いよいよリュウグウ到着!.April 27, 2018


今回もまた久々にここに書くことになります。3月はヒューストンでの LPSC への参加と速報だけでなく、最初からホテル騒動で色々疲れてしまいました。その後も長く寒い冬が続き4月というのに雪も何度もった記録的な冬でした。やっと今になって雨がちで空気が生ぬるい春を感じるようになってきました。キャンパスでも桜のような花が咲いています(最初の写真)。

下画像:桜様の花の下を忙しく行き来するブラウン大学の学生たち(長女も映っています)。


 

長女はこの5月末にとうとう卒業なのですが、ずっと演奏してきたチェロを生かして、Spelling Bee というミュージカルの生バンドに出演しました。ブラウン大の同窓会間のステージで行われたこの劇は、大学生たちが小中学生のような年齢に扮して、面白く独創的な演技をしていました。日系アメリカ人で日本語も話す友達も三人応援に駆けつけてくれていました。私と妻は最後のステージを見に行き、その後で長女とインド料理店に行って夕食を一緒しました。娘と一緒のキャンパス生活もあと一か月足らずです。

下画像:長女がチェロを演奏して支援するミュージカルと、それを見に来てくれた日系アメリカ人の友達。


 

さて、LPSC が終わってからのこの一か月は、はやぶさ2のリュウグウ到着に備えて、それに似た物質かもしれない CM コンドライトの ” マーチソン隕石 ” をいろいろな温度で加熱したものを粒度毎に分けて反射スペクトル測定をしていました。いろいろ失敗したり、思いがけない困難があったりしましたが、今度の日曜日から日本出張を控えて、やっとぎりぎり終えられそうです。

はやぶさ2が試料を持って帰るのももちろん困難な挑戦なのですが、初号機でイトカワからの試料を細粒とはいえ持ち帰った経験があるのは強みです。ところが、科学チームとしては、初号機と同じような装備でS型でなく C 型の小惑星を相手にするのは困難さが一段上がった感じです。NIRS が NIRS3 になって波長帯が含水鉱物をカバーすることになったとはいえ、赤外分光計や元素分析をできる機器はありません。炭素質コンドライト的物質であれば、たまたまうまくいく場合もあるでしょうが、一般常識では機器の不備です。

LPSC で発表したポスターでの結論の図を日本語に直してここに載せました。NIRS3 の測定データから、含水鉱物の吸収帯の最初の二つである波長 2.72 および 2.75 ミクロン付近の吸収中心波長と相対強度が分かれば、この図のように、CI、CM、CR、Tagish Lake が区別できる可能性がありますね。私がまだこれからせねばならないことは、もっと多くの CM コンドライトについてこのような計算をすることと、宇宙風化したらこれがどうなるかを調べることです。あと二か月足らずしかないのに大丈夫なの、と訊かれそうですね:)

下画像:私が LPSC でポスター発表した、2.72 ミクロンと 2.75 ミクロンあたりの吸収バンドの位置と相対強度を使った炭素質コンドライトの同定方法。


 

明後日の日曜日からまた半月ほど日本に出張しますので、予定を書いておきます。

4月30日 伊丹空港着
5月1日 阪大豊中キャンパスで研究
5月2日 武生高校で講演
5月3-5日 甲府・山形・高崎を訪問
5月6日 各務原に帰省した後、京都と福知山
5月7日 鳥取西高校で講演・座談会
5月8日 米子高専と米子東高校で講演(夜は先生方と夕食)
5月9‐11日 宇宙研で研究打ち合わせと、はやぶさ2科学会議
5月12日 高知訪問
5月13日 佐々木塾で講演
5月14‐15日 阪大に戻って実験
5月16日 伊丹から帰途に就く

お近くで興味ある方声をかけてください。今回はゴールデンウィークに来るしかなかったので、休日をとりすぎているかもしれません。この後は、はやぶさ2がリュウグウに到着した後のマッピングが始まる7月にまた帰国します。
 

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