The Planetary Society of Japan

The Planetary Report

Archive 1999

 

探査機ガリレオと探査機カッシーニ

地球以外の天体の探査史上、ガリレオ・ミッションは最も複雑な要因が絡み合った探査である。JOP(木星オービター・プローブ・ミッション)として、1970年代に計画されたのがガリレオ・ミッションの始まりである。その内容は、今までには見られなかった最も複雑・多岐にわたる野心的な木星探査計画で、様々な議論の後に、打上げを1982年とすることで1977年に正式に認可された。これは、NASAがスペースシャトルの開発を優先したために、延期また延期と遅れ遅れになってしまったためである。結局、打上げを1995年そして木星到着が1997年とすることに決まった。

ガリレオは2年間で一次ミッションを完遂し、その間プローブ(小型探査機)を木星の大気の中に投入し、木星の総括的な探査と4つの大型衛星(ガリレオ衛星)の探査を行った。ガリレオは頑健・強壮そのもので、1997年、更に2年間のエウロパを探査する延長ミッションを成し遂げた。そして現在、老たりとはいえ順調に機能するガリレオは、カッシーニとのジョイント・ミッションを試みる新たな役割を果たそうとしている。筆者は、アリゾナ州のツーソンにある国立光学天文台に勤務する天文学者である。惑星探査に関する幅広い豊富な経験の持ち主で、NASAのマリナー(水星と金星探査)やボイジャー(外惑星)ミッションに参加、現在はガリレオ・ ミッションの撮像チームを率いている。[ 1999年07月/08月 ]

Michael J. S. Belton

 

1995年12月7日、ガリレオは火山活動を続ける衛星イオのわずか 1000km 上空を接近通過した。探査機の技術的なトラブルのため、残念ながら科学的に有意義なデータは収集出来なかった。2000年2月から始まる最終ミッション(GMM:ガリレオ・ミレニアム・ミッション)で、ガリレオはイオのわずか 200km 上空を接近通過する。画面は、木星を背景に溶岩やプリューム噴火の上空を接近通過するガリレオの想像画。
 

 

左の画像には、イオの表面から噴き出す二つのプリューム噴火(左側の縁と中央)が見える。左の縁に見えるのは、南アフリカの火と火山の神の名前が付けられたピラン・パテラのプリューム噴火。右側の明暗境界線に見えるのは、ボイジャー(1979年)とガリレオ(1995年)の接近通過時に活動していたプロメシウスのプリューム噴火である。1997年6月28日、ガリレオがイオの 60万km 上空を通過した時に撮影した。プロメシウスは、19年間ずっと噴火を続けていると考えられる。右側の上はピラン・パテラ、下はプロメシウスのプリューム噴火を拡大したものである。
 

 

探査機ガリレオ(以下、ガリレオ)の燃料が尽きようとしている。しかも、木星の磁気圏から放射される強力な貫通性を持った放射能の攻撃を受けているのである。また、ガリレオが老朽化している。にも拘わらず、ミッション関係者の興奮は高まりつつある。待望久しい、衛星イオの科学探査と土星を目指す探査機カッシーニ(以下、カッシーニ)とのジョイント・ミッションの目途がついたからである。最大限の科学成果を得るために、もう1年5ヵ月間、ミッションが続けられることになったのである。

1995年12月、ガリレオは初めて木星に到着した。その途上、イオからわずか 900km 離れた領域を通過する際、ガリレオは木星の放射線の猛攻を浴びた。しかしながら、ガリレオはこの過酷な環境においても作動出来ることを証明した。従って、これ以外の不測の事態が起こらなければ、未知の天体イオに存在する火成地表、プリューム噴火で生ずるガス、溶岩などの噴出物、火山や火口の画像、そして地質、測光計及び分光計の測定によるデータを得ることが出来たはずであった。ところが、致命的とも言えるテープレコーダの不具合が原因で、ガリレオが最終的に木星に向けて接近飛行を行おうとした矢先、木星の大気に投入されたプローブ(小型探査機)から送信されるデータの受信に不備が生じないよう、搭載カメラの操作を中止せざるを得なくなった。

にもかかわらずそれ以来、ガリレオはほぼ4年に及ぶ衛星エウロパの接近通過や軌道の外側の安全領域における観測において、数々の素晴らしい発見を成し遂げた。 そして今また、ガリレオは衛星イオの「悪意に満ちた環境」に舞い戻る時を迎えているのである。イオとの遭遇は当初の一回を三回に変更され、NASAにとって技術的に最も困難な目標を達成するためのお誂え向きのチャンスとなる。これは、NASAが計画したミッションの中で技術的に最も困難な挑戦となる。ガリレオの放射線対応能力の限界をはるかに超えたミッションであり且つ最高の成果を得るために、残されたガリレオの燃料すべてがこのミッションに注ぎ込まれる。

このミッションでは、未来の宇宙開発の礎を築くために、土星系(主に土星と衛星タイタン)を探査する探査機カッシーニとのジョイント・ミッションを計画した。これは、科学ミッションの科学上の好成果を得るための他に、外部太陽系探査のバトンをガリレオからカッシーニに引き継ぐ象徴的なミッションとするためである。
 

初期ミッションの行く手にあるもの

1997年12月、ガリレオは木星大気へのプローブ(小型探査機)の投入に成功した他、木星の磁気圏、リング系及び衛星の探査を探査する第一次ミッションを無時終えた。そして現在、ガリレオ・エウロパ・ミッション(GEM)と呼ばれる「火」の衛星イオと「氷」の衛星エウロパを探査する延長ミッションに入っている。(詳細は、本誌1998年1・2月号の「火と氷と水」を参照して下さい。)エウロパとその氷地殻の下に横たわっているかもしれない液体の水で出来た海洋の証拠の発見に主眼を置いたこのミッションは、1999年2月、エウロパの接近通過(19回目の木星周回)を以って終了した。

衛星イオの接近飛行に移行する際、ガリレオは木星最大の衛星ガニメデと4回遭遇する。この過程で、ガリレオは次第に軌道を下げて木星の放射線帯の奥深く進入する。そしてガリレオがイオに再接近するのは、24、25及び27回目の周回時である。人間が爪先で水に触るのと同じように、この領域の遷移飛行はガリレオにとって最大の危機と言えるだろう。木星に最接近する軌道上では、放射線の量が急激に増加するため搭載科学機器のノイズレベルが上昇するため、探査機が突然機能停止に陥る可能性も増大する。一方、この領域の飛行で、ガリレオの燃料タンクは限りなく空の状態に近づいていく。

木星の周回軌道に初めて投入された直後のガリレオの燃料タンクには、110kg のヒドラジンがあった。 一次ミッション(1995~1997)で使われた燃料は 50kg、次の延長ミッション(GEM)終了後(1997~1999)に残った燃料ははわずか 40kg であった。ガリレオは、最後のお勤めとなる探査機カッシーニ(以下カッシーニ)との遭遇(2000年12月30日)で、残りの燃料を使い果たすことになる。ところで、燃料の消費量を正確に把握することは不可能である。何故かといえば、探査機の軌道と衛星の位置には予測出来ないわずかなずれが常に生ずるため、エンジン点火毎の燃料の必要量が確定出来ないからである。従って、最終ミッションが終わった時点で、燃料があるのかあるいはタンクが空っぽになっているのか確かなことは言えない。
 

木星の食によるイオの掩蔽画像には余り良質のものはない。しかし、6.3秒の露出で撮影されたこの画像には、ガリレオのカメラが受けた放射能の劇的な効果が印されている。長時間の露出のために、イオ(画面の明るい円がイオの外縁)の火山の光芒が、外側の星と同じようにチック・マークのように見えている。来るべきイオとの接近遭遇においてガリレオは更に強烈な放射線を受けるため、画像には更に大きな影響が出ることが予想される。
 

 

放射線環境

燃料と同様、探査機の放射線に耐える能力についても確かなことは言えない。高エネルギーの放射線が探査機のソリッド・ステート(半導体素子)の電子機器類に侵入すると、機器類に電荷が生じ、時には機器類の素材の原子構造の転位を引き起こす。この結果、科学データの収集の際に一時的なノイズが混じるため、最悪の場合は、電子機器類が損傷する可能性が生ずる。 これは探査機の主要な機能が停止する事を意味する。システムが損傷すれば、おそらく探査機を危険に陥れる異常信号を発することが考えられる。

ガリレオが収集した科学データにノイズが混じったことは多々ある。例えば、イオの食の間に撮影された長時間露出の画像には、この影響で斑点が付着していた。ノイズのレベルは放射能環境に比例してかなり変動するようである。イオでは放射能が非常に強烈なので、画像の明度の少なくとも半分は放射能のノイズの影響を被るものと思われる。運良くレベルがずっと低ければ、非常に高い質のイオのクローズアップ画像が得られるであろう。運悪くレベルが異常に高いと、画像は全滅する。

有り難いことに、放射能による探査機の機能障害は今のところほとんど見られない。しかし、姿勢制御装置には能力低下の兆しがある。一次ミッションで11回目の木星周回を終えた後、ガリレオに時々機能の乱れが生じてシステムが自動的にリセットされて安全モードに入ってしまうことが起こりはじめた。このため、2回目の周回で得たデータが失われてしまった。確たる証拠はないが、最大の原因は度重なって浴びた放射能によるものらしい。ガリレオはいわば増加する放射能の被害、減少する燃料そして探査機全体に広がる機能上の不安定と死闘を繰返していたのである。
 

この図はジョイント・ミッションにおけるガリレオとカッシーニの軌道軌跡。
 

 

イオとエウロパの接近飛行

イオへの挑戦とは、今までよりはるかにイオに接近する3回の接近飛行により、出来るだけ多くの高画質画像を得ることである。高度は、1回目が上空 575km、2回目が 300km そして3回目が 200km である。このうちの2回の接近飛行、つまり24回目と27回目の木星周回で、ガリレオはイオの低緯度を通過し、25回目にイオの南極近くの高緯度を通過する。

フライバイ(接近通過)の幾何学(飛行軌道の制御)は難しい。ガリレオは毎回夜の側からイオに接近する。接近中にイオの画像を撮るためには、搭載カメラは探査機の回転部のブームをとおして撮影しなくてはならない。目標となる最初の火山の高分解能画像を撮るためには、カメラを取り付けた回転台を素早く回さなければならない。ガリレオが昼間の半球上を通過する時は、カメラの照準を再び探査機の回転軸の方向近くに戻さなければならない。しかし、このカメラの方向の切り換えは場合によっては、わずかな変更でも困難になることがある。また、上手くやりおうせたとしても、得た画像データの量や場合によっては質を犠牲にしなければならない事がある。

データを地球に送るのはこれまた難題である。25回目の周回時に関して言えば、イオとの遭遇まで38日ある。この間隔では、データの一部分を再生するのがやっとである。事を更に複雑にするのは、この貴重なデータ再生の時間をエウロパのデータの再生に割かねばならないことである。

木星に面したエウロパの半球を撮る唯一のチャンスで得た画像データには、エウロパの氷地殻が木星の重力による潮汐力に影響を受けるとする説を検証する科学的に非常に興味深い面がある。但し、この未解決のジレンマは、次のエウロパとの遭遇における画像データの収集に影響を及ぼす可能性がある。

次のエウロパとの遭遇は、その氷地殻の下に海洋が存在するかどうかを検証する上で非常に重要な意味を持つ。何故かと言えば、ガリレオの飛行軌道の幾何学から、搭載磁力計がエウロパの磁場の強さを測定出来るからである。(詳細は、本誌1999年5・6月号の11頁を参照して下さい)。25回目の周回においては、磁力計の測定が焦点であることは間違いない。
 

左の三つの図は、ガリレオがイオに接近する24、25及び27回目の木星周回軌道を示したものである。
上:24回目の周回。ガリレオは夜の側からイオに接近し、その611キロ上空を通過する。 ガリレオは、イオ最大の火山ペレから噴き出す溶岩が夜明け前の闇の中で輝いているのを見るはずである。またペレを離れると、以前から噴火を続けているプロメテウスの様子を見ることになる。
中央:25回目の周回。ガリレオは高度300キロで、イオの南極の電離層を横切って未だに 我々が見たことのない地表の様子を捉えてくれるであろう。
下:27回目の周回。2000年2月22日、ガリレオをイオに最接近する。ガリレオは高度200キロから、ペレ、ピラン・パテラそしてプロメシウスの溶岩や噴火口の様子を撮影する。
 

 

イオの火成地表

ガリレオの最終周回は、科学観測の上で途方もない機会となる。イオのフライバイにおいては、ガリレオはイオで最も活発なペレ火山のやや北に沿って飛行することになる。夜明け直前のペレには、未だ覚めやらぬ夜が支配する暗い地表を背景に白く輝くプリューム噴火や溶岩の源泉が見えるであろう。ガリレオは火の泉、曲がりくねった溶岩流、溶岩の溜まりや湖を見るのだろうか。ガリレオが高分解能で撮影するペレの火口がどのような画像になるのかそれは何とも言えない。

ペレとはタイプの異なるプロメシウスは明るい陽の光の中で見えるので、詳しい探査が可能となるであろう。プロメシウスについては、探査機ボイジャーが観測(1979~1981)した時に比べると、溶岩流の分布や主要火口の位置などに著しい変化が起っていることは周知の通りである。新しい溶岩流と古い溶岩流を比較すれば、火山の噴火によるイオの表面の再生について多くのことが分かるであろう。ガリレオはイオの南極上空を通過するので、プロメシウスから噴き上がるプリューム噴火の特に素晴らしい眺めを得られであろう。プリューム噴火を横から見るので、含まれるガスや固体物質が火口から噴出する様子を詳しく観測出来るであろう。

途方もない火山のペレとプロメシウスの間には、ガリレオが10回目の周回時に明らかにした、例えば、ピラン・パテラのような地質学的に興味深い地域が存在する。 中でも非常に興味深いのは、大規模に浸食された山々や格子模様のついた層状地表である。これは緑がかった未だ名前がついていない地域で、詳しく調査が必要である。余談ながら、ガリレオ・ミッションのカメラ班の間では、「イオ・ゴルフ場」の名前で通っている。

イオの溶岩が極端な高温であることから、イオの火山活動は珪酸質の物質を含んでいることと、イオの地殻はある種の玄武岩質岩石であることが分かった。ガリレオの最終の周回で、これ等の物質がどのようにしてイオの地表に堆積し、またこれ等を覆う硫黄や二酸化硫黄の霜がどのように堆積し再循環するのか、その原因をおそらく知ることが出来るであろう。
 

2000年12月30日、カッシーニは、土星への到着に必要な速度を得る最終手段として木星スウィングバイを行なう。全て順調に推移すれば、1995年以来木星系の探査を続けているガリレオと遭遇してジョイント・ミッションを行なう。
 

 

ガニメデと土星探査機カッシーニ

2000年12月30日、カッシーニとのジョイント・ミッションへ向かう途中、ガリレオは、8回目の木星周回以来初めてガニメデを2回接近通過する。ガニメデには、永久磁場、薄い大気、衛星規模の地殻運動で形成された地表がある。金属で出来た中心核が形成された時期には、ガニメデには活発な地殻運動があった。28回目の周回時には、前回の遭遇で通過しなかった他の地域も調査してデータを補完し、ガニメデの地質過程の検証とそれによる新たなモデルを発展させることが出来ると思われる。接近通過の最終行程では、ガニメデは木星による食の最中にあたり、この衛星の両磁極周辺の大気中で発生するオーロラの観測に絶好の機会となるであろう。

木星接近しつつあるカッシーニには、現在のところ、木星のプラズマ環境、木星大気の様相、衛星及びリング系の探査が待ち受けている。これ等探査すべてが順調に終わった暁には、ガリレオとカッシーニのジョイント・ミッションが行われる。このミッションで、ガリレオは今までで木星に最も接近する。

ジョイント・ミッションでは、相乗効果が発揮され、一つの探査機の探査では不可能な稔り多い成果が得られるものと期待されている。 このジョイント・ミッションでは、ガリレオが最初に木星の磁気圏深く降下して粒子と磁場を測定する。カッシーニは、太陽風の攻撃に対抗する木星の磁気圏の外側に出来る境界領域でサンプルの収集を行う。その後、両探査機は役割を交替する。カッシーニのカメラは木星大気の様相の変化を長時間の映像に収める。 ガリレオのカメラとその他の観測機器は、木星にぐっと接近してきっちりとした時間割で、撮影やデータの測定を長時間行う。こうして得られた測定データを照合は、木星大気の様相の変化がどのように発生しそして進化するのか、その過程の模様の理解に役立つはずである。

ガリレオ・ミッションは様々な試練に遭遇した。即ち、スペースシャトル・チャレンジャーの爆発事故による打上げの延期、主アンテナの故障、テープレコーダーの不調による測定活動の制限及びフライト・コンピュータの新しいソフトウエアの設定に付きまとうリスクである。しかし、ガリレオはこれ等の難事に雄々しく立ち向かいそして克服して、金星、月そして小惑星ガスプラやアイダの探査により、科学上輝かしい発見を成し遂げた。ガリレオはまた、彗星の死に至る姿(シューメーカー・レビー9彗星の木星への衝突)の撮影、初の小型探査機の木星大気への投入、木星の磁気圏とイオのトーラスの通過や氷のガリレオ衛星(エウロパ、ガニメデ)との遭遇を成し遂げた。更に、イオの苛酷な環境下での探査と前代未聞のカッシーニとのジョイント・ミッションという最後の挑戦に立ち向かおうとしている。

ガリレオは、今までに地球圏を離脱して最も目覚ましい成果をあげた探査機の一つである。ガリレオはミッションの最終段階突き進んでいる。
 

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