キュリオシティローバー「火星の鉱脈を観察」

NASA の火星探査機ローバーが二種の鉱物が折り重なる地層を発見した。火星の山から発見されたもので、過去に何度か液状の物質の移動があったことを示唆している。これら液状の物質の移動は、ローバーが調査した湖底の堆積物が湿潤環境で形成された後に起こった。
 

キュリオシティローバーのマストカメラで撮影した画像には、マウントシャープの裾野に広がる「ガーデンシティ」と呼ばれる地域に、二種の鉱脈が絡み合う様相が示されていた。
Image credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS
 

キュリオシティは過去七ヶ月に渡り、山裾から採取した三種のサンプルを分析してきた。それら三種のサンプルは、それぞれ組成の異なる鉱物を含み、最近のサンプルは方珪石というケイ素化合物を含んでいた。上のサンプルよりもう少し山手で撮られた写真には、これら異なる組成の鉱物が顕著な地層として観察され、太古に起こったマウントシャープの成り立ちを物語っている。

二種の鉱物が折り重なる鉱脈が発見された場所はガーデンシティ(Garden City)と呼ばれる。この鉱脈は湖底の岩床が浸食され、連なる崖が顕になったものだ。ひとつの崖は 6 cm 程の高さで、幅はその半分ほど、それぞれ暗く見える部分と明るく見える部分を両方含んでいる。

テネシー大学のキュリオシティ科学チームのメンバー、Linda Kah は「アイスクリームサンドのようだ」と表現した。「この層状構造は、土台となる岩石が形成された後、その上に液体によって二番目の物質が運ばれてきたということを示している。」

岩床の亀裂に液体によって次の鉱物が堆積された、こういう形状の鉱脈では、岩床の亀裂部分の化学的組成が堆積物によって影響を受けることがある。以前の分析では、鉱脈の明るい部分は硫酸カルシウムから成ることが判っている。暗く見える部分は何であろうか。「少なくとも二種類の液体がその痕跡を残している。それらの液体の化学的組成とどのような過程で岩床の組成に影響を与えたかを知りたい。」と、Linda Kah は語った。

キュリオシティの2012年の着陸サイト付近およびマウントシャープ(Mount Shar)登頂後に調査した湖底は、泥の堆積によって作られ、亀裂が出来る前に乾いて硬くなっていたはずだ。明るく見える部分、暗く見える部分、いずれも亀裂を流れた液体によるものだが、硫酸カルシウムを多く含む明るい部分より、暗く見える部分がより古い段階での液体の移動を示唆している。

ガーデンシティは、ゲール・クレーターの中央にあるマウントシャープの地層が露出したパーランプヒルズ(Pahrump Hills)の端部よりおよそ 12 m 高いところにある。キュリオシティ・ミッションは、この 12 m のうち、最初の 10 m の調査にほぼ半年を費やし、地形、岩石の組成、サンプル採取地の選択の為に三度の登山を行った。

「パーランプヒルズを地質学者が調査するように調査したんだ。先ず地層の露出面をすべて調べ、サンプル採取に最適な場所を割り出した。その甲斐はあったよ。」と、エイムズ研究センターの主席調査官である David Blake は語った。

分析はまだ予備的なものだが、パーランプヒルズの三つのサンプルは明らかに違う組成であると言える。コンフィデンスヒルズ(Confidence Hills)は最も粘土質で赤鉄鉱を含んでおり、湿潤環境で一般的に見られる組成だ。” Mojave ” は硫黄が酸性雰囲気で酸化されて出来た鉄明礬石を含む。テレグラフピーク(Telegraph Peak)の組成は結論に至ってない。

「テレグラフピークは粘土質をほとんど全く含まない、赤鉄鉱は微量、鉄明礬石の含有量は他より少ない。言及すべきは方珪石の豊富な存在であり、10 % 以上の結晶性の物質を含んでいる。」と Blake は語った。方珪石はケイ素からなる鉱石である。またサンプルはケイ素の別の形態である水晶を少量含んでいる。なにかがケイ素以外のものを取り除き結果としてケイ素を多く含むようになったのか、液体によってケイ素がもたらされたのか、どこか別の場所で出来た方珪石が堆積したのか、いずれかであろう。

太古の火星が微生物の存在を許す環境だったとすると、そのような湿潤な環境から乾燥した環境に変化してから三十億年以上経っていることになる。

テレグラフピークの調査後は、” Artist's Drive ” という谷での調査を予定している。この間、ドリルを打ち付ける動作を開発して、岩石の粉末をサンプルとして採取しようとしている。
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO & K. Rikitake TPSJ Editorial Office