次世代太陽系探査
火星圏のサイエンス
火星大気と表層水の起源と進化:理論モデルと同位体組成からの制約
火星大気と表層水の起源と進化:理論モデルと同位体組成からの制約
特集「火星圏のサイエンス」 : May 01, 2021. Published
黒川宏之(東京工業大学地球生命研究所),櫻庭遥( 東京工業大学理学院 地球惑星科学系)
この遊星人記事は、日本惑星科学会遊星人編集専門委員会より許可を得て掲載しております。
要旨
希薄な大気と僅かな極冠氷しか持たない寒冷乾燥の惑星である火星は,かつて厚い大気と豊富な表層水を持っていた.本稿では火星の大気と表層水の起源と進化について,理論モデルと元素組成・同位体組成の観点から得られている制約と,そこから描き出されるシナリオ,未解決の課題を提示する.揮発性元素の起源について元素組成から議論するとともに,大気散逸について同位体組成をもとに散逸量・時期について制約を与える.さらに,地下圏への H2O 氷・CO2 貯蔵が表層環境進化に寄与してきた可能性を議論する.
1. 比較惑星科学における火星の重要性
地球型惑星の表層環境は多様である.太陽系の中だけでも,厚い大気に覆われた灼熱乾燥の金星,液体の水と生命を宿す地球,薄い大気しか持たず寒冷乾燥の火星と,その姿は様々である.近い将来には,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡など次世代観測機器による系外惑星の透過光・放射光観測により,より多様な惑星の姿が描き出されていくと期待されている [1 など].
惑星の表層環境を決定づける要因は何か?惑星形成過程における揮発性元素の供給とリザーバー(大気・水圏・地殻・マントル・コア)間の分配はその支配的な要素の一つである.太陽系遠方領域から小天体 [2 など] や氷ペブル [3, 4] として供給される揮発性元素量・組成が惑星の表層環境を左右する(3 節).揮発性元素は惑星の分化において,温度・圧力・酸化還元度に依存して各リザーバーに分配される [5 - 7].金星・地球と火星の比較は,惑星サイズや軌道半径が揮発性元素供給・分配過程に及ぼす影響を理解する鍵となる.
惑星形成後の 45 億年間の進化過程における元素循環・大気散逸は惑星表層環境の変動を引き起こす(4 節).この時間スケールの中で火星が温暖湿潤から寒冷乾燥への気候変動を経験してきたことは,惑星形成後の進化がいかにその表層環境を大きく変化させるかを物語っている [8, 9].プレートテクトニクスのような活発な地表の更新活動がない火星では,多くの地質的・地球化学的記録が残されているため,これらを繋ぎ合わせていくことが火星史解明において重要となる(2 節).
本稿では,我々のこれまでの研究を中心に,火星大気と表層水の起源と進化に関する制約と未解明の課題を提示する.2 節では現在の火星を特徴づける地球化学的性質と過去の火星の地質学的記録を簡潔に紹介する.3 節では惑星形成から後期天体集積期における揮発性元素供給・分配・散逸過程について,4 節ではその後の元素循環・大気散逸について議論する.最後に,5 節でまとめを述べる.
2. 地球化学・地質学的記録
火星の大気と表層水の起源と進化を理解するため,この節では基本的な地球化学的制約・地質学的記録について概説する.現在の火星は,平均 6 mbar の CO2 を主成分とする大気と,極冠氷(polar layered deposit,PLD)としての少量の表層水(約 2030 m global equivalent layer(GEL),1 GEL = 1.4 x 1017 kg = 10-4 地球海洋質量)しか持たない惑星である.図 1 に現在の金星・地球・火星の炭素(C),窒素(N),希ガス存在度の比較を示す.地球・火星の元素存在度パターンには類似性がある.しかし,火星表層の揮発性元素存在度は地球と比較して 2 桁程度小さい.この揮発性元素の欠損がいつ,どのように実現されたのかが本稿で議論する主題である.また,地球が炭素質コンドライトに近い同位体組成を示すのに対し,火星は重い同位体に富んでいる.重い同位体の濃集は,大気散逸が揮発性元素枯渇の一因であることを示している(4 節).
Image Caption :
図 1. 太陽系内の地球型惑星・炭素質コンドライト・彗星(実験値)の揮発性元素存在度.総質量中の存在度を太陽組成で規格化している.地球については表層(大気・水圏・地殻),金星・火星については大気中の存在量のみを考慮している.データは以下の文献値に基づく.CI コンドライト:[98], 彗星:氷への吸収実験に基づくモデル(50 K)[99],金星:[98],地球:[98],火星:[98, 100].ただし,ロゼッタ探査機によって測定された 67P/ チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のアルゴン存在度は実験値より1 - 2 桁小さい [101].他の希ガス存在度が未報告のため,ここでは統一的に実験値を用いている.
火星探査によって得られてきた地質学的・地球化学的証拠は,Noachian(約 42 - 37 億年前)の火星が現在より厚い大気・豊富な表層水を保持していたこと,その後の Hesperian(約 37 - 33 億年前)にかけて現在のような乾燥した気候に遷移してきたことを示唆している.流水地形 [10 など] や水由来の二次鉱物 [11 など] の発見は,過去の火星に液体の水が存在したこと,それを可能にした温室効果をもつ厚い大気(数 bar の CO2 とその他の温室効果ガス, [12, 13])が存在したことを示唆している.海岸線地形の存在 [14 など] や三角州地形の高度分布の一致 [15] から,北部低地に広大な海が存在したという説が提唱されている.ただし,古海洋水量の見積もりには幅があり,不定性なのか,時間進化を反映しているのかはよくわかっていない(4. 1 節).また,各時代のマグマ噴出量に対して,地球のホット・スポットマグマの揮発性元素存在度を仮定することで,少なくとも約 0.4 bar の CO2, 約 8 mGEL の水が火星の歴史を通じて脱ガスしたと見積もられている [16].最後に,火星隕石の化学分析からは,地球と比較して揮発性元素に富んだ材料物質から集積した可能性が指摘されている [17].
過去の火星が恒久的に温暖であったか,寒冷な気候の中で一時的に温暖な時期があったかは議論が分かれている.理論モデルの観点では,過去の暗い太陽のもとでは,純粋な CO2 大気は火星表層の気温を十分温暖に保つことができないことが知られている [18, 19].さらに,バレー・ネットワークの分布が温暖な気候モデルと一致しないこと [20] や液体の水が存在した証拠である粘土鉱物組成が地下水圏での形成を支持すること [21] から,寒冷な火星古気候モデルが提案されている.寒冷モデルにおいては,流水地形は火山噴火や天体衝突による一時的な温暖気候のもとでつくられたとされている.ただし,その場合においても,地形分布の再現にはやはり数 bar 程度の厚い大気が必要である [22].
3. 惑星形成期及び後期天体集積期の揮発性元素供給と散逸
惑星の獲得する揮発性元素の起源としては,原始惑星系円盤ガスの捕獲,固体集積物質としての供給がありうる.固体集積物質を考える上では惑星形成期(微惑星・ペブル),形成後(小惑星・彗星)に分けて考えることができる.また,これらの揮発性元素供給時には,その損失も同時に起こる.
3 - 1. 原始惑星系円盤ガスの捕獲と散逸
火星大気は希ガスに枯渇していることから,円盤ガスは火星の揮発性元素の主要な起源ではないと考えられる([23], 図 1).ただし,Hf-W 年代から示唆される火星の形成時期は CAI 形成後 200 万年程度 [24] であり円盤の典型的な寿命より短いことから,円盤ガス中で形成した火星は一時的に円盤ガスを捕獲した大気を纏っていたと考えられる.火星の捕獲しうる円盤ガス質量は 1018 kg 程度である [25].この量の円盤ガス由来大気は原始惑星系円盤散逸後 100 万年程度の時間で流体力学的散逸によって失われたと考えられる [26 - 28].ただし,大気散逸によって水素混合率が十分に下がった後は,CO や CO2 による熱圏の冷却や,下層大気からの水素拡散が律速過程になることで,円盤ガス由来成分の寿命は長くなる可能性もある.形成期の火星では,円盤ガス成分と脱ガス成分混成大気の温室効果,微惑星降着の重力ポテンシャルエネルギーの解放によって全球的マグマオーシャンが形成される [29, 30].円盤ガス由来大気の散逸・マグマオーシャン固化後は,カタストロフィックな脱ガスによって脱ガス主成分の大気へと遷移したと考えられる [31, 32].火星隕石に基づくと火星マントルは還元的である(アイアン - ウスタイト・バッファ程度,[33])ことから,初期の脱ガス大気は CO を主成分とする弱還元的大気であった可能性がある [7 など].
原始惑星系円盤ガス中で誕生した火星では,これまで想定されていない新しいタイプの大気散逸が起こっていた可能性がある.従来,円盤ガス捕獲過程の研究では 1 次元静的モデルが用いられてきた [25, 29].しかし,実際の火星は原始惑星系円盤のケプラーシアー流(円盤ガスがサブケプラー回転していた場合は向かい風)に晒されていたはずである.原始惑星系円盤ガスに埋もれた惑星周囲の流体シミュレーション(等温)の結果からは,3 次元的描像においては惑星大気には常に円盤ガスの流入・大気の流出(大気リサイクリング)があり,1 次元モデルの仮定する孤立した静的な惑星大気は存在しえないという主張がある [34].この時,脱ガス成分が原始惑星系円盤へと流出して失われる可能性も考えられる(系外惑星形成の文脈では [35]).この原始惑星系円盤ガス中での脱ガス成分流出が火星の揮発性元素枯渇の一因かもしれない.一方で,Kurokawa and Tanigawa [36] は,惑星大気の非等温構造を考慮した場合,大気リサイクリングの発生は約 0.5 ボンディ半径より上空に限られることを示した(図 2).
Image Caption :
図 2. 流体シミュレーション(非等温)の結果に基づく原始惑星系円盤に埋もれた火星質量惑星周囲の流れ場(赤道面).コンターはガス密度(初期条件・境界条件の値を 1 として規格化).白線は流線,オレンジ破線は惑星のボンディ半径を表す.(a)惑星を取り巻く流れ場(縦軸・横軸の H は円盤ガスのスケールハイト).(b)ボンディ半径付近の拡大図.約 0.5 ボンディ半径内部に流線が閉じた領域が存在し,円盤ガス流から孤立している.Kurokawa and Tanigawa [36] の計算結果をもとに改変.
従って,脱ガス成分の流出が起こるかは脱ガス成分と円盤ガス捕獲成分が成層構造をとらず,対流・乱流により両者が上空まで混合されている場合にのみ起こると期待される.地球や火星マントルに円盤ガス由来の D/H 比の小さい水が存在する可能性が指摘されていること [37, 38] は,円盤ガスと脱ガス成分の混合が少なくともある程度は進んだことを示唆している.実際の火星形成過程において大気リサイクリングがどの程度進んだかの定量的な評価は今後の課題である.
3 - 2. 小天体による揮発性元素供給と大気剥ぎ取り
惑星形成期に集積した微惑星や形成後の後期天体集積(隕石重爆撃, 後期隕石重爆撃)の小天体(小惑星・彗星)による揮発性元素の供給は,現在の火星大気・表層水の主要な起源であると考えられている.地球・火星ともに希ガス存在度パターンがコンドライト隕石・彗星(実験値)と類似していることは,揮発性元素がこれらの小天体集積に由来することを示唆している(図 1).さらに,金星・地球・火星の希ガス/C, N 比は彗星より小さく,炭素質コンドライトに近いかやや大きい.これは水素, 炭素, 窒素といった主要揮発性元素が彗星ではなくコンドライト的な起源を持つことを示している [23, 28].ただし,希ガスの一部が彗星を起源としている可能性はある [28, 39].
従来,地球型惑星に揮発性元素が供給された時期は後期隕石重爆撃期(41 - 38 億年前)であると考えられてきた.現在よりコンパクトな軌道配置にあった巨大惑星の重力的相互作用に伴う軌道再配置により,遠方領域から彗星や小惑星が地球型惑星領域に降り注ぐ(ニースモデル,[40, 41]).それに対し,近年では惑星形成期においてすでに揮発性元素がもたらされたというシナリオが主流になりつつある.太陽系形成期が巨大惑星の軌道移動を伴った場合,揮発性元素に富んだ遠方の微惑星が地球型惑星形成領域に供給される(グランド・タックモデル,[42]).地球マントルの親鉄性元素同位体組成も,レイトベニア天体は揮発性元素に富んでいなかったことを示唆している [43, 44].
小天体衝突は揮発性元素の供給のみならず,同時に衝突蒸気雲による大気の剥ぎ取りも引き起こす [45].小天体集積による正味の揮発性元素獲得量は,この供給と損失のバランスによって決定される [46].Sakuraba et al. [47] は,後期天体集積時の小天体衝突による揮発性元素の供給と大気剥ぎ取りを考慮した,金星・地球・火星の大気進化理論計算を行った.その結果,同じ衝突天体組成を仮定した場合,地球と比較して火星は単位質量あたりの揮発性獲得元素量が多くなることが示された(図 3).
Image Caption :
図 3. 惑星表層への元素分配を考慮した,天体衝突による揮発性元素供給と大気剥ぎ取りによる大気量・組成進化計算の結果.横軸は衝突天体の積算質量であり,時間的に右側へと進化する.(a)地球,(b)火星ともに同一の衝突天体組成を仮定している.各線は惑星が大気または表層リザーバー(海洋・炭酸塩・氷)として獲得した全揮発性元素量を表している.モデルでは CO2 の表層リザーバー(地球:炭酸塩,火星:CO2 氷)への分配の効果を大気 CO2 分圧に上限値を課すことで考慮している.解の範囲は上限値の不定性(地球:0.1 bar 上限なし,火星:6 mbar 上限なし)の範囲に対応している.地球と比較して火星は同程度か数 10 % 多い揮発性元素を獲得している.Sakuraba et al. [47] の結果に基づく.
これは,同じ揮発性元素存在度を仮定した時,サイズの小さい火星では単位面積当たりの大気柱密度が下がること,大気剥ぎ取り効率が大気柱密度に依存することに起因する(より詳細な議論は [47] を参照).ただし,大気質量 Matm と大気圧 Ps の間には Ps = Matm/Mp x gMp/4πRp2 という関係があるため,同じ揮発性元素存在度に対して火星大気圧は地球大気圧より 1/7 倍ほど小さくなる.ここでMp,Rp,はそれぞれ惑星質量,惑星半径,重力加速度である.地球と比較して火星が揮発性元素に富んだ材料物質から集積した可能性(2 節)を加味した場合,火星の正味揮発性元素獲得量はさらに多くなる.
3 - 3. 氷ペブルの集積
最後に,惑星形成期において,スノーライン以遠を起源とする水や揮発性元素に富んだダスト(氷ペブル)が集積した可能性がある [3, 4, 48].ペブル集積モデルでは,円盤ガスの抵抗によって円盤遠方領域から中心星方向へ落下してくる cm サイズのダスト(ペブル)が原始惑星に集積することで惑星が成長する [49, 50].火星や地球サイズの天体へのペブル集積効率は惑星質量に比例する [51] が,氷ペブル流入を引き起こす円盤内のスノーラインの移動を考慮すると,地球より遠方にある火星は単位質量あたりの揮発性元素が多くなる傾向にある [48].また,氷ペブルによる揮発性元素供給には,コンパクトで重い円盤という限定的な条件を想定しない限り,岩石惑星を数 % - 数 10 % の氷含有量を持つ氷惑星に変えてしまうという問題もある [48].この問題については,太陽系形成の初期に木星が形成することで,氷ペブルの地球型惑星領域への輸送を食い止めたというシナリオも提案されている [4].鉄隕石の Mo と W 同位体分析からも,これらの隕石が早い時期に形成した木星によって隔てられた二つの異なるリザーバーから形成されたという説が提唱されている [52].現状,ペブル集積における揮発性物質供給の研究は水のみに留まっており,集積時の氷ペブルの揮発性元素組成の理論的・実験的予想はまだない.炭素や窒素などへのモデルの拡張は今後の課題である.
以上をまとめると,火星の揮発性元素の最も有力な起源は惑星形成期・後期天体集積期に集積した小天体である.円盤ガス捕獲や氷ペブル集積の影響については未解明の点が残されている.いずれにせよ,火星が獲得した揮発性元素量は地球より多かったと予想される.したがって,現在の火星の希薄な大気,少量の水という表層環境に至るには,形成以後の損失過程が重要である(4 節).
4. 惑星形成後の大気と表層水の散逸・地下への貯蔵
火星が獲得した揮発性元素,すなわち過去の火星表層に存在した豊富な水と厚い大気は,太陽風と極端紫外線放射が駆動する大気散逸や地下への貯蔵という形で失われていった.ここでは元素同位体組成に着目することで,いつ・どのように失われたかを制約する.
4 - 1. 表層水の大気散逸と地下氷の貯蔵
火星の表層水は水蒸気として大気中で光解離し,水素として散逸する [53 など].酸素も一部は散逸し,残りは酸化剤として消費される.大気散逸においては軽い同位体が選択的に失われるため,火星表層への重い同位体の濃集として記録される.大気散逸における正味の同位体分別係数 f =(D/H)escape /(D/H)reservoir は,大気中での光化学反応過程・大気散逸過程に依存する.
現在及び過去の火星における水散逸機構は完全には解明されていない.従来,H2O はコールドトラップによって上層大気への輸送が制限されるため,水素散逸のボトルネックは H2 による輸送だと考えられてきた [54].ところが,近年のハッブル宇宙望遠鏡 [55 - 57] や火星周回衛星マーズ・エクスプレス [58],メイブン [59, 60] の観測によって,外気圏の水素存在量に大きな季節変動があることがわかってきた.大気中での滞在時間の長い H2 ではこのような短期間の変動は生まれないため,H2O が直接上層大気に運ばれていることがその原因であると考えられている [61].H2O 輸送にはダストストームが関連している可能性 [62] があるが,その輸送率・頻度はよくわかっていない.従って,現状では過去の火星への外挿も困難である [63].
水散逸機構の理解が発展途上であるという現状を鑑みて,本稿ではまず水リザーバーの D/H 比進化から水散逸量・時期を制約し,その後それを実現するシナリオを議論する.Kurokawa et al. [64, 65] は火星探査・天文観測・火星隕石分析の結果に基づき火星水リザーバーの D/H 比進化モデルを構築した(図 4).
Image Caption :
図 4. 惑星表層への元素分配を考慮した,天体衝突による揮発性元素供給と大気剥ぎ取りによる大気量・組成進化計算の結果.横軸は衝突天体の積算質量であり,時間的に右側へと進化する.(a)地球,(b)火星ともに同一の衝突天体組成を仮定している.各線は惑星が大気または表層リザーバー(海洋・炭酸塩・氷)として獲得した全揮発性元素量を表している.モデルでは CO2 の表層リザーバー(地球:炭酸塩,火星:CO2 氷)への分配の効果を大気 CO2 分圧に上限値を課すことで考慮している.解の範囲は上限値の不定性(地球:0.1 bar 上限なし,火星:6 mbar 上限なし)の範囲に対応している.地球と比較して火星は同程度か数 10 % 多い揮発性元素を獲得している.Sakuraba et al. [47] の結果に基づく.
表層水の初生値 D/H < 1.275(以降,特に断りのない場合は地球標準平均海水を 1 として規格化した値を示す)から,アランヒルズ 84001 隕石の形成年代である約 41 億年前 [66] の時点で D/H = 1.5 - 2 まで重水素濃集が進んだ.ここで重要な点は,古海洋に相当する表層のクレーター年代は 41 億年より若いということである.つまり,火星に古海洋が存在した時代は,すでにそれに匹敵する水量が大気散逸によって失われた後であった [64].従来,現在の火星の主要な水リザーバーは極域の PLD とされ,その D/H 比としては火星大気中の水蒸気の値 D/H ~ 6 - 7(もしくはそれと平衡にある氷の値)が採用されてきた [67, 68].これに対し,現在の火星の主要な水リザーバーは地下氷であり,D/H = 2 - 3 程度の中間的な値を持っているという説が提唱されている [69].地下氷とその中間的な D/H 比は,古海洋の水が寒冷化に伴い地下氷として保存されたと考えると自然に説明できる [65, 70].ただし,仮説のもととなっているシャーゴッタイト隕石の衝撃ガラス中の D/H 比については異なる値も報告されている [71].
D/H 比進化モデルに基づいて時代ごとの水量を見積もる.前述のように,近年の観測・探査結果を受けて,火星からの水散逸機構の理解は発展途上である.従って,現実的な同位体分別係数の決定はさらなる研究の進展を待つ必要がある.ここでは,f = 0 を仮定した場合の大気散逸量の最小見積もりを示す(図 5).
Image Caption :
図 5. 火星表層・地下水量の時間進化.リザーバーを単一,f = 0 とし,D/H 比は以下を仮定した.45 億年前:1.275,41 億年前:2,現在:7.実線・点線はある初期水量を仮定した場合の進化を示している.緑は現在の PLD 水量に基づく最小見積もり.古海洋水量(青色)の水が存在した場合,現在の火星には PLD を上回る水量(> 10 - 200 mGEL)が存在することになる.また,初期水量は > 200 - 1000 mGEL と見積もられる.データは以下の文献に基づく:古海洋見積もり [14, 15, 110],PLD 見積もり [111, 112].Kurokawa et al. [64] をもとに改変.1 地球海洋質量 = 1.4 x 1021 kg である.
初期水量 > 200 - 1000 mGEL は > 0.02 - 0.1 地球海洋質量に相当する.この見積もりは揮発性元素の供給の観点(3 節)とも整合的である.同時に,現在の火星には PLD の水量を上回る未知の水リザーバー(> 10 - 200 mGEL)が存在することになる.Kurokawa et al. [64, 65] は,この水リザーバーが地下氷である可能性を指摘している.クレーター形態分布 [72] や地下の誘電率分布測定 [73] も,大量の地下氷の存在を支持する結果を示している.また,地下氷起源の可能性がある季節性の流水類似地形(リカーレント・スロープ・リニア)[74] や,地下氷の一部が露出している地域も発見されている [75].地下水循環モデル [70] では,低い地殻熱流量などの条件を満たせば,地下氷を大気と孤立したリザーバーとして過去 30 億年間維持できることが示されている.
ただし,水素散逸に伴う正味の同位体分別係数 f が未知であることに注意が必要である.実際の f は大気散逸過程と下層大気からの輸送過程に依存する.従来の水素分子が上層大気への輸送を担う描像においては,天文観測に基づき f ~ 0.1 という値が見積もられている [76].一方で,水蒸気が上層大気への輸送を担う場合,分別係数の値は異なるものになると予想される.
D/H 比と古海洋水量から見積もられた初期火星からの大量の水散逸(> 100 - 500 mGEL)がどのように実現されたかは未解明である.現在の火星からの水素散逸率のピーク値 ~ 1027s-1 [77] を 4 億年間積分しても,その散逸量はたかだか数 mGEL 程度である.現在の火星からの水散逸の律速過程である H2O の上層大気への輸送はダストストームと関連があることが示唆されている [61, 62] が,その頻度が初期火星において桁違いに多いと予想される理由は特に存在しない.一方で,過去の火星において水素分子拡散による水素散逸率が高かったという可能性はある.水素分子が上層大気への輸送を担う場合,究極的には水が解離して生じる酸素の散逸・消費過程が水素散逸率を律速する [54].理論モデルの予想する初期火星からの酸素散逸量は多い見積もりでも水換算で < 10 - 70 mGEL に留まる(太陽風の飽和期間 1.5 億年間で積分, [78]).しかし,地表面を酸化することで酸素が消費され [79],水素散逸を促進した可能性がある.還元的な火星マントルから脱ガスした CO(3. 1 節)を CO2 へと酸化することでも酸素は消費される.仮に 3 bar の CO が CO2 へと酸化された場合,100 mGEL 相当の酸素を消費することになる.この時生成した CO2 は火星史を通じて大気散逸や地下への貯蔵で大気から失われた可能性がある(4. 2 節).最後に,脱ガスする水素の一部は H2O ではなく H2 や CH4 であると考えられる [7].これらの還元的分子を起源とする水素の散逸でも,水との間で同位体交換反応が生じれば表層水の重元素濃集に寄与する.
4 - 2. 火星大気圧と酸化還元度の進化
火星大気進化には複数の要因が存在する.重力が小さく,固有磁場を持たない火星においては,水素より重い元素も散逸しうる.サイズの大きいクレーターの年代と残留磁化の有無の関係から,磁場消失時期は約 41 億年前と推定されている [80, 81].火星が厚い大気を失った要因として,太陽風に起因するイオンピックアップやスパッタリング,イオンアウトフロー,太陽短波長放射による光化学的散逸が考えられている [63].41 億年以上前の時代においては,高温の熱圏からの炭素の熱的散逸によって,火星は厚い大気を持ちえなかったという説も提唱されている [82].ただし,熱圏温度の理論予想はモデル間で一致していない [82, 83].炭酸塩の形成 [84] や CO2 氷の形成・蓄積(大気コラプス,注釈 1)とそれに伴う CO2 氷冠底部の溶融(ベイサル・メルティング,注釈 2)[85, 86],大気中の光化学反応による有機物生成と気相からの除去も大気 CO2 分圧の減少に寄与した可能性がある.ただし,各素過程が大気圧進化にどの程度寄与したかはよくわかっていない.大気主成分である CO2 は大気散逸以外の損失過程が多数あるため,Kurokawa et al. [28] は反応性の低い希ガスと窒素の同位体組成をもとに過去の火星の大気圧を制約した.現在の火星大気は 15N/14N ~ 1.6(以降,特に断りのない場合は地球大気の同位体比で規格化された値を示す),38Ar/36Ar ~ 1.26 という値を示す [87, 88].約 41 億年前の結晶化年代を持つアランヒルズ 84001 隕石の全岩加熱分析からは,当時の大気と推定される端成分として 15N/14N ~ 1.007,38Ar/36Ar < 1.06 という値が報告されている [89].ただし,窒素については異なる値の報告もある [90, 91].ここでは,希ガスと窒素を組み合わせた同位体分析によって推定された端成分の値 [89] を採用した.
注釈 1:表層 CO2 総量の減少や自転軸傾斜角の変動によって,厚い CO2 大気を持つ気候から薄い CO2 大気と CO2 氷冠を持つ気候へと気候ジャンプすることを大気コラプスと呼ぶ [19, 85].
注釈 2:厚い CO2 氷冠の形成に伴い,地温勾配によってその底部が融点を上回ることで CO2 氷の溶融が起きることをベイサル・メルティングと呼ぶ [85, 86].
初生的な値に近い 41 億年前の窒素と希ガスの同位体組成からは,当時の火星大気は厚い大気を保持していたと推定される.Kurokawa et al. [28] は,天体衝突による揮発性元素の供給と大気剥ぎ取り,非熱的散逸,火山脱ガスといった供給・損失過程を網羅した火星大気の元素組成・同位体組成進化計算を行った.その結果,希ガスと窒素同位体組成は大気圧に応じた進化を示した.図 6 に窒素の例を示す.
Image Caption :
図 6. 理論計算に基づく火星大気の窒素同位体比進化とデータとの比較.典型的な三通りの結果を示している:現在まで厚い大気を保持している(黒),41 億年前に厚い大気を保持していた(青),41 億年前すでに厚い大気を失っていた(緑).データは以下の文献に基づく:アランヒルズ隕石 [89], 火星大気 [87].Kurokawa et al. [28] をもとに改変.
大気圧が高い時代は,窒素同位体比は初生な値を長期間維持する.大気圧が低くなると,同位体比は供給と散逸のバランスで決まる値に漸近する.同位体比の急変動は天体衝突による揮発性元素の供給とそれに続く大気散逸によるものである.数値計算結果と上述の大気同位体組成の比較から,41 億年前の火星は約0.5気圧以上の厚い大気が存在したと結論付けた.その他の地球化学的・地質学的研究からも,41 - 35 億年前の火星大気圧として,およそ 1 bar 前後という値が見積もられている(図 7).ただし,CO2 分圧の上限値を制約した2つを除き,これらは大気全圧の推定であり,大気主成分は必ずしも CO2 ではなく,CO であった可能性もある.
Image Caption :
図 7. 理論モデル,地球化学,地質学に基づく火星大気圧進化の制約.文献 : (1)[28],(2)[113],(3)[114] (CO2 分圧),(4)[115],(5)[116],(6)[117],(7)[19](CO2 分圧), and(8)[85].Kurokawa et al. [28] をもとに改変.
約 41 億年前から現在までの大気圧進化の要因は複数考えられる.メイブンの観測結果を過去に外挿した結果からは,少なくとも CO2 に換算すると約 0.8 bar に相当する酸素が散逸したと見積もられている [63].約41億年前の固有磁場消失が大気散逸の引き金となった可能性があるが,磁場消失は必ずしも大気散逸を促進しないとの主張もある [92].別の可能性として,CO2 分圧の減少や他の温室効果ガス分圧(H2 など)の減少に伴い,大気コラプス及びそれに続く CO2 氷のベイサル・メルティングによって,CO2 が地下圏に貯蔵されたというシナリオも考えられる [85, 86].
火星大気からの水素と酸素の散逸量が 2H > O であった場合,大気散逸は火星表層の酸化を引き起こす.この酸化還元度の進化は上述のいくつかのシナリオや観測事実を説明できる可能性がある.還元的な火星マントルからは炭素の大部分は CO として脱ガスするはずである(3. 1 節).キュリオシティ探査車による火星土壌中の有機物の検出が報告されている [93] が,弱還元的環境でこの有機物が生成されたかもしれない.その後,CO が CO2 に酸化されることで H2O 中を起源とする酸素が消費され,水素散逸と重水素濃集を引き起した(4. 1 節).また,CO 大気から CO2 大気への進化は惑星を温暖化する(注釈 3).地形学・地球化学的な証拠から示唆されている一時的な温暖気候はこの大気酸化によって実現された可能性がある.
注釈 3:地表面酸化を考慮すると初期火星においては CO2(+ H2O)大気は光化学的に不安定である [79] が,H2 などの追加の温室効果ガスが存在した場合,地表面温度の上昇によって大気中の H2O 存在度が上がることで CO2 主成分大気を安定化すると期待される.
キュリオシティが岩石中の脈状に濃集した酸化マンガンを発見したことは,ゲールクレーターの形成(約 35 億年前)後のある時代において,火星が強酸化的な大気を持っていた可能性を示唆している [94 - 96].通常,H2O の解離と水素散逸では,CO2 大気からさらに酸化が進み,O2 が豊富な大気に進化することはない [54, 79].O2 濃度が僅かに上昇するだけで大気中の H2 存在度は減少し,水素散逸率に負のフィードバックが働くためである.しかし,厚い CO 大気から CO2 大気への進化以降に大気コラプスが起きた場合,一時的な O2 濃度の上昇を引き起こしたかもしれない.大気圧が減少すると太陽紫外線の透過率が上がる.地表面に大量の H2O(氷)が残っていた場合,紫外線による光解離とその後の化学反応によって H2 生成が促進される.これに伴う水素散逸によって,O2 濃度が現在の火星より高いレベルまで上昇した可能性がある.水素散逸に伴う火星酸化シナリオの大気光化学モデルでの検討は今後の課題である.非生物起源の酸素大気形成は,系外地球型惑星のバイオマーカーの文脈でも盛んに議論されている [97].
5. まとめ
本稿では火星の大気と表層水の起源と進化について,理論モデルと元素組成・同位体組成の観点から以下のようなシナリオを提示した.火星の揮発性元素の有力な起源は惑星形成期・後期天体集積期に集積した小天体である.原始惑星系円盤ガス捕獲と氷ペブル集積も揮発性元素をもたらした可能性があるが,その寄与は限定的であったと考えられる.古海洋が存在した時代より以前に > 100 - 500 mGEL の火星表層水が大気散逸によって失われ,その後は大部分が地下氷として貯蔵された.散逸しなかった余剰の酸素は地表や弱還元的な大気の酸化に消費された.約 41 億年前には約 0.5 bar 以上の厚い大気が存在したが,固有磁場消失に伴う大気散逸で失われるとともに,大気酸化に伴う CO2 氷生成(コラプス),CO2 氷のベイサル・メルティングによって地下へと貯蔵された.この大気圧の減少は火星史の一時期においてさらなる大気酸化を引き起こした可能性がある.
ここで示したシナリオは現状の限られた情報に基づく作業仮説であり,今後の研究によってさらなる検証が必要である.個別の研究としては,大気モデルの精緻化,様々な形成年代を持つ火星隕石の詳細な同位体分析,大気中の水輸送・散逸過程の周回衛星探査,大気・水の行方としての地下圏探査などが挙げられる.加えて,惑星形成期における原始惑星系円盤中での物質供給(ガス・固体物質)と同時進行する火星上での元素分配,大気散逸の引き起こす大気酸化還元度進化とそのフィードバック,表層・地下圏をまたぐ物質循環といった,既存研究の異なる領域にまたがる結合過程の理解も重要な課題である.
謝辞
査読者の黒澤耕介博士から本稿に対し有益なコメントをいただいたことに感謝いたします.本研究は JSPS 科研費 16H04073,17H01175,17H06457,18K13602 の助成を受けたものです.
参考文献
[1] Greene, T. P. et al., 2016, Astrophys. J. 817, 17.
[2] Raymond, S. N. et al., 2004, Icarus 168, 1.
[3] Sato, T. et al., 2016, Astron. Astrophys. 589, A15.
[4] Morbidelli, A. et al., 2016, Icarus 267, 368.
[5] Kuramoto, K. and Matsui, T., 1996, J. Geophys. Res. 101, 14909.
[6] Wood, B. J. et al., 2006, Nature 441, 825.
[7] Hirschmann, M. M., 2012, Earth Planet. Sci. Lett. 341, 48.
[8] Wordsworth, R. D., 2016, Annu. Rev. Earth Planet. Sci. 44, 381.
[9] Ramirez, R. M. and Craddock, R. A., 2018, Nature Geoscience 11, 230.
[10] Craddock, R. A. and Howard, A. D., 2002, J. Geophys. Res. Planets 107, 5111.
[11] Bibring, J. P. et al., 2006, Science 312, 400.
[12] Ramirez, R. M. et al., 2014, Nature Geoscience 7, 59.
[13] Ramirez, R. M., 2017, Icarus 297, 71.
[14] Carr, M. H. and Head, J. W., 2003, J. Geophys. Res. Planets 108, 5042.
[15] Di Achille, G. and Hynek, B. M., 2010, Nature Geoscience 3, 459.
[16] Craddock, R. A. and Greeley, R., 2009, Icarus 204, 512.
[17] Wanke, H. and Dreibus, G., 1988, Phil. Trans. R. Soc. Lond. A 325, 545.
[18] Kasting, J. F., 1991, Icarus 94, 1.
[19] Forget, F. et al., 2013, Icarus 222, 81.
[20] Wordsworth, R. et al., 2015, J. Geophys. Res. Planets 120, 1201.
[21] Ehlmann, B. L. et al., 2011, Nature 479, 53.
[22] Wordsworth, R. et al., 2013, Icarus 222, 1.
[23] 阿部豊, 1993, 惑星の科学(清水幹夫編), 朝倉書店, 1.
[24] Dauphas, N. and Pourmand, A., 2011, Nature 473, 489.
[25] Ikoma, M. and Genda, H., 2006, Astrophys. J. 648, 696.
[26] Stokl, A. et al., 2015, Astron. Astrophys. 576, A87.
[27] Stokl, A. et al., 2016, Astrophys. J. 825, 86.
[28] Kurokawa, H. et al., 2018, Icarus 299, 443.
[29] Saito, H. and Kuramoto, K., 2017, Mon. Not. R. Astron. Soc. 475, 1274.
[30] Senshu, H. et al., 2002, J. Geophys. Res. Planets 107, 5118.
[31] Elkins-Tanton, L. T., 2008, Earth Planet. Sci. Lett. 271, 181.
[32] Lammer, H. et al., 2013, Space Sci. Rev. 174, 113.
[33] Herd, C. D. et al., 2002, Geochim. Cosmochim. Acta 66, 2025.
[34] Ormel, C. W. et al., 2015, Mon. Not. R. Astron. Soc. 447, 3512.
[35] Alibert, Y., 2017, Astron. Astrophys. 606, A69.
[36] Kurokawa, H. and Tanigawa, T., 2018, Mon. Not. R. Astron. Soc. 479, 635.
[37] Hallis, L. J. et al., 2012, Earth Planet. Sci. Lett. 359, 84.
[38] Hallis, L. J. et al., 2015, Science 350, 795.
[39] Marty, B. et al., 2017, Science 356, 1069.
[40] Tsiganis, K. et al., 2005, Nature 435, 459.
[41] Gomes, R. et al., 2005, Nature 435, 466.
[42] Walsh, K. J. et al., 2011, Nature 475, 206.
[43] Fischer-Godde, M. and Kleine, T., 2017, Nature 541, 525.
[44] Dauphas, N., 2017, Nature 541, 521.
[45] Melosh, H. J. and Vickery, A. M., 1989, Nature 338, 487.
[46] Svetsov, V. V., 2007, Solar System Research 41, 28.
[47] Sakuraba, H. et al., 2019, Icarus 317, 48.
[48] Yamamura, T. et al., 2018, in prep.
[49] Ormel, C. W. and Klahr, H. H., 2010, Astron. Astrophys. 520, A43.
[50] Lambrechts, M. and Johansen, A., 2012, Astron. Astrophys. 544, A32.
[51] Ormel, C. W., 2017, Formation, Evolution, and Dynamics of Young Solar Systems, Springer, 197.
[52] Kruijer, T. S. et al., 2017, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 114, 6712.
[53] Yung, Y. L. and DeMore, W. B., 1998, Photochemistry of planetary atmospheres. Oxford University Press.
[54] McElroy, M. B. and Donahue, T. M., 1972, Science 177, 986.
[55] Clarke, J. T. et al., 2014, Geophys. Res Lett. 41, 8013.
[56] Bhattacharyya, D. et al., 2015, Geophys. Res Lett. 42, 8678.
[57] Bhattacharyya, D. et al., 2017, J. Geophys. Res. Space Phys. 122, 11756.
[58] Chaffin, M. S. et al., 2014, Geophys. Res Lett. 41, 314.
[59] Clarke, J. T. et al., 2017, J. Geophys. Res. Space Phys. 122, 2336.
[60] Mayyasi, M. et al., 2017, J. Geophys. Res. Space Phys. 122, 10811.
[61] Chaffin, M. S. et al., 2017, Nature Geoscience 10, 174.
[62] Spiga, A. et al., 2013, J. Geophys. Res. Planets 118, 746.
[63] Jakosky, B. M. et al., 2018, Icarus, in press.
[64] Kurokawa, H. et al., 2014, Earth Planet. Sci. Lett. 394, 179.
[65] Kurokawa, H. et al., 2016, Geochem. J. 50, 67.
[66] Lapen, T. J. et al., 2010, Science 328, 347.
[67] Owen, T. et al., 1988, Science 240, 1767.
[68] Villanueva, G. L. et al., 2015, Science 348, 218.
[69] Usui, T. et al., 2015, Earth Planet. Sci. Lett. 410, 140.
[70] Grimm, R. E. et al., 2017, J. Geophys. Res. Planets 122, 94.
[71] Liu, Y. et al. 2018, Earth Planet. Sci. Lett. 490, 206.
[72] Weiss, D. K. and Head, J. W., 2017, Icarus 288, 120.
[73] Mouginot, J. et al., 2012, Geophys. Res Lett. 39, L02202.
[74] McEwen, S. A. et al., 2014, Nature Geoscience 7, 53.
[75] Dundas, C. M. et al., 2018, Science 359, 199.
[76] Krasnopolsky, V. A. and Feldman, P. D., 2001, Science 294, 1914.
[77] Halekas, J. S., 2017, J. Geophys. Res. Planets 122, 901.
[78] Terada, N. et al., 2009, Astrobiology 9, 55.
[79] Zahnle, K. et al., 2008, J. Geophys. Res. Planets 113, E11004.
[80] Lillis, R. J. et al., 2008, Geophys. Res Lett. 35, L14203.
[81] Lillis, R. J. et al., 2013, J. Geophys. Res. Planets 118, 1488.
[82] Tian, F. et al., 2009, Geophys. Res Lett. 36, L02205.
[83] Kulikov, Y. N. et al., 2007, Geology and Habitability of Terrestrial Planets, Springer, 207.
[84] Wray, J. J. et al., 2016, J. Geophys. Res. Planets 121, 652.
[85] Kurahashi‐Nakamura, T. and Tajika, E., 2006, Geophys. Res Lett. 33, L18205.
[86] Longhi, J., 2006, J. Geophys. Res. Planets 111, E06011.
[87] Wong, M. H. et al., 2013, Geophys. Res Lett. 40, 6033.
[88] Atreya, S. K. et al., 2013, Geophys. Res Lett. 40, 5605.
[89] Mathew, K. J. and Marti, K., 2001, J. Geophys. Res. Planets 106, 1401.
[90] Miura, Y. N. and Sugiura, N., 2000, Geochim. Cosmochim. Acta 64, 559.
[91] Grady, M. M. et al., 1998, Meteoritics and planetary science 33, 795.
[92] Gunell, H. et al., 2018, Astron. Astrophys. 614, L3.
[93] Eigenbrode, J. L. et al., 2018, Science 360, 1096.
[94] Lanza, N. L. et al., 2014, Geophys. Res Lett. 41, 5755.
[95] Lanza, N. L. et al., 2016, Geophys. Res Lett. 43, 7398.
[96] Noda, N. et al., 2017, 48th Lunar Planet. Sci. Conf., 1786.
[97] Wordsworth, R. and Pierrehumbert, R., 2014, Astrophys. J. Lett. 785, L20.
[98] Pepin, R. O., 1991, Icarus 92, 2.
[99] Dauphas, N., 2003, Icarus 165, 326.
[100] Mahaffy, P. R. et al., 2013, Science 341, 263.
[101] Balsiger, H. et al., 2015, Science Advances 1, e1500377.
[102] Usui, T. et al., 2012, Earth Planet. Sci. Lett. 357, 119.
[103] Usui, T. et al., 2017, 48th Lunat Planet. Sci. Conf., 1278.
[104] Webster, C. R. et al., 2013, Science 341, 260.
[105] Mahaffy, P. R. et al., 2015, Science 347, 412.
[106] Krasnopolsky, V. A. et al., 1997, J. Geophys. Res. Planets 102, 6525.
[107] Novak, R. E. et al., 2011, Planet. Space Sci. 59, 163.
[108] Krasnopolsky, V. A., 2015, Icarus 257, 377.
[109] Aoki, S. et al., 2015, Icarus 260, 7.
[110] Head, J. W. et al., 1999, Science 286, 2134.
[111] Zuber, M. T. et al., 1998, Science 282, 2053.
[112] Plaut, J. J. et al., 2007, Science 316, 92.
[113] Manga, M. et al., 2012, Geophys. Res Lett. 39.
[114] van Berk, W. et al., 2012, J. Geophys. Res. Planets 117, E100008.
[115] Cassata, W. S. et al., 2012, Icarus 221, 461.
[116] Kite, E. S. et al., 2014, Nature Geoscience 7, 335.
[117] Hu, R. et al., 2015, Nature communications 6, 10003.
お読み頂いた感想等の投稿フォーム
お名前は本名以外でも構いません。Email アドレスは自動返信用であり、収集・公開しません。
Editor : Akira IMOTO
Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan