NASA Spitzer 宇宙望遠鏡 : 銀河系内に惑星を発見


NASA の宇宙望遠鏡 Spitzer が地上の望遠鏡と協力し、最も遠い惑星のひとつとなるガス状惑星を 13000 光年の場所に発見した。

この発見は、Spitzer が平たい螺旋状の銀河系内にどのように惑星が分布しているかを解く、その鍵になる得ることを示している。
 

天の川方向にプロットした、太陽系から 13,000 光年離れて横たわっている、知られているものでは最も遠い系外惑星の位置を示している。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/Cornelius Dammrich
 

「惑星が多く分布するのは、銀河系の中心の膨らみなのか、周辺の円盤なのか、我々は未だ知りません。よって、これらの観測は非常に重要なのです。」と、NASA のセーガン・フェローでもあるハーバード・スミソニアン天体物理学センターの Jennifer Yee は語った。

チリのラスパンパナス天文台の OGLE (Optical Gravitational Lensing Experiment)の望遠鏡はマイクロレンズ法を用いて惑星を探している。マイクロレンズ効果は、ある天体が他の天体の手前を通過したとき、その重力場がレンズの効果を果たし、遠方の天体を拡大する効果だ。レンズとなる手前の天体が惑星を伴っている場合、この拡大率にピーク (blip)が現れる。

銀河系中心のバルジ (膨らんでいる部分)ではこういった天体の交差が多く観察され、天文学者はこの現象を用いて何万光年も離れた惑星を発見している。我々の太陽は銀河系中心から約 3 分の 2 ほど離れた、いわゆる「田舎」に位置している。マイクロレンズ法によって発見された惑星はこれまでに約 30 であり、一番遠いもので 25000 光年だ。

「マイクロレンズ法によって銀河系中心から太陽系周辺まで惑星が発見されてきた。」と、共著者であるオハイオ州立大学の Andrew Gould は語った。「原理的には、広大な銀河系の惑星の分布を知ることが出来る。」

マイクロレンズ法は他の惑星探査の方法、例えば NASA のケプラー・ミッションと補完し合い、1000 以上の惑星を発見してきた。しかし、大きな問題もある。この方法では天体までの距離がいつでも正確に判るとは限らないのだ。

マイクロレンズ法で発見された 30 ほどの惑星は正確な場所がわからないままだ。宝の地図に X マークが無いのと同じだ。

ここで、Spitzer の出番だ。宇宙望遠鏡 Spitzer は太陽を中心とした軌道にあり、地球からは約 2.07 億 km離れている。Spitzer が地上望遠鏡と同じマイクロレンズ効果を観測しても、一番明るくなる時間は異なる。これは、Spitzer と地上望遠鏡が遠く離れており、視差が生じるからだ。

「Spitzer はマイクロレンズ効果の視差を測定した初の宇宙望遠鏡だ。」と、Jennifer Yee は語った。「これまでは地上望遠鏡同士の視差を利用していたんだが、それでは充分ではなかったんだ。」

宇宙望遠鏡を使ったマイクロレンズ効果の観察はいささか慌ただしい。地上望遠鏡部隊がマイクロレンズ効果の開始をアナウンスするのだが、マイクロレンズ効果は平均で 40 日ほどしか続かない。Spitzer チームはアナウンスを受けてから 3 日以内に行動しなければならない。

今回発見された惑星の場合、マイクロレンズ効果は非常に長く 150 日も続いた。惑星が馬脚を現している間、Spitzer も OGLE も観察を続けることが出来、その視差は 20 日間に及んだ。

この 20 日間という視差を使って、観測している天体との距離を計算する。距離が判れば重量も判る。その重量は木星の約半分だった。

Spitzer は OGLE や他の地上望遠鏡と協力して、22 のマイクロレンズ効果を観測してきた。新しい惑星が毎回発見されるわけではないが、これらのデータは銀河系中心の天体の分布を知るヒントとなる。

「これまでは太陽系に近い場所を探査してきた。」と、カリフォルニア工科大学の客員セーガン・フェローである Sebastiano Calchi Novati は語った。「たくさんの望遠鏡を束ねて使用することで、銀河系での惑星の分布を知ることが出来るはずだ」
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office