NASA Artemis II SLS「アルテミス II 月周回有人ミッションに向けた最終段階の工程」

原文 : January 09, 2026 : Final Steps Underway for NASA´s First Crewed Artemis Moon Mission
 

NASA がアルテミス II 月周回試験飛行の打ち上げに近づく中、同機関は間もなく SLS(スペース・ローンチ・システム)ロケットと Orion(オリオン)宇宙船をフロリダ州 KSC(ケネディ宇宙センター)で初めて発射台へ移動させ、最終的な統合、試験、打ち上げリハーサルを開始する。
 

Imahe caption :
NASA の SLS(スペース・ローンチ・システム)ロケットが、フロリダ州 KSC(ケネディ宇宙センター)内のロケット組立棟(VAB)ハイベイ 3 に設置されている。2025年12月20日(土)、Artemis(アルテミス)II カウントダウン実証試験の一環として、ロケット頂部に搭載された Orion(オリオン)宇宙船に試験搭乗するアルテミス II クルーの到着をチームが待機している様子。
Credit : NASA/Joel Kowsky
 

NASA は01月17日(土)以降を目標に、ロケット組立棟から発射台 39B までの数時間に及ぶ移動を開始する予定だ。クローラー・トランスポーター 2 による約 6.4 km の移動には最大 12 時間を要する。チームは搬出前の全作業を完了すべく 24 時間体制で作業中である。ただし、技術的準備や天候により追加時間が必要な場合、この目標日は変更される可能性がある。

NASA 探査システム開発ミッション局の Lori Glaze(ロリ・グレイズ)代理副局長は「アルテミス II ミッションに向け、ロールアウトが目前に迫っている」と述べ、「打ち上げまでの重要な段階が残されているが、人類の月面復帰が近づく中、搭乗員の安全はあらゆる局面で最優先事項であり続ける」と強調した。

複雑なシステムの新規開発では常にそうであるように、技術者らはここ数日から数週間にわたり複数の不具合の解決に取り組んできた。打ち上げ前の最終点検において、飛行中断システムに関連するケーブルが仕様外の曲がり方をしていることが技術者らによって発見された。チームはケーブルを交換し、週末にかけて新たなケーブルの試験を実施する予定だ。さらに、オリオン宇宙船のハッチ加圧装置に関連するバルブに不具合が生じ、12月20日のカウントダウン模擬試験に影響を及ぼした。01月05日、チームはバルブの交換と試験を成功裏に完了した。またエンジニアは、オリオン宇宙船の呼吸用酸素として気体酸素を充填するために必要な地上支援機器の漏れ問題の解決にも取り組んだ。
 

Rollout(ロールアウト)

統合されたロケットと宇宙船が発射台に到着すると、NASA は直ちに発射台準備の長いチェック・リストを開始する。これには電気配線、燃料環境制御システム・ダクト、極低温推進剤供給ラインなどの地上支援設備の接続が含まれる。チームは発射台で初めて全ての統合システムを起動し、飛行ハードウェア部品が相互に、移動式発射台と、地上インフラシステムと正常に機能しているかを確認する。

完了後、アルテミス II の宇宙飛行士である NASA の Reid Wiseman(リード・ワイズマン)、Victor Glover(ビクター・グローバー)、Christina Koch(クリスティーナ・コック)、および CSA(カナダ宇宙庁)の宇宙飛行士 Jeremy Hansen(ジェレミー・ハンセン)は、発射台で最終点検を実施する。
 

ウェット・ドレス・リハーサル(燃料注入試験)

01月末、NASA はロケットへの燃料注入を行う打ち上げ前試験であるウェット・ドレス・リハーサルを実施する。この試験では、70 万ガロン(約 265 万リットル)を超える極低温推進剤のロケットへの充填、打ち上げカウントダウンの実施、宇宙飛行士不在時での推進剤安全除去手順の訓練を実証する。

打ち上げ時には、クローズアウト(打ち上げ最終支援)・クルーがオリオン宇宙船内の宇宙飛行士の安全確保とハッチ閉鎖を担当する。クローズアウト・クルーもこのリハーサルを活用し、宇宙船に宇宙飛行士が搭乗していない状態で手順を安全に練習する。

ウェット・ドレス・リハーサルでは、打ち上げチームの能力を実証するため、カウントダウン最終 10 分間(ターミナル・カウント)において、停止、再開、再起動を複数回行う「 ” runs ”(ラン)」が実施される。

最初のカウントダウンは打ち上げ約 49 時間前に開始され、打ち上げチームが各自の配置につく。その後打ち上げ1分 30 秒前まで進行し、計画された 3 分間の待機を経て、打ち上げ 33 秒前まで再開される。この時点でロケットの自動打ち上げシーケンサーがカウントダウンの最終秒数を制御する。その後、チームは T-10 分までカウントダウンを巻き戻し一時停止し、第二段階として打ち上げ 30 秒前まで再開する。

NASA はアルテミス I ミッションで得た知見を打ち上げカウントダウン手順に反映させているが、試験中や技術的課題が発生した場合はいつでも中断して対応する。技術者らは、液体水素の充填に課題が生じたアルテミス I のウェット・ドレス・リハーサルを踏まえ、ロケットへの液体水素・液体酸素の推進剤充填を注視する。また、オリオン乗員モジュールと打ち上げ停止システムのハッチ間の空間に蓄積する窒素ガスの量を制限する、最近更新された手順の有効性にも細心の注意を払う。この窒素蓄積は、クローズアウト・クルーにとって問題となる可能性がある。

追加のウェット・ドレス・リハーサルが必要となる場合があり、これにより宇宙船の完全な点検と飛行準備が確保される。

必要に応じて、NASA はウェット・ドレス・リハーサル後に SLS とオリオンをロケット組立棟へロールバックし、打ち上げ前の追加作業を実施する可能性がある。
 

打ち上げに向けた次のステップ

ウェット・ドレス・リハーサルが成功裏に終了した後、NASAは飛行準備審査会を開催する。ミッション管理チームは、飛行ハードウェア、インフラ、打ち上げ・飛行・回収チームを含む全システムの準備状況を評価し、打ち上げ日を確定する。

アルテミス II の打ち上げ可能期間は早ければ02月06日(金)から開始されるが、ミッション管理チームはウェット・ドレス・リハーサル終了後、宇宙船、打ち上げインフラ、搭乗員および運用チーム全体の飛行準備状況を評価した上で打ち上げ日を選定する。

可能性の高い打ち上げ日を見込むため、エンジニアはミッション達成とオリオン内の搭乗員の安全確保に必要な主要な制約条件を特定した。その結果得られた打ち上げ可能期間は、宇宙船とロケットがミッション目標を達成できる日または週を示す。これらの期間設定には、地球が自転し月が月周期で公転する中、月へ向けた精密な軌道への打ち上げに伴う複雑な軌道力学が考慮されている。これにより、約一週間の打ち上げ機会が訪れた後、三週間の打ち上げ不可期間が続くパターンが生じる。

これらの期間内に打ち上げが可能となるか否かは、いくつかの主要なパラメータによって決定される。後続の月面着陸ミッションとは異なる独自の軌道特性を持つため、これらの主要な制約条件はアルテミス II 試験飛行に特有のものとなる。

打ち上げ日時は、SLS がオリオン宇宙船を地球高軌道に投入できるものでなければならない。乗組員が月へ向かう前に、搭乗員と地上チームが宇宙船の生命維持システムを評価するためだ。

また、月周回軌道投入燃焼時には、オリオンが地球と月に対して適切な位置関係にある必要がある。アルテミス II の月周回軌道投入燃焼により、オリオンは月をフライバイする軌道に乗ると同時に、自由帰還軌道(フリーリターン軌道)を設定される。この軌道では、宇宙船は追加の主要な推進操作なしに、月の重力を利用して地球へ帰還する。

特定の日の軌道計画では、太陽電池パネルが太陽光を電力に変換し、宇宙船が最適な温度範囲を維持できるよう、オリオンが一度に 90 分以上暗闇に置かれないことが必須である。ミッション計画者は、飛行中にオリオンが長時間の日食状態に陥る可能性のある打ち上げ候補日を排除する。

打ち上げ日は、オリオンの地球帰還時に計画された適切な再突入プロファイルを可能とする軌道計画をサポートしなければならない。
 

下記の期間が2026年04月までの打ち上げ可能期間を示している。ミッション計画担当者は開始の約二ヶ月前に更新された分析に基づき期間を精緻化し、変更される可能性がある。

打ち上げ期間 01月31日~02月14日
打ち上げ可能日 02月06日、07日、08日、10日、11日

打ち上げ期間 02月28日~03月13日
打ち上げ可能日 03月06日、07日、08日、09日、11日

打ち上げ期間 03月27日~04月10日
打ち上げ可能日 04月01日、03日、04日、05日、06日

軌道力学および性能要件に基づく打ち上げ機会に加え、物資補給、天候、東部発射場スケジュールの他利用者状況により、打ち上げ期間内の実行可能な日が制限される場合がある。原則として、打ち上げ期間内に存在する約一週間の機会枠内で、最大 4 回の打ち上げ試行が実施可能つなっている。

NASA は 50 年ぶりとなる地球軌道外有人ミッションの準備を進める中、地上と航行の両方で知見を得ながら、システムの準備状況と性能に基づいて打ち上げ時期を決定する方針だ。

革新と探査の黄金時代の一環として、約 10 日間のアルテミス II 月周回試験飛行は NASA のアルテミス計画における初の有人飛行となる。これは月面への新たな米国有人ミッションに向けた新たな一歩であり、月面での持続的な活動基盤の構築につながる。これにより、NASA は初の宇宙飛行士(米国人)を火星へ送り込む準備を整えることになる。
 

アルテミス計画の全貌については、以下で特集しております。

NASA SLS アルテミス II ミッション
 



Akira IMOTO

Editorial Chief, Executive Director and Board of Director for The Planetary Society of Japan

Japanese Translation : A. IMOTO TPSJ Editorial Office