はやぶさ2の小惑星リュウグウ到着
火の鳥「はやぶさ」未来編 その 15

渡邊誠一郎(名古屋大学大学院環境学研究科、宇宙航空研究開発機構はやぶさ2プロジェクト)はやぶさ2プロジェクトチーム

※ この遊星人記事は、日本惑星科学会遊星人編集専門委員会より許可を得て掲載しております。
 

(本文)
未知の世界との邂逅.地球からでは大望遠鏡でも写るかどうかのほのかな点に過ぎなかった存在が.今や運用室の扉を開けると,ディスプレイに確かなオブジェとして浮かび上がっている....

三年半の往路の,ようやく到着四ヶ月前の2018年02月26日になって,はやぶさ2の目(ONC-T)が初めて捉えた時も,リュウグウは,まだ,淡い 9 等星の光点に過ぎなかった.その後は,はやぶさ2は目的地を観ることもできず,06月03日までイオンエンジンの総力運転.

その運転終了後,プロジェクトのホームページを,メンバーとプロのクリエーターが想像したリュウグウの姿が飾った06月05日に,再びその本物の姿を ONC-T が捉えた.リュウグウは地球から見た最大光度の金星を超す明るさに輝いてそこにあった.距離は 3000 km を切り,目前にあるのに,この時になっても,まだ画素 3 ピクセル程の大きさで,形もわからない.ここからは,光学電波複合航法で,しっかりと相手を見つめながら近づいていく.毎日,少しずつ着実に大きくなっていくリュウグウ.モザイクの上にその形がおぼろげに浮き上がる.球じゃない?菱形かな! UFO 型?自転軸はどっち向き?直立では?これクレーターじゃない?まさにデススターだ!大岩は亀かね!赤道リッジに下りられるの?ボルダー多すぎだよ!白ごまがあるぞ!南北半球で温度が違うみたい!? LIDAR が測れた!ディスプレイの前で議論は尽きない.

図 1 は到着直前,わくわく感と不安感が交錯した三週間がクライマックスに達した時に撮影されたリュウグウ.画像の上は黄道面の北側.でも小惑星では右回り自転をする軸の向きを北極(正極)と定義するので,こちらは南極(負極).そこに鎮座する白い亀岩は,この自転位相では反対側にあって,やや見にくい.赤道の白く細い帯上にデススターのクレーターが黒い口を開ける.その右には三つ子のクレーター.そしてボルダーまたボルダー,10 m を超える岩塊があたりに散らばる.

06月27日午前09時35分(日本時間),最後の Tra-jectory Correction Maneuver(TCM)で化学推進スラスタを吹くと,はやぶさ2はリュウグウの玄関にぴたりと止まった.到着した玄関こそ Home Position,リュウグウ上空 20 km.太陽電池パドルも,ハイゲインアンテナも,カメラすら動かせない体が硬いはやぶさ2は,地球と小惑星重心を結ぶ線上にある,この玄関先を浮遊しながら,リュウグウの観測を続ける.何回か降下観測も交えながら,サンプル採取のためのタッチダウン候補地点探しをしていく.この記事を皆さんが読んでいる頃には,候補点が決まって,その運用準備に忙しいことだろう.そしてはやぶさ2を創り,この素晴らしい未知への世界にわれわれを運んでくれ,困難な近傍ミッションを支えてくれるプロジェクトの工学メンバーに深く感謝しつつ,竜宮城でのサイエンスの饗宴を今しばらく楽しみたい.
 

Image Caption :
図 1. ONC-T によって撮影されたリュウグウ .2018年6月26日 12:50(日本時間)頃の撮影.画像クレジット:JAXA,東京大,高知大,立教大,名古屋大,千葉工大,明治大,会津大,産総研.
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Web edited : A. IMOTO TPSJ Editorial Office