Q. イオンエンジン 1 台あたりの最大推力が改良されて 10 mN と聞きました。ネットを検索すると地球上で、1 mN はおよそ 1.04 グラムを引っ張る力という記事がありました。これが本当だと全体 4 機のイオンエンジンで 40 グラムを引っ張る力しか無いことになります。この計算は本当ですか?

December 31, 2018 - 小野公則 : 57才
 

A. 地上では、質量 1 kg の物体にかかる力が 1 kg 重ですが、これは 9.8 N(N はニュートン)となります。つまり、1 N は約 0.1 kg 重です。すると 1 mN はその 1000 分の 1 ですから、0.0001 kg 重つまり 0.1 g 重になります。はやぶさ2のイオンエンジンは 10 mN ですから、約 1 g 重になります。イオンエンジンは同時に三台まで運転できるので、最大で約 3 g 重の力になります。


Q. アマチュア無線を長年やっていますので通信電波について非常に興味があります。2 億キロ先の「はやぶさ2」からの電波を臼田地上局で受信したとき、どのような感じで受信できているのでしょうか?

1. 非常に強くて問題なく受信
2. まずまずの強さ
3. 弱くてやっと
4. ノイズすれすれ
5. ノイズに埋もれているので、特殊な受信テクニックが必要

また反対に臼田の電波を受信する「はやぶさ2」のほうの状態はどうでしょうか?

December 31, 2018 - 小杉健二:73才
 

A. 通信は、探査機側あるいは地上側で使うアンテナによって異なりますし、地上側の天気でも異なります。また、通信が厳しい場合には、ビットレートを下げるということで対応しています。ということで、ご質問にお答えするのは難しいのですが、通常は問題なく通信ができていますので、直感的には「2」ということになるかと思います。
たとえば、地球スイングバイをするときなどは、電波が強過ぎるのでその対策が必要ですが、距離が遠くなると電波が強すぎると感じることはありません。一方、「弱くてやっと」ということは、たとえば地上で天気が悪くて降雨減衰によって通信が途切れてしまうということに対応すると思います。ですが、通常は受信強度は予め計算して判るので、その強度で問題がないようなやり方で通信をしています。ということで、「2」と回答しました。
なお、2018年11月下旬~12月末にかけて「合運用」という運用を行っていますが、このときは、地球から見ると探査機が太陽にほぼ重なるところに位置しています。そうしますと、太陽からの電波や太陽周辺のプラズマによって、ノイズが非常に大きくなって、探査機からの電波がノイズに埋もれてしまうので、ビーコン運用という特殊な方法を用いて、探査機からの情報を得ています。


Q. 小惑星に着陸して、探索する探査機にはいろいろな工夫がされていると思います。探索機を開発されるに当たり、どのような想定をされ、現実に着陸したときのイメージは想定どおりだったのでしょうか?また、日本独自の機構なども紹介してください。

December 31, 2018 - 山岸敏明:66才
 

A. 小惑星への探査については、初代の「はやぶさ」のときにいろいろな検討をしました。惑星探査との大きな違いは、小惑星が小さくて引力も非常に弱いことです。いろいろなことを想定し工夫していますが、最も工夫したところは、小惑星の表面物質の採取方法です。まず、小惑星に到着しないとその表面の状況は分かりません。表面に砂があるかもしれないし、砂利かもしれないし、大きな岩しかないかもしれません。これらいずれの場合でも物質が取れるように、「はやぶさ」では工夫しました。また、小惑星の引力が弱いので、表面に着陸して岩石を削るようなことは難しいですし、小惑星表面の温度も高いと、長時間着陸していることもできません。これらの条件をいろいろ想定して、表面物質を採取する方法を工夫しました。「はやぶさ2」でもこの方法を継承しています。同じようなミッションをする米国の OSIRIS-REx では、全く別の方法で表面物質をとることをします。
また、「はやぶさ」や「はやぶさ2」では、小惑星に着陸する前に人工的な目印であるターゲットマーカをあらかじめ小惑星表面に置いておきます。このターゲットマーカを頼りに着陸をすることになります。これも日本独自のやり方で、OSIRIS-REx では、そのようなことは行いません。


Q. 635m で TD リハの中止は、LIDAR 短距離モードの受光量不足が原因だそうですが、短距離モードにする時 アンプゲインは上げられるのでしょうか?
もし、上げられない時等は、リトライでも同様なことが考えられますが、その際どんな対応をする予定ですか? 長距離モードの切り替えを遅らせるとアンプがサチって異常値になるとかの心配がありませんか?
例えば タイマーで 100 m 位まで=確実に受光できる程度まで、あるいは LRF が測定可能になるまで? 高度計を無視して降りちゃうとか? LRF の動作試験を兼ねて、次のリハでターゲットマーカを落として測ってみるのでしょうか? あるいはカメラの画像処理で、距離を推測しながら降りてくるとか?
LIDAR 短距離モードの感度不足について、どのような対応を検討されているのでしょうか?

December 31, 2018 - 練木道夫:xx才
 

A. 1回目のタッチダウンリハーサル(TD1-R1:9月10日~12日)では、高度約 600 m で LIDAR の計測に問題が生じて探査機は自律で上昇に転じました。これは、高度 600 m 付近で、LIDAR の遠距離モードから短距離モードに切り替える設定にしていたのですが、短距離モードの計測がうまくいかずに切り替わらなかったためです。短距離モードはそのときに始めて使うもので、リュウグウの表面の反射率が小さかったため、600 m の高度では計測できなかったものです。そこで、次の降下運用からは、遠距離モードをより低いところまで使う設定で行っています。このことで、遠距離モードから短距離モードにうまく接続できています。


Q. マスコットやミネルバIIをリュウグウに下ろすとき、どれくらいの高度で放出する予定ですか?

September 24, 2018 - real_mint:53才
 

A. MASCOTやMINERVA-Ⅱを放出する高度は、小惑星上空 50 m くらいです。


Q. はやぶさ2の横側にある灰色のいくつかのしかくは何ですか?

September 24, 2018 - 渡辺尚哉:09才
 

A. これは、放熱面ですね。探査機の内部の温度が上がりすぎるとよくないので、熱を逃がす役割をしています。もし、探査機の内部の温度が下がりすぎてしまったら、ヒーターを使って温度を上げます。探査機は機械ですから、機械が正常に働くためには、決まった温度範囲に保っておく必要があります。


Q. お恥ずかしい質問ですが。接地時の際の質問。「リュウグウ」の接地点付近には、小さな質量の砂状粒子などは在るのでしょうか。もし存在すれば、はやぶさ2を地面に接地させる際、噴射などで微粒子が飛散しセンサや太陽電池パネル、光学カメラレンズなどに影響を与えるのでは?(重力、遠心力、ベクトルなどの計算は苦手)

September 24, 2018 - ストーク21:68才
 

A. どのくらい小さいな粒子があるのかはまだ分かりませんが、ご指摘の点については、打ち上げ前から議論はなされていました。「はやぶさ」のときも同様な議論はありましたが、すべての場合にそなえて探査機を設計することは難しいですし、コストや時間がかかることになりますから、影響は大きくないという想定で進めました。実際、「はやぶさ」のときには、微粒子による影響はありませんでした。リュウグウについても、「はやぶさ」の経験も考慮して、影響は大きくないものとして探査機の設計・製作をしました。


Q. 単純な質問ですが、地球と通信を行うためのはやぶさ2に付いているアンテナはエンジンに対して固定されていますよね。でも、必ずしもそのアンテナが地球に向いているとは限りませんよね。その時は地球と交信出来ないのではないかと思いますが? もし、全方向性で交信出来るなら、あのはやぶさが帰り際交信出来なくなったようなことは起こらないのでは?と思いますが。教えてください。

September 24, 2018 - 鈴木一茂:54才
 

A. 「はやぶさ2」には地球と通信をするためのアンテナが3種類付いています。一番目立つのが円盤型の大きな二つのハイゲインアンテナで、出力が大きいため高速の通信を行うことができます。このアンテナを使うときには、探査機の姿勢を調整してアンテナが地球の方向を向くようにします。

二つ目はミドルゲインアンテナと呼ばれるもので、これはホーン型のアンテナで、ハイゲインアンテナと同じように探査機の上面に付いています。ミドルゲインアンテナはある程度向きを変えることができるので、探査機の姿勢がある範囲にあれば地球との通信が可能です。ただし、探査機の姿勢によっては使うことができません。

三つ目がローゲインアンテナと呼ばれるもので、最も出力は低いので通信速度は遅くなりますが、指向性が広いアンテナです。ローゲインアンテナは、探査機の上面に1つ、下面に二つ取り付けられています。ローゲインアンテナを使えば、探査機がどのような姿勢にあっても通信を行うことができます。「はやぶさ」で一時通信が途絶えたのはアンテナの問題ではありません。燃料漏れによって姿勢制御ができなくなり、太陽電池に太陽の光が当たらなくなって発電が止まってしまいました。そのために、通信も止まってしまったものです。


Q. 6/3の、きなこさんの質問への回答中に「太陽からの距離によって速度が変わる」とありましたが、イオンエンジンの原理と太陽からの距離、どう関係あるのでしょうか?

August 12, 2018 - 大沼枯月:13才
 

A. 「はやぶさ2」の太陽の周りを回る速度は、軌道上の位置によってかなり変わります。太陽に近いと速度が速くなって最も速いと秒速33kmくらいになります。これは時速12万kmです。太陽から遠くなると速度は遅くなり、最も遅いときは秒速約23km(時速約8万3千km)になります。

「太陽からの距離によって速度が変わる」というのは、天体の軌道運動の性質です。太陽の周りを公転している惑星や小惑星、彗星のような天体では、その軌道の形は楕円形をしています。惑星の場合には、軌道は円形に見えますが、詳しく調べてみると円ではなくて楕円です。楕円というのは円をつぶしたような形ですが、太陽の周りを楕円軌道を描いて天体が公転する場合、太陽は、その楕円の中心ではなくて中心から少しずれたところにあります。

専門的な言葉でいうと楕円の焦点と呼ばれるところに太陽はあります。その場合、天体は1公転するときに太陽に近づいたり遠ざかったりしますが、太陽に近づいたときは速くなり遠ざかると遅くなります。これが探査機の速度が太陽からの距離によって変わるということです。イオンエンジンでも普通の化学エンジンでも、ガスを噴射することでその瞬間に探査機の速度を速くすることができます。ですが、もし時間が経って探査機が太陽から遠ざかるようなことになると速度は減速してしまうことになります。でもイオンエンジンを噴射したことで、軌道そのものが少し変えられているのです。


Q. 衝突装置でクレーターを作るという事ですが粉砕された岩や表面の砂などがリュウグウ上空に漂いはやぶさ2を傷つけてしまわないでしょうか?

August 12, 2018 - いかる:34才
 

A. はい、そのような心配があるので、衝突装置を使うときには、「はやぶさ2」は衝突装置を使う場所から離れて小惑星の陰に隠れていることになります。衝突装置が爆発すると装置からも破片が飛び散ります。また、小惑星表面からも砂や岩が飛び散ります。このような破片や砂・岩がぶつかってこないように、衝突装置がぶつかる側とは反対側に探査機は隠れていることになります。

 




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