ブラウン惑星人の日々 February 2019
惑星探査に係る人々 - February 07, 2019. Latest
来月は、いよいよ LPSC
February 07, 2019
皆様、非常に遅まきながら新年明けましておめでとうございます(旧暦ではまだお正月です)。またまた3か月以上もご無沙汰してしまい、申し訳ありませんでした。昨年の秋は、久しぶりに完全に動き始めたRELABの双方向反射分光計で1年以上待っていた試料群を超速度で測定するのに忙しくしていました。なぜなら、前回10月号でご紹介したように11-12月にまた1か月間も日本に出張帰国する必要があったからです。
その期間、はやぶさ2は太陽に隠れて(衝)通常の運用はできない状態でしたが、科学チームの何人かがDPS(米国天文学会のDivision of Planetary Science)やAGU(American Geophysical Union)といったアメリカの学会で初期成果を発表したり、3月にまたヒューストンで行われるLPSC(Lunar and Planetary Science Conference)の要旨を作成したり、サイエンス誌への特集号の改定をしたりと、科学者たちは忙しくしていました。
秋の帰国は私にとって一つの大きな区切りの始まりだったような気がします。1990年に始めて私をアメリカに送り出してくれた山田科学振興財団の長期海外派遣研究交流会にもやっと参加でき、高校や教会や一般を含む講演会を全国47都道府県で終えることができました。
更に富山県の砺波高校での講演の後、私の話を聞いてくれた高校生の一人である兼松君が、私の人生をまとめた短いビデオを作ってくれました。以下のリンクにありますので、ぜひ観てみてください。
https://youtu.be/M76oXR4QHaY
このビデオでもちょっと紹介されているように、私の講演では、私の専門の小惑星と隕石との関係で、如何に宇宙風化説を唱えた我々が迫害されながらも、はやぶさが証明してくれたという話と、はやぶさ2の話題だけでなく、天の川銀河・太陽系・地球・月・南極の神秘的な生成と進化からID理論を紹介し、惑星科学が人類の平和に如何に貢献できるかを説きます。
はやぶさ2の初期論文のサイエンス特集号はまだ出ていませんが、来月に迫ったLPSCでは特別セッションもあり、OSIRIS-RExの初期成果と共に多くの注目を浴びるに違いありません。前回もお話しした宇宙風化と組成の問題ですが、私は今は、リュウグウの表面はほぼ全面宇宙風化していて、ところどころに小さく表れている2倍くらい明るいところが本当の表面組成を表していると思っています。
そのきっかけは、木更津のはやぶさ2科学チーム会議(写真参照)で佐々木晶さんから見せてもらった画像で、他よりも最高4倍も明るい場所があるということでした。晶さんは、はやぶさシンポや以下のLPSC要旨でも発表しています。
https://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2019/pdf/1368.pdf
下画像:木更津のホテル龍宮城で行われた、はやぶさ2合同科学チーム会議の参加者たち。初夏のような気候の日でした。
もちろん、宇宙風化で本当に反射率が2-3%とかまで暗くなるのかという疑問はあるでしょう。しかしながら、実験室での理想的な測定と違い、リュウグウの上では細かいレゴリスは乏しく、粗い粉や岩肌と影が多く、そして掘り起こしが少なければ、同じ表面がずっと太陽からの紫外線や粒子線、そして微小隕石の衝突にさらされるので、極度に宇宙風化した表面が実現可能かもしれません。
そして、NIRS3データの2.7ミクロン吸収帯を解析してみた結果、その波長位置はMurchisonのような普通のCM2コンドライト隕石と変わらないという私の結論が出ました。そのLPSC発表はポスターになってしまいましたが、要旨が以下にあります。
https://www.hou.usra.edu/meetings/lpsc2019/pdf/1129.pdf
私としてはリュウグウの組成について真実を語っている唯一の発表だと思うのに、口頭でなくポスター発表に回されてしまうのは本当に心外です。そういえば、2001年に同じくLPSCでTagish Lake隕石が初めてのD型小惑星由来の物質であるという、後にNatureに論文として出た内容を出したのに、それもポスターにされてしまいました。以下にその要旨があります。
https://www.lpi.usra.edu/meetings/lpsc2001/pdf/1776.pdf
1999年に私と晶さんが、輝石よりカンラン石の方が宇宙風化しやすいという要旨を出した時も、ポスターどころか拒絶という前代未聞の迫害を受けました。何度も間違いを指摘した交渉の結果ポスターに入れましたが。
https://www.lpi.usra.edu/meetings/LPSC99/pdf/1444.pdf
私と晶さんの要旨が拒絶された証拠の1つとして、以下の2つのプログラムのPDFを比べてみてください。
https://www.lpi.usra.edu/meetings/LPSC99/pdf/sess24.pdf
https://repository.hou.usra.edu/bitstream/handle/20.500.11753/1081/30th_LPSC_Program.pdf?sequence=4&isAllowed=y
どちらも1999年3月に開かれた第30回LPSCのプログラムですが、火曜日のポスターのSmall Bodiesのセクションは、前者のはStarukhinaで終わっているのに、後者のはその後に私と晶さんの要旨が加わっています(45-46ページ)。その拒絶の手紙も講演会で見せています。過ちを赦すことはあっても忘れたらまた犯すかもしれないからです。
そういうわけで、学会で口頭講演を取れるかポスターに回されるか、はたまた受け入れられるか拒絶されるか、歓迎されるか迫害されるかなど、その内容の真実性とは必ずしも相関がないことがわかります。ちょっと良いことをすれば褒められるけれども、世の中を変えてしまうような革新的なことをすると、変化を恐れる悪者たちから迫害される、最悪の場合は殺されてしまうというのが歴史の常です。
まあ暗い話題はこれくらいにして、秋の帰国中には、あの大ヒット全天球プラネタリウム映画Hayabusa Bath to the Earthを作られた有名な上坂浩光監督ご夫妻に招待されて、新作Horizonを見せてもらうことができました。その時に、府中市郷土の森博物館にある、はやぶさ2への願い事カードにメッセージを書いたり、ポスターにサインすることもさせてもらいました(写真参照)。
下画像:府中市郷土の森博物館で、上坂浩光監督ご夫妻に招待されてHorizonを見せてもらった時の様子。
後はいつものように、日本の心ない喫煙者たちと健康増進法違反の公共施設管理者たちの実態を見て驚愕しました。写真の上にあるように、宇宙研に行き来する時によく乗り換えるJR横浜線の橋本駅ホームに直結したE Prontoという店があり、何と堂々と喫煙室があると宣伝し、駅のホームにその排煙を垂れ流しているのです。写真で2人の子供連れの女性がいる真上に毒ガスが出ているのです。通り過ぎたJRの職員たちにどこからこの悪臭は来るのか尋ねたら、「きっとこの店でしょう」としゃあしゃあと答えていました。「わかってるんだったら何とかしろよ!」と叫びたかったです。
一方、下の方の写真は宇都宮駅のバス停側の出口の1か所しかない通路のそばに、喫煙所が並んでいるのです。私が講演をした宇都宮女子大学を含む多くの生徒たちも通学したりバスを待っているところなのに、毒ガスをまき散らしているなどあるべからざることです!JR橋本駅とE ProntoとJR宇都宮駅には猛反省かつ改善を求めます。
下画像:橋本駅と宇都宮駅での、健康増進法完全違反の受動喫煙警報区域。
来月は恒例のLPSCですが、既に5月の帰国は5月7~25日に決めました。もはや平成ではなくなっている時ですね。10日もあるゴールデンウィークまたは元号の改定のせいか、航空便が非常に高くて、もっと上がりそうだというので購入してしまいました。宇宙研と阪大で研究活動をするほか、また有給休暇を取って何か所かで講演をすると思います。よろしく。