Dawn 探査機:重力データから、ケレスの内部構造に新たな知見

NASA の Dawn ミッションによってもたらされた撮像データは数万点に及びますが、(驚きの連続であった数々の画像によっても)これらからはケレスの詳細な内部構造は読み取ることはできません。しかし、Dawn 本体による天体運動から、科学者は内部構造を深く研究するための有力な科学データを得ています。
 

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NASA の Dawn ミッションが行った Dwarf Planet であるケレスの内部構造を、得られた重力データに基いて描かれたアーティストコンセプトです。” Full image and caption ”
Image Credit : NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA
 

ケレスとランデブーする Dawn 探査機は、微小ではあるもののセレスの重力の影響を受けています。そのため、研究者は探査機本体が受ける僅かな変化を継続解析し、ケレスの重力構造を読み解くことが出来ます。マッピングされた重力構造は、「Journal Nature」にも提供されています。

「新たに得られた重力データは、ケレスの内部構造が脆弱であることを示唆している。含水物や Light Material(比重の軽い?)などが、形成初期の高温段階に岩石構造から分離したようだ」と、NASA/JPL のソーラーシステムダイナミクスグループ(solar system dynamics group)主任研究者の Ryan Park は述べました。

ケレスの重力場に向けてモニタリング信号を Dawn 探査機から送信し、地球上に戻った信号を、NASA の Deep Space Network によって受信されます。このネットワークは、地球上の三箇所に設置された大型の深宇宙通信構成となっています。これらを使用して、毎秒0.004インチ(0.1ミリメートル)の精度で Dawn 探査機の動きを測定し、微小な重力の詳細を計算することができます。

ケレスは、今回の Dawn ミッションによって「静水圧平衡(Hydrostatic Equilibrium)」と呼ばれる特殊な性質を有していることが確認されています。このことは、ケレスの内部構造(形成)が自転による重力支配が弱いことを示しています。研究者は重力場の微細な変化を比較することによりこれを確定ました。また、2006年には想定段階ではあったものの、ケレスの特徴である「静水圧平衡」が Dwarf Planet と分類された理由の一つとなりました。

データからは、深層では異なる組成による層状形成が見られるが、地球、月、巨大な小惑星ベスタ(Dawn の直前のターゲット)などの太陽系内岩石天体ような緻密な層状は見られないということが示されています。

これまでの調査から、ケレスの外層には岩石から分離した軽金属や氷水などが多く見られます。

「地球や月のように、金属コア、半流動的マントル、地殻という明確に定義された構造がケレスでは見られない」と、 Ryan Park は述べました。

また、ケレスの高い標高の地域では、質量の変位が見られ、水(外層の比重の軽い物質を指して)に浮かべたボートのようだ、と研究者は言ってます。このような現象は地球上でも見られますが、ケレスでこれが確認されたのは初めてのことです。

得られた最新のデータからは、初期段階の形成過程がどのようなものであったかを研究者に問います。さらに、以前に得られたデータと最新の重力データを組み合わせることによって、研究者たちはケレスの形成過程の再構築を行うことになるでしょう。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office