カッシーニ探査機 : 最後のエンケラドス近接フライバイ

NASA の探査機カッシーニが、土星の月エンケラドスの最終フライバイによるデータ、画像の送信を開始した。カッシーニは、12月19日(土曜日)の 9:49 PST に、4999 kmの距離でエンケラドスを通過した。
 

氷と大気 - NASA の探査機カッシーニがエンケラドスへの最後の近接フライバイの際に捉えた、土星によって薄暗く照らされた氷の月のゴツゴツした周縁部。土星の大気上層は漠然としているが、層状の構造が見て取れ、周囲の宇宙とグラデーションを成している。エンケラドスの北は、上向きで左に 27 度回転。写真は、12月19日に探査機カッシーニの望遠カメラで近赤外線を撮影したもの。約24000 kmの距離からの眺めで、エンケラドス、太陽、カッシーニが直列した際に撮影し、画角は 147 度、ピクセルあたり 146 m。
Image credit: NASA/JPL-Caltech
 

「エンケラドスの最終フライバイには複雑な思いだ」と JPL でカッシーニのプロジェクトマネージャを務める Earl Maize は語った。
「最後の近接フライバイだと思うと悲しいが、同時に、太陽系で最も魅力的な天体を調査してきたこの十年の集大成だと思うと感慨深い」

カッシーニは、2017年9月のミッション終了まで、遠距離からエンケラドスの活動を監視していく。次のエンケラドスとの接近は、今よりも遠く - 最短でも、今回の接近より 4 倍以上の距離がある。

今回は、カッシーニ計画に於ける 22 回目ものエンケラドスとの接近だった。土星に到着した後間もなく、エンケラドスでの地質活動が発見され、調査の回数と質を最大化するため、飛行計画が大幅に変更されたのだ。

「我々は、この素晴らしい氷の世界との別れに胸を刺される思いだった」と、JPL の科学者である Linda Spilker は語った。 「カッシーニはエンケラドスについて多くの息をのむような発見をしたが、極めて重要な疑問 - この小さな世界に生命は存在するのか? - に答えるためには、やるべきことは山積みだ。」

2005年にエンケラドスの意外な地質活動を明らかにした後、カッシーニは、南極に近い亀裂から湧き出る物質に関する一連の発見をした。2014年、エンケラドスに地底湖があるという強力な証拠が発表され、2015年にそれらの説は見直され、氷の地殻の下に大洋を擁しているとの理解に達した。

カッシーニ・ホイヘンス(Cassini-Huygens)ミッションは、NASA、欧州宇宙機関(ESA)、およびイタリア宇宙局の共同プロジェクトである。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office