ジュノー探査機 : JIRAM が捉えた木星大気構造の見事な現象

NASA ジュノー探査機は、一回目の木星近接フライバイを行い、木星の北極から南極に渡る初の映像を地球に届けてくれました。その画像は、これまで私たちが見てきた太陽系の巨大ガス惑星木星の姿とは違い、詳細な大気流の構造や気象の活性を見事に捉えています。
 

木星の北極の上から南極にかけて、6時間のトランジットの間に収集された 6MB のデータのダウンロードには、 1半日かかりましたが、分析が進行中ではあるものの、いくつかのユニークな発見が撮像から見て取れます。イタリア宇宙機関が開発した木星赤外オーロラマッパー(JI-RAM)は、北と南の極域で木星のいくつかの顕著な赤外線波長による画像を取得しました。
 

以下は、本文を割愛して取得画像それぞれの NASA 研究者による初見を抄訳してまとめたものです。
 

ジュノーから送られたこの赤外線画像は、木星の南極で発生した前例のないオーロラの光景を見せてくれる。このような現象は、地球上では発生することはありません。
Image credit: Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
 

2016年8月27日、木星探査を行っている NASA 探査機ジュノーが驚愕のシーンを捉えた。赤外線カメラ(JIRAM)によって捉えた木星の南極付近で発生したオーロラは、地球方向からは見ることの出来ない天文ショーの一つであり、木星の強力な磁場を避けるため、南北に極端な極軌道を取るジュノーならではの撮像だ。来年に探査を終える土星探査機カッシーニも同様に極軌道を描きながら様々な探査を実行している。

この撮像は、ジュノーに搭載されている「赤外オーロラマッパー(JIRAM)カメラ」を駆使し、3.3から3.6ミクロンの範囲の波長で、極地で励起された水素イオンによって発生するオーロラを見事に捉えたものだ。

近木星点通過後、数分間隔で撮影した三枚の画像をモザイクしたものであるが、今後も同様に我々を驚かすミッション成果をこの地球に届けてくれることと期待する。
 

2016年08月27日、木星の北極に最も接近する約二時間前に、捉えた画像。
Image credit: Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
 

また、このオーロラ(一つ上の画像)を捉える前、近木星点を通過する二時間前に捉えた北極方向からの撮像が上画像だ。
JunoCam が捉えたこの画像は、木星から19万5,000km 離れた木星に近づくタイミングで捉えられたもので、その後近木星点を通過後、オーロラの撮像に成功している。

赤道付近のベルト状に展開する、お馴染みの大気構造等とは違い、木星の北極では、地球で発生するものと同様な巨大な台風構造が不均一に乱立している様子が見られる。1974年のパイオニア11号による木星フライバイでは、こうした方向からの観測は行われていなかった。
 

木星の極冠の頂上から約48,000マイル(78,000キロメートル)上から捉えた画像。
Image credit: Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
 

このの二枚の画像も同様に、木星北極付近の大気表面から7万8,000km あたりで捉えたもの。
台風のような風車構造が乱雑に発生している領域は、明るい部分にある上下(木星では東西)に渡る二本の大気ジェット構造を境界として乱立している(境界の波状外観はロスビー波を表している)。
地球でも見られる、主に東西(画像では上下)に流れる大気流により、南北(画像では左右)に発生する温度差によって台風構造が引き起こされている可能性を、この画像は示している。

北極領域は、周辺離散大気からなる様々な特徴を有しており、幾つかは楕円構造だが、大きく明るい特徴が見られる構造は、地球で発生する台風のような風車状であることが興味深い。こうした特徴を追跡探査することは、木星大気ダイナミクスについての手掛かりをもたらすものである。

また、この画像は木星上の雲のシャドーイングを初めて捉えたものでもある。画像上部の昼夜境界付近に在る高高度の雲と見られる特徴は、下部にある雲のデッキ上に照らされていることが判る。

二枚の画像には微妙な色の違いが見られるが、おそらくJunoCam 光学系内の散乱光の結果であろうと研究者は見ている。
 

JunoCam は、2016年08月27日、ジュノーが最も接近した約1時間後、雲頂から約58,700マイル(94,500キロメートル)上を通過する際に、この木星の南極地域を撮像した。
Image credit: Image Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS
 

この視点からの撮像はジュノーによって初めて撮られた南極付近のものだ。最接近の一時間前に捉えたこの画像からは、北極領域と同様に、赤道付近のおなじみの構造とは異なり、台風構造が反時計回りに不均一に乱立していることが判る。

土星探査機カッシーニが、2000年に土星に向かう途中で木星をフライバイした際には、極端な斜めの角度で極域の大部分を観察することができたが、南極付近はこの視点からは観測出来なかった。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office