In retrospect ...


「はやぶさ2合運用」を振り返って

December 31, 2018

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Episode #4

「はやぶさ2合運用」を振り返って

前回のコラムを9月17日に書いてから、また、3ヶ月以上経ってしまいました。なかなかこのコラムを書くことができずに申し訳ありませんでしたが、この三ヶ月間は、「はやぶさ2」に関わっている者としてはまさに激動の三ヶ月でした。

「はやぶさ2」の運用についてこの3ヶ月間をざっと振り返ってみましょう。

9月21日には MINERVA-II1(2機)の分離(最低高度 55 m)、10月3日には、MASCOT の分離(最低高度 51 m)をしました。両方とも大成功でした。しかし、ここまでの運用で、10月下旬に予定していたタッチダウンは延期することに。その理由は、表面に十分な広さの平らな領域がないのでより高精度なナビゲーションが必要になったためです。

そして、2回目のタッチダウンリハーサルとして10月15日には高度 22.3 m まで接近、さらに三回目のリハーサルでは10月25日に高度 12 m まで接近し、ターゲットマーカをリュウグウ表面に降ろすことに成功。11月初めには降ろしたターゲットマーカの確認のため降下運用を行い、その後、年末まで合運用(注 1)。



初代の「はやぶさ」では、小型のローバである「ミネルバ」を小惑星リュウグウに降ろすことができませんでしたが、「はやぶさ2」では三機の小型着陸機とローバを無事にリュウグウに降ろすことができました。さらに、18 万人余りの名前を刻んだシートが入っているターゲットマーカもリュウグウに降ろすことに成功しました。

一方、サイエンスの成果もどんどん発表されており、10月に米国のノックスビルで開催された DPS(Division for Planetary Sciences of the American Astronomical Society)では、「はやぶさ2」のセッションが設定され、記者会見も行われました。さらに、12月にワシントン DC で開催された AGU(American Geophysical Union)では、米国の OSIRIS-REx ミッションと共同でのセッションが開催されました。(OSIRIS-REx の方も、目的の小惑星 Bennu に到着して非常に面白いことになっています。Bennu とリュウグウ、形がそっくりですね。)

そして、これは個人的なことですが、その AGU からの帰国途中に、Nature が選ぶ今年の 10 人(Nature's 10)に筆者が選ばれた、との知らせが入りました。これはまさに寝耳に水、そして身に余る光栄です。もちろんこれは「はやぶさ2」のこれまでの成果によるもので、「はやぶさ2」が世界の人からも注目を集めたことを物語っていると思います。

ネイチャー「今年の10人」に「はやぶさ2」の吉川さん選出 - 毎日新聞ウェブ

2019年は、「はやぶさ2」としては最大の山場です。タッチダウン、そして衝突装置(インパクタ)を使った世界初の実験。新たな挑戦に向けて、気合いを入れていきたいと思います。

皆さまにとっても、2019年が新たな挑戦の年、あるいは充実した年になりますように。

注 1 : 2018年の11月下旬から12月末にかけて、「はやぶさ2」は地球から見ると太陽に非常に近いところに位置する。そのために、太陽からの電波や太陽周辺のプラズマによって探査機との通信ができなくなることがある。したがって、この期間にはクリティカルな運用は行わずに、探査機を安全な軌道に投入した。この運用のことを合運用と呼ぶ。

■ MY(吉川真)2018年12月31日 記

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