケレスのイメージを発表しました。ベルリンの DLR(ドイツ航空宇宙センター)が作成したこのイメージは、異なる波長の反射光からフレームカメラの赤色、緑色、青色のフィルターを使用して合成されたものです。
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA
 

Dawn 探査機は、2015年03月06日に軌道に到着して以来、数万の画像やその他の情報を収集しています。国際宇宙ステーション(International Space Station)の地球からの高度と同等の約 240 マイル(385 キロメートル)の高度でケレスを観測して八ヶ月以上経過した後、 2016年08月にはより高い見通しに向かいました( ” Dawn 探査機が高高度軌道への軌道変更を実施する ” 参照)。 10月初旬に 920 マイルの高度に到達し、ケレスについてのイメージや他の貴重な洞察をもたらしました。

11月4日、Dawn 探査機はケレスから 4,500 マイル(7,200 キロ)以上離れた六番目の科学軌道に向かい始めました。 Dawn 探査機は、ケレス周回軌道のほとんどを螺旋状に旋回させながら方向を変える必要がありましたが、エンジニアはこの次の軌道に宇宙船が到着する方法を再考し軌道決定しました。イオンエンジンは Dawn 探査機がすでに進行中の方向と同じ方向に推し進めます。これは、探査機の通常の螺旋操作よりもヒドラジンとキセノン燃料の消費を少なくします。順調に行くと、探査機は12月初旬にこの六番目の軌道に到達するはずです。

Dawn 探査機が向かうこの六番目の軌道で実施する科学目標は、以前に収集した測定値を精緻化することです。ケレスの表面の組成を調べている探査機搭載のガンマ線と中性子分光器は、ケレスとは無関係の宇宙線からの放射線を識別すると思われます。科学者はケレスの測定値からこれら「ノイズ」を差し引いて、情報をより正確にすることができるのです。

Dawn 探査機は、今年07月より開始した新たな長期ミッションフェーズにおいて、本体、観測機器ともに正常に働いています。(注:燃料の枯渇がミッションの終了に係る)
 

Dawn 探査機は、先に訪れたベスタと併せてケレス探査ミッションの本来の目的を総て達成しています。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office