火星研究における「火星隕石」の役割:これまでの貢献と将来の展望
特集「火星圏のサイエンス」 : May 02, 2021. Published

小池 みずほ : 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所太陽系科学研究系, 森脇 涼太 : 千葉工業大学惑星探査研究センター, 臼井 寛裕 : 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所太陽系科学研究系

この遊星人記事は、日本惑星科学会遊星人編集専門委員会より許可を得て掲載しております。
 



要旨

近年の火星探査で報告された多数の「水の証拠」は,かつての火星の大規模な環境変動と生命の存在可能性を示唆し,火星における物質科学研究の重要性を強調している.火星は,地球以外の惑星では唯一,その岩石試料を「火星隕石」として手にすることのできる惑星である.火星隕石から得られた詳細な岩石記載・化学分析情報は,火星探査によるその場分析データと相補的な関係にあり,火星史の解明に大きく貢献してきた.本稿では,特に「火星隕石の同位体記録」を主軸に,表層の大気・水環境進化,および,火星内部の化学進化について,現在までにわかってきた事と将来の可能性を提示する.
 

1. はじめに

地球や火星など固体惑星の表層環境は,気候・火山活動・水や生命の有無など,惑星ごとに著しく異なり多様性に富む.なかでも火星は,現在は寒冷で乾燥したレゴリスに覆われているが,かつては湿潤環境を保持したと思われる惑星で,その表層環境の進化と生命の存在可能性は,数10年間にわたり世界的な興味・関心を引いている.火星は,地球にとって月に次いで最も身近な天体で,探査と実試料(火星隕石)分析の双方が進んだ唯一の惑星でもある.近年の精力的な火星探査により,太古の海洋や表層/地下水の記録が多数報告され,火星の水環境の変動史が議論されてきた([1 - 5] および,それらの引用文献).また,火星の地下には大規模な固体水(氷や含水鉱物)の存在が指摘されており,将来の火星地下圏探査の重要性が認識されつつある.

一方,固体惑星の表層水や大気の進化史の定量評価においては,過去の岩石などの実試料の詳細な鉱物記載・化学分析研究が重要な鍵となる.実試料から得られる知見は大きく,固体惑星の実試料を手にすることは,その惑星の進化史を包括的に論じるために欠かせない.火星は,「火星隕石」として実試料を得られる点で有利である [6].隕石は天然のサンプルリターンとも言え,(1)比較的少ないコストで試料へアクセスできる,(2)実験室での詳細な化学分析を可能にする,(3)母天体の(おそらく)広範囲の場所・時代をカバーする,といった多くの利点がある.ただし,隕石の研究には,母天体での産状が分からないことや,地球物質による汚染を考慮しなければならない,等の問題が常に付きまとう.これらの問題を如何に克服・軽減し,正確に母天体情報を復元できるかが,火星隕石を用いた研究において重要である.これまでの火星隕石研究は,火星の進化史に関する我々の理解を大きく助けてきた.本稿では,火星隕石の簡単な分類と特徴的な隕石を紹介した後(第 2 章),「火星隕石の,特に同位体記録からの知見」を主軸に,大気進化(第 3 章),表層水環境(第 4 章),マントル進化(第 5 章),有機物(第 6 章)について,それぞれ現在までに得られた知見と将来の展開を述べたい.
 

2. 火星隕石の年代記録:太古の火星隕石 ALH 84001 と NWA 7034

火星隕石の多くは,約 1.7 ~ 13 億年前という「比較的最近」の火成活動に由来する火山岩・深成岩であり,岩石学的にシャーゴッタイト(Shergottite),ナクライト(Nakhlite),シャシナイト(Chassignite)に分類される.酸素同位体比から,これらの隕石群は同一の母天体起源であることが確かめられており,各グループの頭文字を取って “ SNC 隕石 ” とも呼ばれる.SNC 隕石が火星起源である可能性は,1970年代から,若い形成年代や水質変成・衝撃変成など間接的な証拠に基づいて指摘されてきた.1980年代,シャーゴッタイト EETA 79001 の衝撃溶融ガラスに捕獲された母天体大気が調べられ,希ガスなどの同位体組成が火星大気と一致したことから,これらの隕石群が「火星隕石」として認識されるようになった.歴史的な経緯の詳細は,過去の文献を参照いただきたい [6 - 8].

火星隕石の大部分は 13 億年以降の火成岩だが,幾つかの「古い」火星隕石も知られている(図 1, 2).1984年に南極で発見された Allan Hills(ALH)84001 は,45 ~ 41 億年前に形成した斜方輝石集積岩で,酸素同位体比や鉱物組成などから火星隕石に分類された [9].ALH 84001 の形成年代は,45 億年とする説 [10] と,41 億年とする説 [11] があり,決着はついていない.ただし,様々な放射年代系が 41 - 39 億年で一致することから(e.g. U-Pb, Lu-Hf, K-Ar ; [11 - 15]),隕石が持つ母天体の同位体記録は約 41 億年前のものであると判断して良いだろう.ALH 84001 は,2013年に後述の NWA 7034 が報告されるまで唯一の「古い」火星隕石であった.さらに,有機物や二次的な炭酸塩などの生命の痕跡を思わせる組織が発見されたこと [16] から,世界的に有名となった.ただし,ALH 84001 に見られた組織の生物化石説については現在否定的な見方が強い(詳細は, [17]).この隕石中の直径 100 ミクロンほどの球状炭酸塩鉱物(図 1a)は,火星上での 40 - 39 億年前の水質変成作用により晶出したと考えられる [13, 18].ALH 84001 は,41 億年前の火星の内部・表層環境を記録する重要な隕石として,現在でも注目されている.
 

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図 1. 火星隕石の薄片画像.特筆の無いものは,全て未発表・オリジナルデータ.(a)ALH 84001 の光学顕微鏡像.(画像提供: 梶谷伊織さん)図中,opx : 斜方輝石,crb : 炭酸塩鉱物.(b)NWA 7034 の電子顕微鏡像(BSE 像).(c)LAR 06319 (shergottite)の BSE 像.図中,msk : マスケリナイト(斜長石組成ガラス),cpx : 単斜輝石,apt : アパタイト.
 

2011年にモロッコのサハラ砂漠で発見された Northwest Africa(NWA)7034(及び,以降見つかったペア隕石.本稿ではペア隕石の研究報告も,代表的な “ NWA 7034 ” で統一する)は,様々な火成岩組織・水質変成組織を示すレゴリス角礫岩である(図 1b)[19, 20].俗に “ Black Beauty ” とも呼ばれる.NWA 7034 は,あらゆる面で特殊な火星隕石と言える.まず,この隕石の鉱物・元素組成は,主要な SNC 隕石と異なり,探査機スピリットが調べたグセフ・クレーターの岩石と良く一致する [19, 20].また,他の火星隕石がすべて火成岩であるのに対し,NWA 7034 は唯一のレゴリス角礫岩である.各岩片中のジルコンやバデレアイトなどの年代記録から,NWA 7034 の元となる岩石は,44 億年前の火成活動で形成したと知られている [20, 21].これは確認されている火星隕石の中で最古であり,火星表層の地質記録にもほとんど残されていない時代(ノアキアン以前)に該当する.ただし,角礫岩として集積した年代については,44 億年前から 13 億年前とされ,まだよく分かっていない [19 - 24].NWA 7034 は,全岩の含水量が 6000 ppm と,SNC 隕石の 10 倍以上も水に富むという点でも特徴的である [19].この水が火星由来のものか,サハラ砂漠での風化によるものかは疑問が残るが(例えば [25].本稿の第 4 章にて言及),今後の詳細な分析で,火星の水環境についての重要な手がかりを得られるかもしれない.NWA 7034 は現状唯一の “ 44 億年前の火星を代表する ” 岩石であり,今後の分析技術の発展に伴い,火星の初期環境に関する貴重な情報を得られると期待される.
 

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図 2. 火星の地質年代と火星隕石の関係.[2, 10, 20, 27, 77] を元に作成.
 

その他,近年では約 22 - 24 億年前の火星隕石(NWA 7635, NWA 8159 [26, 27])も確認されている.上記を含め,火星隕石は約 44 億年前から最近数億年までの幅広い時代をカバーしており,火星の長期進化を論じる上で重要な役割を果たしている(図 2).さらに,これらの隕石は,火星のマントル・地殻・大気など異なる場所の地球化学情報を記録している.適切な試料・手法の選択と分析技術の発展により,火星隕石から,時間的・空間的な広がりを持った包括的な火星史を描けるとともに,将来の火星サンプルリターンへ向けた知見が得られると期待する.
 

3. 火星の大気進化:窒素および 希ガス同位体組成からの制約

火星の大気組成は,1970年代のバイキング着陸機や,2012年に火星着陸し現在も探査を続けているキュリオシティにより詳細に調べられてきた.現在の火星大気は地球の 100 分の 1 以下と希薄で,二酸化炭素(CO2),窒素( N2),アルゴン(Ar)などから構成される.火星大気のH, C, N, Ar などの安定同位体比は,地球に比べて著しく「重く」(=重い安定同位体に相対的に富む),大規模な大気散逸を示唆する [28 - 31].惑星大気中の希ガスや窒素(N2)は,他の反応性の高い揮発性元素に比べて安定であり,その同位体組成は大気の物理進化トレーサーとして有用である.地球においては,過去 40 億年間の Ar 同位体指標をもとに,初期の大規模脱ガスを伴う大気の脱ガス進化モデルが構築された [32].火星大気の希ガスや N2 は,火星内部からの脱ガス,宇宙空間への散逸,隕石衝突に伴う供給と剥ぎ取り効果,のバランスで変動する [33].これらの同位体組成の時代ごとの変遷がわかれば,火星における大気進化モデルを制約できる.

前章で述べたとおり,「火星隕石」を火星起源とする証拠の一つは,若い火星隕石であるシャーゴッタイト中の捕獲大気が火星大気の希ガス同位体組成を示すことであった.より古い火星隕石が太古の火星大気組成を記録していれば,大気進化の手がかりとなる.ALH 84001 と NWA 7034 は,それぞれ 41 億年前,44 億年前の火星の岩石である.火星史における 41 億年前は,火星の火山活動,地下/表層水の循環,隕石衝突が活発であったと思われる時代である(図 2).また 44 億年前については,火星の地質記録がほとんど残されていない.火星史において,ALH 84001, NWA 7034 が記録しうる初期数億年の環境変動は,表層水の大規模散逸(第 4 章)とも関わり,最重要かつ未知の問題と言える.ただし,NWA 7034 については,約 20 - 14 億年前の熱変成により全岩の揮発性元素情報がリセットされているため,現状では 44 億年前の火星大気は不明である [22].太古の記録が NWA 7034 の特定の鉱物やインクルージョンに局所的に残されていれば,今後の分析技術の発展に伴い,44 億年前の火星大気組成を推定できるかもしれない.一方,ALH 84001 は 41 億年前に火星での水質変成を経験しており,この時代の火星大気を記録すると期待される.

一般に,火星隕石が持つ希ガスは,① 火星大気,② 火星マントル成分,③ 地球大気の混合系である.隕石から ① 火星大気の情報を推定する為には,②,③ の影響を注意深く評価しなければならない.さらに,①,③ の大気成分は,捕獲プロセスに応じて元素分別を伴う可能性が指摘されており(風化に伴う大気吸着など),注意が必要である [34].ALH 84001 が捕獲する火星大気の希ガス元素組成(クリプトンとキセノンの安定同位体の存在比 ; 84Kr/132Xe 比など)は,シャーゴッタイトの捕獲大気組成と異なることが知られる(図 3a).この理由は,41 億年前の火星大気が現在と異なるクリプトン/キセノン比を持っていたか,水質変成などに伴う元素分別を反映したものと考えられるが,未だに解決していない.一方,ALH 84001 のキセノン同位体比(129Xe/132Xe 比)は,火星大気に特徴的な高い値を示す(図 3a ; [35]).129Xe は,太陽系初期に存在した短寿命放射性ヨウ素 129I(半減期約 1600 万年)の壊変により生成される.高い 129Xe/132Xe 比は,129I がまだ存在した時代に初期大気のキセノンが失われたことを意味し,火星大気が 41 億年前には既に希薄であった可能性を示唆する.ただし,キセノンは他の希ガスに比べて,太陽の紫外線エネルギーによりイオン化されやすく,火星の初期大気がキセノンの選択的な散逸・同位体分別を経験した可能性があることに注意が必要である([33] および,その参考文献).
 

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図 3. 火星隕石(シャーゴッタイト,ALH 84001)の大気成分.
(a)129Xe/132Xe - 84Kr/132Xe プロット.火星大気の 129Xe/132Xe 比はキュリオシティの分析値,84Kr/132Xe 比は火星隕石の分析値を採用. 隕石データのうち,三角形のポイントは真空破砕分析の結果.それ以外は加熱分析の結果.データは,[35, 39, 40, 78] および,それらの引用文献.(b)δ 15N - 40Ar/14N プロット.シャーゴッタイトのデータは,バイキングの報告値と地球大気の混合直線上に乗るが,キュリオシティの報告値は同一直線上に乗らない.ALH 84001 はδ 15N ~ 400 ‰ からδ 15N ~ 0 ‰ まで報告がある.データは,[31, 37, 38] および,それらの引用文献.
 

火星大気の窒素安定同位体比(15N/14N の存在比)は,火星探査機バイキング,キュリオシティの調査で確認されている.現在の火星大気の 15N/14N 比は地球大気の 1.6 倍ほど重く(δ 15N ~ 570 ‰),地球大気に比べアルゴン/窒素比(40Ar/14N 比)が高い(図 3b ; [28, 31]).シャーゴッタイトの衝撃溶融ガラスなどから得られる窒素同位体比は,バイキングから報告された火星大気組成と地球大気組成の混合直線上にプロットされる(図 3b).シャーゴッタイトの窒素は,希ガスと同様に,現在の火星大気を反映したものと考えられる.しかし,近年キュリオシティが調べた火星大気組成は不整合な結果を示しており,原因はまだ分かっていない.ALH 84001 が記録する火星大気の窒素同位体比として,地球大気程度の軽い値(δ 15N ~ + 7 ‰ ; [36, 37])と,現在の火星大気に近い重い値(δ 15N ~ + 400 ‰ ; [38])が報告されている.41 億年前の火星大気の代表値として軽い値(δ 15N ~ + 7 ‰)を採用すると,当時の火星が現在より厚い大気(≥ 0.5 bar)を保持していたと推定される [33].ただし,軽い窒素同位体比が 41 億年前の火星大気なのか,地球での汚染の影響かは,慎重な検討が必要である [17].

従来の希ガスや窒素の同位体分析では,隕石を真空中で 1000 °C 以上まで一気に(あるいは段階的に)加熱し,抽出したガスを精製する「(段階)加熱法」が主流であった.このような加熱破壊分析は,隕石中の微量な希ガスを高精度分析できる点で有利だが,一つの試料中に起源が異なる複数のガス成分が混在した場合,それらを区別することが難しい.特に,火星隕石の場合,衝突による大気捕獲の再現実験は報告されているものの,大気成分がいつ・どこに・どういう形で捕獲されたかよく分かっていない.例えば,同じシャーゴッタイトを真空中で機械的に破砕し,ガスを回収した場合(真空破砕法),得られた希ガス同位体組成は加熱法の結果と異なり,火星大気と一致しないことが報告されている(図 3a [39, 40]).分析法による結果の不一致は,複数の起源が異なる希ガス成分が存在することを示唆する.過去大気の復元には,適切な試料および分析手法の選択が不可欠である.窒素についても,手法の選択・確立は重要な課題である.近年,火星表層に硝酸塩の存在が確認され [41],火星における大気 N2 と窒素化合物との窒素循環・共進化が注目されつつある.さらに,火星隕石の衝撃溶融ガラスにも硝酸塩が含まれ,地球と同程度の低い δ 15N を持つことが,破壊分析にて報告されている [42, 43].硝酸塩と大気 N2 のように,異なる化学種の挙動や同位体組成の違いを区別して取り扱うことが,火星の表層物質循環と大気進化史を解明する上で重要になる.今後,従来の加熱破壊分析に加えて,局所分析法が確立されれば,火星隕石中の希ガスや窒素が,いつ・どのように捕獲されたもので,それぞれの同位体比がどの程度かを特定できる.火星隕石が火星史の構築に貢献できる余地は,未だ非常に大きいと言える.
 

4. 火星の水環境進化:水素同位体比からの制約

火星に見られる多くの「水の痕跡」は,火星生命の存在可能性とも密接に関連し,世界的な注目を集めている.これまでの火星探査から,40 - 30 億年前に形成された流水地形,表層/地下の水から晶出した含水鉱物(粘土鉱物や硫酸塩など),北半球高緯度域の古海洋の証拠など,多数の地質学的・岩石学的証拠が報告され,太古の火星における活発な表層/地下水活動の存在が指摘されてきた.さらに,現在でも高緯度域の地下には氷が存在し,氷―水蒸気の表層循環が存在すること,季節変動に伴い地表付近で断続的な流水現象が生じることなどが確認されている([1 - 5] および,それらの引用文献).火星の水環境の大変遷,すなわち「太古の活発な表層水・地下水循環システム」から「最近の(おそらく穏やかな)地下氷 - 水蒸気循環システム」へ移行過程の解明は,火星史の最重要課題の一つと言える.

一般に,惑星の表層水は,火成活動に伴うマントルからの脱ガス,宇宙空間への水素散逸,プレートテクトニクス等に伴うマントルへのリサイクル,隕石衝突などの外部からの寄与,のバランスで変動する.火星は,観測できる範囲ではプレートテクトニクスは存在せず,マントルへのリサイクルがどの程度効率的に生じているかは不明である.また,脱ガスは,初期には活発だったと思われるが,物質証拠の不足から定量評価はできていない(第 5 章).一方,現在の火星表層水(大気・表層の含水鉱物)の水素同位体比(D/H 比)は,水素散逸に伴う質量分別効果により,地球海水の 5 - 6 倍以上も重くなっていることが知られる(図 4 ; δD ~ 5000 - 6000 ‰ [29, 44, 45]).火星の長期的な D/H 比変動がわかれば,水の散逸史を定量評価でき,過去 45 億年間の水環境進化を明らかにできると期待される.
 

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図 4. 火星表層の水素同位体比の時間進化.D/H 比データの引用元は,図中に記載.
 

火星隕石には,マグマ由来の含水鉱物(リン酸塩鉱物や角閃石など ; 図 1c)が微量に含まれる.これらはマグマの冷却の最終段階で晶出し,表層物質との同位体交換を経験するため,火星表層の D/H 比を反映する.シャーゴッタイトの含水相が火星大気的な高い D/H 比を持つことが,主に二次イオン質量分析計(SIMS)による局所同位体分析などから確かめられている(最大でδD ~ 4000 - 6000 ‰ ; [46 - 50]).マグマ由来の含水相の他,いくつかの火星隕石は火星での水質変成鉱物(炭酸塩鉱物やオリビン変質物など)を含み,変成時の周囲の水を記録する.ALH 84001 には,41 億年前のマグマ由来のリン酸塩鉱物と水質変成由来の炭酸塩鉱物が存在し,双方が高い D/H 比を示す(δD ~1000 - 3000 ‰ ; [47, 51, 52]).この値は現在の火星表層水(~ 6000 ‰)よりは軽いものの,地球海水に比べ 2 - 4 倍と著しく重く,41 億年以前に火星の D/H 比が大きく変動したことを示す.一方,かんらん石や輝石などの火成鉱物中に捕獲されたメルト・インクルージョンは,元のマグマ情報を保持しうる.シャーゴッタイト Y-980459 のインクルージョンガラスの局所分析から,火星の初生的な水の D/H 比が,地球や炭素質コンドライトの水と同程度(δD < ~ 300 ‰)であることが確かめられた [48].火星隕石の D/H 比の記録は,初生水・41 億年前・現在の表層水で大きく進化している(図 4).D/H 比の進化は,火星のかつての表層水の大部分が 41 億年以前に散逸し失われた可能性を示唆する [53].また,初期の大規模散逸後も残された水は,火星の地下に氷や含水鉱物などとして貯蔵されている可能性が高いことが指摘されている.探査機によるゲール・クレーターの堆積岩の分析と火星隕石の分析の両方で,中間的な D/H 比(δD ~ 1000 - 2000 ‰)を持つ水の存在が報告されている [45, 54].この値は,現在の火星の表層水ともマントルとも異なり,独立した第 3 の水のリザバーとして,大規模な地下の固体水(氷や含水鉱物など)が考えられる.一連の D/H 比に関する研究から,火星の水は,初期 4 - 5 億年間で大規模な散逸を経験した後,残された水の大部分が地下に貯蔵され,その後は ① 表層水(δD ~ 6000 ‰),② マントルの水(δD ~ 300 ‰),③ 地下の固体水(δD ~ 2000 ‰),の少なくとも三種類の独立した系として維持・進化してきたと思われる.将来の火星地下圏の探査により,火星の水環境の理解は大きく進展すると期待される.

火星隕石分析を始めとする,近年の精力的な研究により,火星の水環境に関する我々の理解は飛躍的に進歩した.しかし,まだ多くの重要な未解決問題が残されている.特に,火星史の初期 4 - 5 億年間は,水の大規模散逸などの環境変動が集中した時代だと思われるが,この時代の地質記録はほとんど残されておらず,謎が多い.火星隕石からこの時代の水環境に制約を与えられれば,火星の環境大変動の解明につながると期待される.第 2 章で述べたとおり,NWA 7034 は 44 億年前の火成岩片を持つ火星のレゴリス角礫岩である(図 1b).この隕石は豊富な水を含み,その D/H 比は他の火星隕石と比べ著しく軽いことが知られる(全岩で約 6000 ppm,δD ~ 300 ‰ [19]).しかし,残念ながらこの水の記録は「44 億年前の火星の水」を反映しているとは考えにくい.理由は主に二つある.第一に,NWA 7034 は 20 - 14 億年前に著しい再加熱を経験している.いくつかの放射年代系や希ガス同位体を含め,全岩の揮発性元素情報は,この加熱イベントで完全に書き換えられた.NWA 7034 の火成岩片にはリン酸塩鉱物(塩素と水酸基に富むアパタイト[Ca5(PO43(F, Cl, OH)])が豊富に含まれるが,これらの同位体記録も 14 億年前にリセットされたことが,年代分析で確かめられている [23].NWA 7034 のリン酸塩鉱物の D/H 比(δD < 3000 ‰)は現在の火星表層よりやや軽く,14 億年前の火星のレゴリスが大気と完全には同位体平衡にならなかった可能性を示す [55] が 44 億年前の D/H 比は残していない.第二に,NWA 7034 は砂漠で発見された隕石で,地球上での変成作用を受けた可能性がある.NWA 7034 の豊富な水は,主に隕石マトリックスに豊富に存在する酸化鉄や粘土鉱物などの変成鉱物に由来する [25, 56].リン酸塩鉱物などの火成鉱物中の水は量が限られ,全岩に対する寄与は小さい.酸化鉄や粘土鉱物は,火星での水質変成で晶出することが確認されているが,地球上での変成でも形成しうるため,これらの起源の特定が難しい.すなわち,NWA 7034 の豊富な水と軽い D/H 比は,20 - 14 億年前の火星の表層水か,地球の水による汚染のいずれかであろうと考えられる.現時点では,NWA 7034 から44億年前の D/H 比は得られていない.しかし,この隕石は,様々な時代のマグマ活動・熱/水質変成作用・衝撃加熱などを記録した岩片を持つポリミクト角礫岩であり,局所的には太古の記録を残している可能性が高い.将来の分析技術の発展・応用,および,適切な対象鉱物の選択により,「44 億年前の火星の水」を復元できると期待する.
 

5. 火星マントルの化学進化

火星隕石は,火星内部の化学的情報を得るための現状唯一の手がかりでもある.火星隕石が記録するソースマントルの年代情報(e.g. 消滅核種年代 182Hf - 182W, 146Sm - 142Nd など)から,火星は太陽系形成から 1000 万年以内に集積し,コア形成までを完了している [57, 58].また,マグマオーシャンの固化に伴う火星マントル - 地殻分化は,太陽系形成後 5000 万年以内に完了していたと推定されている [58 - 60].火星はこの惑星初期分化以降大きな組成変動を経験しておらず,太陽系初期に形成された原始惑星の化学的特徴を現在でも保持していると考えられている.そのため火星は,地球型惑星の成り立ちを理解するうえでも非常に重要な研究対象である.

火星マントルの地球化学的研究は,主にシャーゴッタイトの化学分析に基づいて行われてきた.シャーゴッタイトは,初生ストロンチウム(Sr)ネオジム(Nd)同位体組成などに基づいて,さらに depleted,intermediate,enriched シャーゴッタイトに分類される(図 5a).これらの特徴は,火星マントル中に,不適合元素に枯渇した depleted リザバー,不適合元素に富む enriched リザバー,その中間の組成を持つ intermediate リザバーの三つのマントルリザバーが存在することを示す [61].これらのリザバーは,マグマオーシャンからの結晶分化によって形成されたと考えられており,depleted リザバーがマグマオーシャン初期に固化した集積結晶を起源とする一方で,enriched リザバーは最後に固化した分化残液の組成を反映している [62, 63].マグマオーシャン固化時(約 45 億年前)に形成された火星マントルの化学的不均質が,シャーゴッタイトの火成活動時(約 1.7 億から 5.7 億年前)まで保存されていたことは,火星内部の物質循環が限定的であったことを示す.中間の組成を示す intermediate リザバーは,二つの端成分リザバー(depleted,enrich-ed)由来の成分の混合によって形成されたと考えられているが,この混合については,① マグマオーシャン固化直後の激しいマントル対流由来 [58, 64],または,② シャーゴッタイトの火成活動直前の比較的小規模なマグマ混合由来 [63] の二つの説が提案されており,現在でも議論が続いている.
 

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図 5. 火星マントルの化学リザバー.(a)シャーゴッタイトの初生 Nd - Sr 同位体 ; (b)初生鉛同位体の時間進化.データは,[68, 79] および,それらの引用文献.
 

シャーゴッタイトの初生同位体組成から推定されるソースマントルの元素比は,そのソースマントル形成時の元素分別を記録しているため,惑星分化プロセスを理解する重要な手がかりとなる.例えば,各火星マントルリザバーの 238U/204Pb 比(ウラン長寿命核種 238U と非放射壊変起源の鉛 204Pb の比 ; μ 値)は,enriched マントルが 3 - 5 程度であるのに対し,depleted では 1 - 2 程度と非常に低く,太陽系の初生 μ 値よりも低い値まで報告されている [23, 64 - 68].これらの低い μ 値は,分配係数に基づく計算によると,ケイ酸塩鉱物のみでは再現できず,硫化鉱物を必要とする(硫化鉱物は鉛を取り込みやすく,非常に低い μ 値を持つ)[65].これは,depleted マントルを形成した集積結晶が,ケイ酸塩鉱物に加えて多くの硫化鉱物を含んでいたことを示し,火星マグマオーシャンの組成・酸化還元状態やその結晶化プロセスに制約を与える.また,火星マントルリザバーの μ 値は,火星地殻の持つ高い μ 値(> 13.4 [23])と大きく異なり,火星におけるマントル - 地殻間の相互作用が限られていたことを強く示唆する(図 5b).

惑星の内部進化は,表層環境とも密接に関連する.火星の表層を特徴づける水や大気の変動は,
① 火山活動等に伴うマントルからの脱ガス,
② 宇宙空間への揮発性元素の散逸,
③ プレートテクトニクス等に伴う表層物質のリサイクル,
④ 隕石衝突など外部からの影響,
のバランスで決定する.火星における ③ リサイクルが,いつ・どの程度の規模で生じていたかはよく分かっていない.上述のとおり,シャーゴッタイトの化学記録から,火星マントルの物質循環は 45 億年間にわたり極めて限定的であったと推定される.これは,火星にプレートテクトニクスの記録が見られないこととも整合的である.ただし,初期地球で指摘されるような地殻の密度差に伴う鉛直方向の物質循環は,プレートテクトニクスの有無に関わらず存在した可能性が考えられる [69, 70].火星の表層水や大気が内部へどの程度リサイクルされたかは,議論の余地が残る.一方,① マントルから表層への物質供給(脱ガス)は,特に火星の初期進化において重要な役割を果たした可能性が高い.40 - 30 億年前の火星は,活発な火山活動に伴うマグマの放出が卓越したことが,地質学的証拠から指摘されている [71].40 億年以前の火山活動に関しては,地質記録がほとんど残っていないため十分にわからないが,太古の火山噴火に伴う脱ガスは,火星の表層環境に大きく影響したと思われる.火星隕石の記録から,現在の火星マントルは地球に比べ水に枯渇していることが知られている(H2O ≤ 15 - 70 ppm ; [48, 72]).これは,必ずしも火星マントルが初期から「ドライ」であったことを意味しない.これまでの火星探査・火星隕石から見つかった多数の水の痕跡から,初期火星には全球平均で数 100 m - 1,000 m の大規模な表層水(古海洋)が存在したと指摘されている([53] および,その引用文献).初期の火星では,マントルから表層への水の供給が重要な役割を果たした可能性が高い.火星の内部進化,特に水などの揮発性元素の脱ガス史の解明は,火星の水環境を理解する上での重要な未解決課題のひとつである.将来,火星衛星・火星のサンプルリターンにより,過去の火星の内部物質を直接(あるいは間接的に)調べられれば,マントル脱ガス史の理解は大きく進歩するだろう.現時点では,火星隕石が残しうるマントル情報が最も有力な手がかりと言える.特に,44 億年前の火星隕石 NWA 7034 から,火星の初生的な情報が得られれば,マントル脱ガス史を定量的に評価できると期待する.
 

6. 火星の有機物と生命存在可能性

火星の有機物の探求は,一連の火星着陸探査の重要なテーマである.近年,探査機キュリオシティの分析により,火星大気中に微量のメタンが検出され,その量が周期的に増加することが報告された [73].さらに最近,ゲール・クレーターの 35 億年前の堆積岩中に,構造中に硫黄を含む有機物(チオフェン・芳香族・脂肪族など)が検出された [74].有機物やメタンの起源としては非生物的な形成プロセスが提案されているが,よく分かっていない.火星における有機物の形成過程・種類・存在量などの解明は,生命存在可能性とも関連し,これから大きく進むと期待される.

いくつかのシャーゴッタイト,ナクライト,および,ALH 84001,NWA 7034 では,多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbons, PAHs)などの高分子炭素化合物(macromolecular carbon, MMC)の存在が報告されている([75, 76] および,それらの引用文献).これらは鉱物のインクルージョンや割れ目・粒間などに存在し,組織観察や化学分析から(少なくとも一部は)地球の汚染ではなく火星由来であると考えられている.MMC の形成は,還元的なマグマの冷却や熱水反応,隕石衝突などの非生物的プロセスによるものと考えられ,必ずしも生命活動の痕跡を示すものではない.しかし,これらの発見は,生命の材料となりうる物質が火星表層に長期間存在したことを示唆する.特にレゴリス角礫岩である NWA 7034 に含まれる MMC は,火星の堆積岩中に見つかった有機物とも関連性が高いかもしれない.将来の火星探査・火星隕石分析で,火星の有機物形成プロセスと火星生命可能性の探求が大きく進むことを期待する.
 

7. おわりに

火星隕石が記録する鉱物・同位体化学情報は,火星史の解明に大きく貢献してきた.分析技術の進歩や新たな隕石の発見に伴い,火星隕石から得られる情報は今後も増えるだろう.また,現在,日本主導の火星衛星サンプルリターン計画(MMX 計画)が進んでおり,将来的には火星地下圏の探査,火星からのサンプルリターンも実現すると期待される.急速に火星圏の科学が発展しつつある現在,唯一の実試料である火星隕石が果たす役割はさらに大きくなると言える.
 

謝辞

玄田英典博士には,本稿を執筆する機会を頂き,粗稿を読んで頂きました.また,三浦弥生博士には,大変有意義なご助言・ご指摘を多数頂きました.これらの方々に感謝致します.本研究は,日本学術振興会科研費(17H06459, 15KK0153, 16H04073, 18J02005)の援助を受けています.
 

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Editor : Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

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