天体の地球衝突の脅威 : 私たち一般市民も「科学者」として共有を


「ニアミス」は日々起きている.「敵」の姿を知ることが重要

今年で三回目となる「アステロイド・デイ」が間もなく訪れる。2014年に提唱され、毎年06月30日に世界各地でさまざまなイベントが催されてきた。

このアステロイド・デイは、天体の地球衝突の脅威について地球に住む人々への啓発キャンペーンとして生まれた。イベントや教育プログラムの充実によって、地球に接近する危険な小惑星を観測によって見つけ、追跡することの重要性を知らせ、今後さらにこれらの取り組みを広げていくことを目指している。

今年(2017年)05月に、日本では初開催となる「プラネタリー・ディフェンス・コンフェレンス(PDC、地球防衛会議)」という天体による地球への脅威を議論する国際会議が開かれた。趣旨はアステロイド・デイとよく似ているが、PDC では天体の地球衝突を想定し、小惑星の観測、衝突を防ぐためのミッションの立案、衝突回避・破壊の取り組み、衝突した場合の影響評価、一般への広報や災害対策の検討、情報収集や行動決定などのグループに分かれ、各分野の専門家が議論を通じて天体衝突による被害を低減するためのエクササイズ(訓練)にも取り組んだ。
 

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PDC 2017 集合写真。24か国から200名以上の研究者が参加して催されました。
Image Credit : PDC/JAXA/TPSJ
 

私は PDC には広報や運営スタッフの一員として参加した。参加者の中には、現在運用中の小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトの責任者も含まれた。はやぶさ2は、目的地の小惑星「リュウグウ」で、衝突装置を使って人工的に穴(クレーター)を作る計画だ。はやぶさ2が発射した衝突装置が、小惑星表面にぶつかる際、「イジェクタカーテン」と呼ばれる表面物質が大量に舞い上がる現象が起きる。この実験は、天体衝突現象の人為的な実験とも言える。はやぶさ2が実験で得られる観測データは、地球への天体衝突の際の被害規模などを想定する時に役立つというわけだ。
 

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地球防衛会議の様子=東京都江東区の日本科学未来館。
Image Credit : Andy Rivkin/TPSJ
 

PDC は成功裏に終わり、今後は二年後の開催までの間に、学術分野の研究者をこの分野の研究に募ったり、一般市民方々へのさらなる啓発が行われたりする予定だ。そのための新たな研究会の発足や各国政府側への「天体の地球への脅威」に理解を求める活動が広まることも期待される。

そこで思ったのが、このような「天体の地球衝突脅威」をあらゆる立場の人々が論じたり対策を提案したりするため、我々一般市民も「サイエンティスト」の一員(市民科学者)として活動できる場を、PDC の運営に関わった専門家がもっと広く具体的に世界に提唱してはどうか、ということだ。一般市民としての我々は専門家の国際会議である PDC には参加しにくい。

その上で、世界的に大きなうねりが生まれつつあるアステロイド・デイを通じ、PDC の取り組みを一般に知らせていくことが、天体による脅威の啓発について大いに役立つと思う。国連も昨年(2016年)12月、1908年にロシア・シベリアに直径約 60 メートルの小惑星が落下して起きた「ツングースカ大爆発」の日である「06月30日」を国際アステロイド・デイとすることを承認した。今年のアステロイド・デイは、国連承認後初の記念日となる。

但し、私にとっての天体衝突脅威の問題は、「奇跡の星」と呼ばれる地球が、わずか直径数キロ程度の岩ごときにむざむざと破壊されてしまうことになるという許せない話だ。そして、その脅威の可能性は 0 % ではない。小惑星の地球へのニアミスは日々起きているのだ。

現在、はやぶさ2や米国の小惑星探査機「オシリス・レックス」が運用中で、それらは太陽系が生まれた頃の姿を探査するという将来の宇宙時代を切り開くミッションだ。それとともに、小惑星を詳細に直接観測、分析することによって、「敵」の姿を知ることにもつながる。人間ひとりが生きる 80~90 年という時間で、天体衝突の脅威を論じることは難しいかもしれないが、太陽系の「ミステリアスな未発見の事実」が今も数多く残されていることを認識することは大事だ。

そんなことを、読者や国民の皆さんと共有できれば、地球や宇宙の未来もまた新たな姿に見えてくるのではないか、と思っている。
 

この記事は、2017年06月24日に毎日新聞ウェブに掲載されたものを再編集して掲載したものです。
原文:” 2017/06/24 - 毎日新聞ウェブ ”

 


Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Author : Akira IMOTO. TPSJ Editorial Office