赤道帯が明るく青いのは、宇宙風化がより効いているから
October 27, 2018


皆様、またまた2か月以上もご無沙汰してしまい、申し訳ありませんでした。はやぶさ2がリュウグウに到着した暑い夏を宇宙研で過ごした後、アメリカに戻ってからも、はやぶさ2の歴史的な快挙を続々と見聞きしながらも、科学成果の方は初期論文の特集号がまだ出ていないのでほとんど何も話せない状態が続いています。

皆様もご存知のように、はやぶさ2の搭載機器の中では、ONCが最も重要かつ一般の人々にも最もアピールする画像を返してくれています。その中でも、ONC-Tは望遠で高解像度かつ色フィルターをまわして離散反射スペクトルを取れるので、表面の物質組成・粒度・宇宙風化度などの秘めた情報を複雑に絡ませたデータを示しているはずです。私が働くブラウン大学のRELABはその分野で世界トップのはずですが、それでも予想した通り困難な課題に直面しています。

プレスリリースでも出たので話していいと思いますが、以下の写真に見えるように、リュウグウの赤道上に帯状に走る明るめで青めの部分と、移動が上がったクレーターなどがある部分の暗めで赤めの部分は何が違うのかが問題です。単純には、後者は粒度が細かいからそうなっていると言えば大きくは間違っていないとは思うのですが、宇宙風化があるのであればどう効いているかが問題です。

下画像:はやぶさ2が6月27日に小惑星リュウグウに到着後に20㎞のホーム位置で撮られたONC画像。自転が公転に対して逆行しているので、大きな岩が見える上側が南極。。


 

私の過去のレーザー照射実験でも、最近の紫外光を当てる実験でも、炭素質コンドライトが宇宙風化すると、反射スペクトルは青くなり、短い波長帯では明るくなります。なので、この赤道帯が明るく青いのは、宇宙風化がより効いているからだという解釈も成り立ちます。より岩肌が多いから、表面が刷新されにくく宇宙風化の効果を蓄積しやすいというような。

この考えは科学チーム全体の意見とは逆だと思うので、初期論文ではそういう主張はしないと思いますが、私が別個にそういう論文を書いておいたら、2020年12月に、はやぶさ2が試料を持ち帰って、それが解析された時に、どちらかが正しいだろうということで保険をかけるようなものでいいかもしれませんね。はやぶさ初号機の時は、私は明らかに結論がわかっていたのでNature論文を別個に出すのに躊躇はなかったですが、今回は一層大きな挑戦になりそうです。

あと、前回予告したとおり、次回の11~12月の帰国では、青森・秋田・福島・栃木の未踏の4県に行き、それに加えて、岩手・富山・長野・神奈川・大阪の高校でも講演します。最初はSSHやSGHのプログラムで政府から支援されている高校を中心にアプローチしたのですが、なかなか返答がなかったり都合がつかず、手を広げているうちに多すぎるほどになってしまいました。

現在の予定の概要は以下のようです。仕事関係と、一般の人が聞ける可能性のある講演会だけに絞って書きました。近くの方で、聞きに来られたい方は私の電子メール(takahiro_hiroi@brown.edu)までご連絡ください。高校の場合も、私のコネならば聴講可能なはずです。今回は1か月の帰国で長いこともあるのですが、公私合わせて20回以上の記録的な講演数になるかと思います。そこでも、はやぶさ2についてどこまで話していいのかが大きな?です。

11月9日(金)伊丹空港着
11月10日(土)山田科学財団長期派遣者研究交歓会
11月12日(月)阪大で実験など
11月13日(火)水沢高校で講演(日帰り)
11月14日(水)阪大で実験など
11月15日(木)近くの立命館高校で講演
11月16日(金)実験終了し、午後に青森に移動
11月17日(土)青森で平和大使講演
11月19日(月)砺波高校で講演
11月20日(火)福島南高校で講演
11月21日(水)宇都宮女子高校で講演
11月22日(木)秋田北高校で講演
11月23日(金)諏訪清陵高校で講演
11月24日(土)小山市で講演
11月25日(日)池尻大橋で平和大使講演、宇宙研に移動
11月26日(月)東大駒場キャンパスで宇宙風化研究集会
11月27日(火)近くの横浜サイエンスフロンティア高校で講演
11月28日(水)宇宙研で実験など
11月29日(木)日大船橋キャンパスでセミナー
11月30日(金)鳥取で平和大使講演
12月1日(土)米子で平和大使講演
12月3-4日(月―火)はやぶさ2合同科学チーム会議(木更津)
12月5-7日(水―金)はやぶさシンポジウム(宇宙研)
12月8日(土)成田空港発
 

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