NASA Artemis II SLS「 ” I Am Artemis ” ジャッキー・マハフィ」

原文 : January 05, 2026 : I Am Artemis: Jacki Mahaffey
この『I Am Artemis』シリーズの原文には、ご本人の音声が収録されております。ぜひお聴きください。
 

Artemis(アルテミス)II の搭乗員が Orion(オリオン)宇宙船で月を周回する頃には、前以て彼らは月面ミッションに向けて数えきれないほどの訓練時間を費やしており、Jacki Mahaffey(ジャッキー・マハフィ)はその旅の準備に一役買っている。
 

ヒューストンの NASA KSC(ジョンソン宇宙センター)で Artemis(アルテミス)II 主任訓練官を務める Jacki Mahaffey(ジャッキー・マハフィ)は、宇宙飛行士の訓練と統合シミュレーションの計画・開発・実施を統括している。彼女の任務は、アルテミス II の搭乗員がオリオンによって月を周回する際に、宇宙飛行士と飛行管制官が予期される事態も予期せぬ事態も、あらゆる瞬間に備えられるよう保証することである。

「訓練はすべてミッションのリスク軽減策である。宇宙飛行士とフライト・コントローラーが遭遇する可能性のある事態に備えることで、ミッションの成功を可能にする」とマハフィは述べる。

アルテミス II の搭乗員は2023年に厳しい訓練を開始したが、マハフィとそのチームの取り組みはそれよりずっと前から始まっていた。訓練が始まる何年も前から、彼女のチームはオリオン宇宙船の各機能を操作する方法や、搭乗員が任務を遂行するために知るべき事項について専門家を集めた。

「このプロセスで特に印象的だったのは、全員が一つの部屋に集まり、クルーと実施予定の各レッスンや訓練イベントごとに各自が紙片を持参した瞬間だ」とマハフィは語る。
「それらを全て並べ、訓練内容を最も論理的な順序で組み立てる方法を検討した。クルーが全体像を把握できるよう支援するためだ」

アルテミス II の訓練は搭乗員発表直後に開始され、マハフィとチームは宇宙飛行士にオリオンのシステムと運用基本を指導した。必要なシミュレーターとモックアップが整うと、搭乗員は宇宙船への習熟度を高める実機訓練に移行した。

ジョンソン宇宙センターでは、マハフィのチームが様々な専門施設を活用している。宇宙飛行士がオリオンのモックアップ内で生活や作業を練習する「宇宙機モックアップ施設」、飛行ソフトウェアと表示装置を再現する「オリオン・ミッション・シミュレーター」、そして着水後のシナリオに向けた水中生存技術をクルーが訓練する「中性浮力実験室」などである。
 

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ヒューストンの NASA KSC(ジョンソン宇宙センター)でアルテミス II 計画の主任訓練官を務めるジャッキー・マハフィが、同センターの宇宙機モックアップ施設に設置されたオリオン宇宙船のモックアップの前に立つ。
Credit : NASA/Rad Sinyak
 

「地球上で可能な限りシミュレーションを試みている」とマハフィは語る。
「しかし重力は存在するため、微小重力環境での空間活用法については、搭乗員の経験に頼って想像力を働かせてもらっている」

アルテミス II 計画の宇宙飛行士四名のうち三名は過去に宇宙飛行経験があり、マハフィはその経験を強力な資産と見なしている。彼らは手順や訓練計画を形作る知見をもたらし、互いの独自の問題解決スタイルから学び合う。

「宇宙空間で働く搭乗員の視点や、最も重要となる要素について、彼らが私たちに教えてくれている」と彼女は語った。

マハフィのキャリアは、工学への情熱とジョンソン宇宙センターでのフライト・コントローラーとしての役割から始まった。彼女は他者を訓練することに喜びを見出し、やがて専任の訓練担当へと転身した。現在、彼女は約 100 名のチームを率い、全員が歴史的なミッションに向けたクルーの準備に尽力している。

「トレーナーになりたいと思って始めたわけじゃない。物理学と数学が好きで工学を学んだ」と彼女は語った。
「でも、その仕事の内容が工学知識の応用や、宇宙船の運用方法の伝達・計画へと移っていくにつれ、自然な次のステップは他の人に教えることだった。私たちの組織では、魚の釣り方を覚えたら、次に誰かに魚の釣り方を教えることになる」

マハフィにとってアルテミス計画は、家族の遺産と宇宙探査の未来をつなぐ架け橋だ。祖父はアポロ計画の制御システムに携わり、彼女は自身の仕事をその物語の継承と見なしている。今やより高度な技術と新たなフロンティアを伴って。

「アポロが成し遂げたことの一部を、私たちは拡大しながら行っている」と彼女は語る。
「月や地球の歴史についてさらに学び、火星への到達方法を探っているのよ」

アルテミス II ミッションでは、カプセル・コミュニケーター(通称カプコム)としての役割も担う。これはミッション・コントロールで搭乗員と直接通信する要職だ。マハフィはアルテミス II の帰還シフトを担当し、搭乗員の着水誘導と安全な回収を指揮する予定である。その瞬間は、チーム全体の努力の集大成となる。

「回収部隊からハッチが開いたと報告があった時、私は胸が熱くなるでしょうね」とマハフィは語った。
「あの瞬間は、まさに感動的なものになるはず」
 

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テキサス州ヒューストンの JSC(ジョンソン宇宙センター)宇宙機モックアップ施設で、軌道投入後および軌道離脱準備訓練中に笑顔を見せるアルテミス II ミッションの訓練責任者ジャッキー・マハフィ。乗組員は軌道上でオリオン宇宙船の構成を確立する方法、居住可能にする手順、月からの帰還に備えて帰還用圧力スーツを着用する訓練を行った。
Credit : NASA/Mark Sowa
 

オリオン主任評価官 Jen Madsen, Trey Perryman | 搭乗員生存システム・マネージャー Dustin Gohmert

アルテミス計画の全貌については、以下で特集しております。

NASA SLS アルテミス II ミッション
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office